会陰切開後のいきみと便秘
会陰切開(えいんせっかい)による出産では、産後直後から生じる下腹部の痛みから便秘になることがあります。産後に便秘が生じる原因はさまざまですが、会陰切開も産後の便秘の原因となります。妊娠後、出産を無事終えたお母さんは、子の誕生による嬉しさと妊娠という責任感と緊張感から解放され、ほっとするのではないでしょうか。でも、出産直後のお母さんにとっては、会陰切開している部位の痛みや子宮が元の大きさに戻ろうとするときの後陣痛で、出産後も下腹部の痛みを感じます。そのため、出産後、初めてのトイレ(排便)では、下腹部痛のためにいきむことができず、排便がうまくいかなくなり、これを契機として便秘となることが多いです。痛みのため、会陰切開の傷口をかばおうとすることが、排便に影響し便秘の原因となるのです。このように、会陰切開による痛みは、排便時のいきみを原因として便秘になるのです。出産前は、会陰切開のことがとても心配というお母さんもきっと多いことでしょう。ここでは、会陰切開後のいきみと便秘についてお話します。
会陰切開とは
会陰とは、膣(膣口下端又は陰裂下端)と肛門の間の部分のことを指し、会陰切開とは、胎児を分娩する際に、その部分をメスで切開する処置のことをいいます。また、会陰裂傷とは、分娩の際に、自然に会陰が裂けることを意味します。会陰切開及び会陰裂傷とも、分娩後直ちに縫合しますので、両者とも傷口の治り方にほとんど差はございません。しかし、病院の産科・産婦人科では、会陰切開による分娩が優先されます。
分娩時に会陰切開が積極的に行われる理由及びその目的は、①高度な膣・会陰裂傷の予防を目的とするもの、②分娩第2期の短縮及び児へのストレス軽減を目的とするもの、③傷口の瘢痕化を軽減し、美容的側面から創傷治癒を目的とするもの、等があります。「膣・会陰裂傷の予防」を目的とした会陰切開は、高齢初産などで軟産道強靭症(産道が硬いこと)があり会陰の伸展(広がり)が不良な場合、恥骨弓が鋭角で会陰部に児の抵抗が強くかかる場合、膣入口部が狭い場合、巨大児の分娩の場合等で行われ、会陰切開による分娩が行われる主要な原因となります。未熟児の分娩では、児にストレスがかからないよう会陰切開による方法がとられます。その他、会陰切開では縫合がしやすいこと、また会陰裂傷による後遺症を避ける目的で会陰切開が行われます。
会陰切開の痛み
会陰切開には、正中側切開法、正中切開法及び側切開法などの切開方法があり、いずれも2~3cm程度の切開が行われます。正中側切開法は、会陰切開で最も多く行われている切開法です。膣口入口の下部から肛門を避けて左又は右に2~3cm斜めに切開します。正中切開法では、膣口入口の下部から縦方向(正中)に切開が行われます。側切開法は、膣口入口の横の部位から坐骨結節の方向に斜めに切開する方法です。各会陰切開とも切開後に分娩となりますが、分娩が終了すれば、切開で生じた傷口は縫合されることになります。会陰切開による傷口は比較的深いものとなりますので、縫合においても、膣壁縫合、皮下縫合、皮膚縫合など多様な手法がとられます。
会陰切開は、分娩時に赤ちゃんの出口を広げる処置方法ですが、その痛みや傷痕が気になるお母さんもきっと多いことと思います。一般に、会陰切開の痛みは、分娩中はほとんど感じない人が多いです。痛みを感じるのはほとんど出産後です。上記の切開方法や切開の程度によって痛みを感じる強さは異なります。会陰切開の痛みの感じ方には個人差があります。痛みが軽い人であれば、分娩の当日からトイレに歩いて行けるくらい痛みの違和感を感じない人もいれば、ズキズキした痛みがあり、ゆっくりとしたつかまり歩きしかできない人もいます。
会陰切開した傷は、通常1か月程度で治癒しますが、人によっては傷の回復が遅れる場合もあります。そのため、痛みが続く期間も人によって異なりますが、強い痛みを感じるのは多くの場合、分娩後3日間ぐらいです。人にもよりますが、会陰切開後、1か月が経てば傷は回復し、痛みもなくなります。ただし、2か月以上経っても会陰切開の傷口がひどく痛む場合もあります。このように、会陰切開の痛みは、切開時よりも分娩後の傷口に由来することがほとんどです。会陰切開後2, 3日では治らず、最低でも1週間、通常は会陰切開後1か月ぐらい痛みが持続することになります。
会陰切開の痛みと便秘
産後は、「会陰切開の傷が気になる」、「痔になってしまった」、「妊娠と出産で腹筋力がなくなってしまった」等々の理由で、排便時にしっかりといきめず、便秘になってしまうお母さんもきっと多いことでしょう。会陰切開の痛みも産後に生じる便秘の主要な原因となります。会陰切開の傷口の痛みは、排便に影響し、それが原因となって便秘が生じます。
