2.東京都医務監察院のデータが示す事実





6月24日付、毎日新聞朝刊の一面トップで、異例の記事(資料1)が報道されました。その中で、救急救命医は、精神科クリニックの多剤大量処方を「常軌を逸している。」「薬理学上あり得ない。」とコメントしています。





 その救急搬送で運ばれる前に、自宅など病院以外で亡くなった場合、その死因を検査するために運ばれるのが、医務監察院です。医務監察院のデータは、その救急救命医のいう「常軌を逸している。」「薬理学上あり得ない。」状況を証明するものです。





東京都監察医務院の報告(資料2)


東京都医務監察院は、東京都23区内における異常死体の検案(年間1万余体)及び行政解剖(同3千体)により死因の解明を行っている。


その東京都監察医務院の、2001年から2005年の間に、薬毒物中毒に関連した事例の検案及び行政解剖例レポートから抜粋した。


 東京都医務監察院に回される事例は、警察の検視を経て不審とされた事例で、氷山の一角である。飛び込み、飛び降りなど、明らかな自殺は含まれない。





5年間の薬物関連中毒死の内訳(605件)


違法薬物(覚せい剤、アヘン、コカイン等)5.5%(33件)


精神科による処方薬物(催眠・鎮静剤、抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬)


87.9%(532件)*1年当たりに換算すると106名


その他(解熱剤、鎮痛剤、その他)6.6%(40件)


なんと、違法薬物の16倍の方が、処方薬による中毒で亡くなっています。


ちなみに、平成20年の東京都の交通事故死は200人強。





死因の分類


不慮の中毒 20.6%(125件)


自殺 52.4%(317件)


不詳 27.0%(163件)


約半数が自殺、その他は不慮の事故または不詳である。

















また、その内、生前の処方が判明した事例70例の内訳


0種類(8件)、1種類(1件)、2種類(5件)、3種類(7件)、4種類(7件)、5種類(6件)、6種類(9件)、7種類(9件)、8種類(5件)、9種類(7件)、10種類(0件)、11種類(3件)、12種類(2件)、13種類(1件)


中毒死の大半が、生前に多剤併用処方されている。


これらの薬物の中には、比較的治療域が広く、単独で大量服用しても死亡まで至りにくいものも存在するが、後述するように、実際は多剤の併用により、複数の薬物の相互作用等の要因があった可能性が高い。(同レポート内から引用)





平成19年の薬毒物検出状況612件の内訳


注)死亡数ではなく、検体数(胃、血中、尿、胸空液をそれぞれ1件とする。)である。


内、バルビツレート酸系睡眠薬173件


内、べゲタミン(塩野義製薬)の成分、


フェノバルビタール、塩酸クロルプロマジン、塩酸プロメタジンの合計343件


つまり、薬物中毒死の半数以上に、バルビツレート酸系及びべゲタミンが絡んでいる。











以上の東京都医務監察院のデータから、読み取れる事実





(1) 違法薬物の中毒死の16倍の方が、処方薬により死亡している。


(2) 東京23区だけで年間約100人、人口比で全国換算すれば年間1500人以上の方が、処方薬により中毒死している。さらに、これは、氷山の一角である。


(3) 薬物中毒死亡者の大部分が、多剤併用処方をされている。


(4) 薬物中毒死の半数以上は、べゲタミンとバルビツレート酸類といった古い睡眠薬が関与している。


(5) 自殺とされたのは約半数、残りは、事故または不詳とされている。







ここで示したデータは、今春の全国自死遺族連絡会の調査、自殺者の70%が自殺前に精神科を受診していたという事実を裏付けるものです。


 これは、精神科の処方を規制する事により、自殺者が大幅に減少する可能性を示しています。