添付文書(英語版)自殺副作用の記載

自殺副作用の抗うつ剤の対プラシボ試験のデータを抜粋する。対象は大うつ病に限らず抗うつ剤を使用した全ての精神疾患、そして抗うつ剤の種類は9~11種類である。

Table 1 
Age Range
Drug-Placebo Difference in Number of Cases of Suicidality per 1,000 Patients Treated
Increases Compared to Placebo
<18  14 additional cases
18-24 5 additional cases
Decreases Compared to Placebo
25-64 1 fewer case
≥65 6 fewer cases

以前から指摘しているが、若年層では自殺リスクが高まるのは明白である。
このテストでは、18歳以下で1000人当たり14人(1.4%)、18歳~24歳で1000人当たり(0.5%)の自殺副作用が発現していることになる。
10万人に換算するとそれぞれ1400人、500人である。

しかし、以前提示した日本の年齢別自殺率のグラフでは、30代の自殺率も増加していることと、連絡会に寄せられる30代の被害者から自殺副作用は多数証言されていることから、この数字には違和感がある。
プラシボの自殺リスクとの増減数の比較であるから絶対数は不明である。
ただ、この数字から分かるのは、少なくとも18歳以下では10万人あたり1400人は確実に抗うつ剤の影響で自殺の副作用が発現するという事実である。

これは、製薬会社の研究データであるので、もちろんそのまま受け取ることは出来ない。
今日は、この自殺副作用が日本で増幅されている理由を指摘したい。

一番疑わしいのは、多剤投与の影響である。
厚労省が先の33万件レセプトデータで隠蔽しようとした抗うつ剤3剤併用率9.8%という恐ろしい数字である。
再度確認しておくが、
パキシルやルボックス(デプロメール)がその代謝阻害作用が強く併用に向かないことは何度もお伝えした。さらに留意頂きたいのは、他の抗うつ剤においても代謝阻害作用はあるということと、そもそも2剤併用している時点で代謝酵素の競合を起こしているということである。(連絡会HP薬の知識、相互作用を参照されたい)
ほとんどの抗うつ剤はCYP2D6を代謝酵素とするから、併用は副作用リスクを増大させる。それは1+1=2ではなく、相加的に3にも4にもなるという事である。
(相加的と言う言葉、医薬品添付文書の相互作用欄に記述されています。)
その他、抗うつ剤+抗精神病薬では、パキシル+リスパダール、パキシル+ハロペリドール、ルボックス+ジプレキサは特に危険である。

米国の状況は判明していないが、何度も言うように日本人の4人に1人は、CYP2D6の活性が低い。薬が効きすぎる人が4人に1人もいるが、だれもそれを考慮していない。

また、高齢者のうつに抗うつ剤が有効であるデータが示されているが、これはかつてうつ病が中年以降に発症する病気と定義されていたことと整合性がある。
抗うつ剤は、高齢者には比較的有用である可能性すらある。
但し、自殺リスクは減少しても、抗うつ剤は心筋梗塞など心疾患リスクを飛躍的に増大する。

若い人は抗うつ剤で自殺し、高齢者は心疾患で死亡するということである。

抗うつ剤と自殺の因果関係は、このように明白である。
しかしながら、薬の副作用で亡くなった被害者で、製薬会社や医療機関から保証救済されている例は一例もない。
おかしくないですか?
米国では、製薬会社が自殺副作用に対して1000億以上の和解金を支払っている。

薬に副作用はつきものである。
99%の人がそのメリットを受け、1%の人が副作用のデメリットを受けるとすれば、99%の人は、その副作用を引き受けた1%の人を救済するのは当たり前でしょう。
(事実は、副作用被害は1%どころではない。副作用発現率は60~80%である。)

抗うつ剤は、気軽に処方できるものでは決してない。
事実その多くが劇薬指定である。劇薬を何種類も併用するなど普通に考えればやれるはずがない。
その処方実態と薬のリスクに対する認識が、絶望的にかけ離れている。

普通に判断すれば、やれないことが、この世界には当たり前に存在する。

司法に対しても、この点を強くお願いしたい。

普通に判断してください。