<第4話>



あたしはよくレンとケンカをした。


多分あれはケンカじゃなくて

レンの一方的な脅迫とか暴力だと思う。


ケンカの始まりはいつだって些細なこと。

軽く言い合いになるとそのうちにレンが怒鳴り始める。


わたしはレンの怒った姿が大嫌いだった。

本物の悪魔みたいな顔をしてわたしに怒鳴り散らす。


もう別れたいとこのレンの姿を見る度に何度思ったことだろう。

わたしがもう別れたいと告げる度にレンの暴力が始まる。


殴ったり蹴ったりではなく

髪を引っ張られ床に打ちつけられたり、首を絞められたり。


恐怖は与えられるけど

いつも傷跡は残らなかった。


全身が痛くてたまらなくても

痣になるような傷は殆ど残らない。


人前ではレンは人当たりはよくとても明るい性格だった。

誰もこんな風に変貌するなんて想像もしないだろう。


誰かに話したら

わたしのことを信じて貰えるだろうかと不安になるくらい

彼の知人は誰も想像しないだろう、こんな彼の姿を。

<第3話>



一晩寝て朝になると現実が押し寄せてくる。
昨日はあまり実感できなかったような嫌な感覚が押し寄せてくる。

できることなら現実逃避でもしたい。
何も考えたくないし何もしたくない。
何もかもが絶望的に思える。

でも、こうしている間にも子供はきっと育っているのだろう。
今はまだほんの細胞。

まだ、実感もできない。
どこか他人事のような気もする。

夢なら覚めて欲しいけど。
夢じゃないことなんてわかっている。

今コノ細胞の命はあたしの手の中にあるんだなぁ。

あたしは君を殺すのか?
あたしは君を生かすのか?

わからない。
わからないよ。

<第2話>



「そんなに心配なら妊娠検査薬使ってみれば?」


「怖いよ・・・。」


「これで大丈夫なら安心するんだから。俺、検査薬買ってくるよ」



そう言ってレンはドラッグストアに妊娠検査薬を買いに行った。


それからしばらくしてレンは戻ってきた。

わたしがトイレに行くときレンは妊娠検査薬を持ってトイレについてきた。


そして検査薬にわたしのおしっこをかけると

レンはそのおしっこのかかった棒を持って逃げるようにリビングに戻って行った。


わたしはなんだか不安になった。



「ねぇ、どうだったの?陰性だよね?」


レンは何も言わずに黙っている。


「ねぇ、聞いてるの?陰性だよね?」


レンは何も言ってくれない。


「ねぇ、ねぇってば」



「うん。陰性だよ」


「本当に?ねぇ本当?」


「・・・・・・・・。」


「じゃあそれ、あたしにもちゃんと見せてよ」


「・・・・・・・・。」


「ねぇ・・・」


「・・・・ごめん」



一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。



「陽性なの?」


「ごめん」



わたしはレンの手から妊娠検査薬を奪い取った。

そこにははっきりとプラスが示されていた。


わたしは泣くしかなかった。



「おまえに見られる前に細工してプラスだってわからないようにしようと考えてたんだけど、

やっぱりいつかバレるし」


「あたりまえでしょ。そんなこと隠してどうするの?」


「だから隠さず言ったじゃん」


「絶対妊娠しないって言ったじゃない。ゴムなんてなくても大丈夫って言ったじゃない。どうして?」


「ごめん」


「ねぇどうして!!」


わたしはベッドの上で布団に顔をうずめて泣き叫んでいた。

レンはソファの上で下を向いていた。


今さら後悔してもすべてが遅かった。



<第1話>



まさか、こんなことになるなんて想像してなかった。


5日も生理が遅れるなんて事は今までなかったけど

ストレスが原因で3日くらいなら遅れたことはあったから。


熱を計るとなんだか熱っぽい。

数日前から身体がだるくて微熱があったから

風邪薬を大量に飲んでいた。



「ねぇ、生理がこない」


「風邪を引いているから遅れてるんだろ。女にはよくある事じゃん?」


「でもあたし、早く来ることはあってもこんなに遅れたことない」


「だから、たまたま風邪と重なったから」


「そうかなぁ・・・」



セックスをするときはいつもゴムをしていなかった。

膣外射精・・・。

中で出したって妊娠する確率なんて50パーセント以下。


子供が欲しくて毎月セックスしている人だって

一発でできているわけじゃない。


だから、例え少し精子が漏れていたとしても

そんなものは微々たるもの・・・。


今までだってできなかったし、こんな奇跡みたいに妊娠するわけなんてない。


だよね・・・?

ねぇ、そうだよね・・・?