会陰切開と便秘との関係では、①排便時に、会陰切開部位の傷口が開いてしまうのではないかという恐怖心からうまくいきむことができない、②排便時にいきむと、実際に会陰切開部位の傷口に痛みを感じるため、の2点が上げられます。このため排便が不十分となり、大腸内の便が長時間留まることによって便の水分が過剰に体内に吸収され、硬い便となって便秘が生じます。会陰切開の傷口が完治しない段階で、便が硬くなりますと、硬い便は傷口を刺激し、会陰切開部位の傷口の治癒が遅れることがあります。会陰切開で傷口がいつまでも痛みを感じる人は、便秘がその原因となっていることが多いです。このように、会陰切開による痛みと便秘とは、悪循環を繰り返すことになります。
会陰切開後の痛みと便秘の対策
会陰切開の痛みは、切開部位の傷口が接着するまで続きますので、傷口が治るまで待つしか方策はございません。その間は、鎮痛剤で対処することになります。ここで大切なのは、傷口が細菌などで感染しないよう、傷口を絶えず衛生的にすることです。細菌感染は、傷口の治癒を遅延させます。また、会陰切開部位は肛門部と接近しているために、便からの細菌感染が生じやすくなりますので、とりわけ排便後は、傷口の衛生状態に気を付けることが大切です。
便秘は、会陰切開の傷口の治癒を妨害しますので、会陰切開による産後の便秘対策は非常に重要となります。会陰切開を原因とする便秘対策で重要なことは、硬くなった便をいかに軟らかくするかです。刺激性下剤である便秘薬は、大腸を刺激し排便を促しますが、会陰切開の傷口の痛みが強くなってしまいますので、会陰切開による産後の便秘対策には不適当となります。また、酸化マグネシウムは、高マグネシウム血症が発現し、死亡例の報告がありますので、産後の便秘対策には用いない方がよいでしょう。
硬くなった便を軟らかくする方法としてよく知られているのが、食品成分であり、野菜類や根菜類に含まれる天然の食物繊維であるイヌリン食物繊維です。野菜類や根菜類に含まれる主要な食物繊維は、セルロースをはじめとした不溶性食物繊維ですが、イヌリン食物繊維は、そのような食物繊維とは異なり、水によく溶ける水溶性食物繊維です。イヌリン食物繊維は、胃酸や胃腸内の分解酵素では分解されずに、そのままの形で水に溶けた状態で大腸に到達します。大腸に到達したイヌリン食物繊維は、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌のみの栄養成分となって、それらの善玉菌を増やします。これをプレバイオティク効果といいます。ビフィズス菌などの善玉菌には、硬くなった便を軟らかくする効果があります。ですので、イヌリン食物繊維を摂取することによって、大腸に生息する善玉菌が増え、硬くなった便が軟らかくなって便秘が解消されます。
しかし、野菜類や根菜類に含まれるイヌリン食物繊維は、非常に少ないのが欠点となっています。でも、今では、スティムフローラのように、不純物を全く含まない極めて高純度のイヌリン食物繊維が、健康補助食品として市販されていますので、会陰切開を原因とする便秘の予防と改善に、このような健康補助食品を活用するのも有用です。また、便秘薬は、その有効成分が体内に吸収され乳汁中に分泌され、それが哺乳中の赤ちゃんに摂取されてしまうために、便秘薬は授乳中のお母さんは使用することができません。他方、イヌリン食物繊維は、天然成分で体内に吸収されることがないので、授乳中のお母さんも安心して摂取することができるメリットがあります。さらに、大腸内の善玉菌が増えることによって、大腸菌などの悪玉菌が減りますので、会陰切開の傷口の細菌感染リスクが軽減されます。
今では、分娩時の母体及び赤ちゃんの安全性を考慮して、会陰切開による分娩が積極的に行われるようになりました。しかし、会陰切開による分娩では、その痛み対策と便秘対策が必要となります。まずは、ご自身で対応することのできる便秘対策を積極的に取り入れることが大切です。産後の体の不調を整えることで、育児に集中し、励むことができます。
根菜類に含まれる貴重な天然成分であるイヌリン水溶性食物繊維は、腸内環境を改善し、自然な排便を促します。排便で苦痛を伴う方、お通じが毎日ない方、宿便気味の方、便が硬く排便が困難な方など、便の排泄にトラブルを抱えている方に、とても有用な天然成分です。スティムフローラは、この機能性の高い水溶性食物繊維を高純度(99%以上)に精製し、飲みやすいよう粒にした健康補助食品です。市販の食物繊維とは異なり、水に溶かさず、そのままお召し上がりいただけます。快適な、毎日のお通じのために!