屋上で会いましょう チョンセラン著 すんみ訳
これまで翻訳されている作品、何作か読んだチョン・セランの最新翻訳
実は4月にほとんど読み終えていたのだけど、もう一度図書館から借りました。ああ、買ってなくてすみません…
この、"屋上で会いましょう"は、短編。
"フィフティ・ピープル"は短い話がいくつも合わさってるけど、群像劇のような作りで、最後みんなが同じところにいるというまとめのような章もありました。
これはいろんなテイストがあるほんとうの意味の短編集。
9作品入ってます。
私が特に好きだったのは
"ウエディングドレス44"
1枚の飾りのないシンプルなウエディングドレスを、レンタルしていく女性たちの話。1人目、2人目…最後の遊びでレンタルしていく高校生までのこれも群像ストーリー。1人数行の話もあったり、何ページかの話もあったり。
うなじにタトゥーを入れている六番目の女性は、最初はファンデーションで隠すか髪を下ろすかするつもりだったけど、男に偉そうに「ちゃんとした大人なら普通消すだろ」とかいろいろ言われて、平行線をたどった結果、『そのタトゥーはやはりクールで、ドレスともよく似合っていた。私の身体だもの。自分の好きにするから見たけりゃどうぞご勝手に。』と44人の中で最もクールなウォーキングを見せて式場に入る。
男性との結婚するきっかけのストーリーもあるし、ジェンダーな目線で描かれているところも面白い。
"離婚セール"
離婚することになった友人が、持ち物をセールするというので家に集まった女友達数名。その間の友人との会話、仕事や結婚についてなどの話がしんみりして楽しい。
最後はその離婚する人からみんなにプレゼント。彼女が作った美味しい漬物を作っていた漬物石も!
"ヒタイとスナ"
これは昔の物語。タイショクコクとショウショクコク
大食で食べ物を作ったり食べることが大好きな海沿いに住む民族と、砂漠と山の方面に住む、落雁のみを食べているような民族。
その民族が争いになり、相手国の言語が話せるからと駆り出されたヒタイという中年女性とスナという少年。言葉も習慣も違うから、例えばショウショクコクは宝物を贈っても食べることしか興味ないタイショクコクには意味のないことだったり。
面白くてものがたりっぽいところが好きでした。
ところで、このチョン・セラン
最終選考で落選し、「逃した賞金が、二億五千万ウォンにのぼるらしい。
「主人公に悩みがなく、明るい」という理由で「文壇」から落選させられているらしい。
私がこの作家を好きな理由はここなのかも。
表題作の"屋上で会いましょう"は、会社の人たちとお昼時屋上で仕事や家のことやいろいろ話をしていたら、おまじないで結婚相手が出てくると言う…出てきたのは人ではなく、絶望を吸い取ってくれる生き物…
うーむ。この作者、ホラーも書くんですよね。ホラーでもないけど、かなり変わった話。
そんな変わった話も少し。そしてシスターフッド的な話も含めて、おすすめ!
