私の悪友のP氏が週末に奥さんと一緒に行ったファーマーズマーケットで日本風の細いなすびを見つけたからと買ってきてくれた。 彼の勤める上級裁判所は私の元の職場で、今の仕事場とは道路を隔てた向かい側。 お昼の休みにもらいに行く。 新鮮でおいしそう。 家に帰ってきて、早速いためてだしを入れて甘辛く味付け。 ご飯が進む。
P氏はなすびは決して食べない。 見るのもいやなんだそうだ。 彼のお母さんはお父さんとの仲が悪く、自分が医学校にいけなかったのは子供たち(息子4人、娘1人)ができたせいだ、そのおかげで人生狂ってしまったと、お酒に逃げていた。 あるときお母さんが夕食になすびを料理したそうだが、何しろ酔っ払っていて、油ばかりがぎたぎたして食べられたものじゃなかったらしい。さすがにお父さんもあきらめて、子供たちをつれてアイスクリームを食べに行った。 そのとき以来、なすびはだめ。 ワインを飲んでいたお母さんを見ていたので、お酒も決して飲まない。 10年ほど前に彼女はガンでなくなったのだが、P氏が最後まで一緒に住んで面倒を見た。 そのあと5年くらい精神分析とカウンセラーのところに通っていた。
私の作るなすび料理はおいしいよ、といってもいまさら食べる気にならないそうだ。 母親の威力の偉大なこと、良きにしろ悪きにしろ。 心しなくては。 P氏に言わせれば、うちの息子たちは、母親について分析ソファで告白する材 料がたっぷりあるそうだけど。