――女の子って、なんでこんなに甘い匂いがするんだろう。
吸い付くように柔らかな、少し冷たい唇を舌でこじ開けると、さゆちゃんは切なげに呻いた。
遠慮がちな手のひらが俺の背中を伝い、そっと首に巻きつく。
……やべえ。
このままだと思考が停止して、――サルになりそう。
身体が燃えるように熱を帯び、激しい鼓動が頭の中を隙間なく埋めていく。
薄いニットの裾を探り、手のひらを滑り込ませる。
塞がれた唇から、ん、と微かな声を上げ、さゆちゃんは逃れるように身をよじった。
――このまま、何も考えられなくなればいい。
頭が空っぽになって、俺自身も空っぽになって。
そのまま、全部捨ててしまおう。
バレーへの想いも、注ぎ続けた情熱も、小学生の頃の無邪気な夢も。
だってそれは、どうやっても取り戻せないのだから。
惜しむ必要なんてない。
もう、俺にはいらないものだ。
『――新太くんのジャンプサーブは本物だと思う。これからもがんばってね。大学のバレー部で会おう』
胸の奥で何度も繰り返し再生し、励みにしたユキエ先輩の言葉。
あの時、舞い上がった俺は先輩に何と答えたのだろう。
自分にはバレーボールしかないと、――チームから必要とされていると信じていた、あの頃の俺は。
――ユキエ先輩、すみません。
約束、守れませんでした。
俺のバレーは、ここまでです。
瞼の裏で、ユキエ先輩の面影が少しずつぼやけ、滲んでいく。
そして、――。
入れ替わるようにして浮かび上がったのは、椎名さんの笑顔だった。
『大丈夫ですよ、リボン結びなんて練習すればすぐ出来るようになります。
ちょっとしたコツあがあるんです。よかったらお教えしましょうか』
あの時、彼女はそう言っていたずらっぽく笑った。
あの笑顔を見て、ミニギフトを成功させなきゃと気負っていた俺は、ずいぶん楽になったんだ。
――そうか……。
二人はどことなく似ているのかもしれない。
俺は、彼女の中にユキエ先輩の面影を見つけた。
二人を重ね、椎名さんの包み込むような優しさにすがろうとした。
俺は、――赦されたかったんだ。
誰かに赦してほしかった。
バレーボールから逃げ出した、自分を。
放送禁止。な日々
...
