父は大きな声で家族の愚痴を言い出したのだ。
しかもとても辛辣な言い方にイライラしたが、余計ややこしいことにならないよう、我慢してただ聴いていようと思った。
ただ、姪っ子の前で家族の誰かを悪くいうのはどうしてもやめて欲しかったので、少し口を挟んだところ逆に父の怒りを買ってしまった。
父の気持ちも理解出来ない訳ではない。
私は調和的に接したいと思い、姪だけでなく父の気持ちも一生懸命に考えたのだ。
けれど、父のいるダイニングと私のいるキッチンの間に立ち尽くし、動けず黙って会話を聞いている姪を感じなが、身内の悪口を聴いているうちに、私は胸がドキドキしてきて、顔が熱くなってきた。
「もう、いい加減にして!子どもの気持ちも考えてよ!!」
私はすっかり冷静さを失って、気がついたら大きな声で父に怒鳴っていたのだ。
近くに立っていた姪の驚いている表情が目に飛び込んできた瞬間「あっ…やってしまったぁ…」そう思ったがもう手遅れで、父は一瞬黙ったが、声のトーンをやや落としながらも更にイヤミを込めながら家族への愚痴を続けた。
「さっ、ご飯ができたから食べよ〜」
私はいつも通りに振る舞おうとした。
でも今回はなぜか上手く切り替えられなかった。
その日の夜、昼間の事を思い出した。
ネガティブなやり方をしてしまったのではないかと気になり、少し気分がスッキリしないままベットに入った。
でも先日エミールさんが伝えてくれたことを思い出し、自分を責めることと、正当化するようなことを考えるのはやめておくことにした。
その翌日、清ちゃんから電話がきた。
「ゆきっぺさぁ、昨日家でまた何かあった?」
昨日のことについてのエミールさんからのメッセージだった。
「エミールさんにも清ちゃんにも、ホント隠し事できないなぁ〜」
私は左上を見つめてニヤっとし、心の中でそう呟いた。
つづく