緑の天幕/リュドミラ・ウリツカヤ
スターリンが死んだ頃からソ連崩壊の頃までのソ連の話。
かなり好きですこの話。
3人の少年が大人になり、それぞれの道を歩む。その3人に影響を与えた人、見守る人、そして関わってくる人など大勢の人が32の章にわたって出てきます。
やはりこの時代の、文学や芸術に対する自由な思考と嗜好が捕まる原因に…ということが主題になってきています。いろんなことに興味を持って調べたり本を読んだりということができない世界。亡命できる人は亡命する。でも言語や文化が好きで外に出たくない人もいる…
ラストで音楽家の1人の心が救われるのが"バッハの平均律" この平均律の最後に"終わりよければ全てよし"と書いてあるそう。
全709頁、厚さ4センチ。図書館で借り、2週間の期限当日まで読んでました。重くて普段の読書タイム(寝る前後)には向いてませんでした。
骨の音楽!
海賊版レコードを作るために廃棄されたレントゲンフィルムを円形に切り、それに音源を録音していた。らしい。本当の骨の写真に入れられた音楽!
ロシアの紅茶は濃く煮出したものをお湯で薄めて飲むそうな。これはこの話ではないけれど。
でもコニャックか紅茶か みたいなことが多く、紅茶はよく出てくる。あるシーンではジャムと共に。なのでジャムを入れた紅茶を飲みながら読む。最後はそこに豆乳も入れてストロベリーミルクティーに。
今たまたまロシアの作家の書いたものを読んでいるけど、この作家はこの本の刊行時に下記のように語っている
"ソ連当局は、人間を〈人間でなくさせる〉大きなシステムを作った。〈ソヴィエト的人民〉とは、従順かつ臆病で尊厳に欠けた、怠惰で好奇心のない人間のことです"
そして強大なシステムになり負の連鎖に陥る。そこから抜け出すことができる拠り所が文学や音楽や芸術などの「文化」なのであると。
訳者あとがきより。
負の連鎖がこれ以上大きくならないように。