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匿名で行きます。

〔要件事実〕

岡口基一『要件事実マニュアル第1巻(第4版) 総論・民法1』,『要件事実マニュアル第2巻(第4版) 民法2』(ぎょうせい,平成26年)

用途:実務修習,民裁起案,民弁起案等

おすすめ度:☆☆☆

 

言わずと知れた要件事実の辞書。修習との関係では,さしあたりは1と2で足りると思います。

実務修習で見る事件に関連する項目について,辞書的に参照することは必ずあるはずです。また,集合修習での起案対策としても有用です。民裁起案の主張整理問では,新問研や類型別を理解していれば条文を参照しつつ解けるものが出題されますが,本書を参照していれば安心です。民弁起案では,見通し型の問題(依頼者との法律相談の記録を読んで,法律構成及び攻撃防御方法を検討する問題)が出題されますが,要件事実マニュアルで典型的な攻撃防御方法をざっと頭に入れておけば,起案の現場で広く法律構成を思いつくことが出来ます。また,要件事実マニュアルには,事実摘示と「よって書き」が記載されているため,訴状や答弁書の起案が出題されるのに備えて,本書で正確な表現を学習しておくのが有益です。

改訂され,12月に第5版が発売されるようです。

 

 

大島眞一『〈完全講義〉民事裁判実務の基礎〔第2版〕(上巻)(下巻)』(民事法研究会,平成26年)

用途:民裁起案,民弁起案等

おすすめ度:☆☆

 

いわゆる大島本。上巻が要件事実,下巻が事実認定と演習問題によって構成されています。

いずれも,分かりやすい解説が加えられていますので,要件事実や事実認定の入門としてなにか書籍で勉強したい場合には,本書は有用だと思います。特に,要件事実については,類型別を詳細にした内容なので,類型別に記載されている内容をしっかり理解したい場合にはおすすめです。

ただし,実務修習では,網羅性に優れた要件事実マニュアルを参照すると思いますし,研修所の起案でも,要件事実をさっと確認する場合には新問研,類型別及び事実摘示記載例集を参照し,要件事実を詳しく確認する場合には要件事実マニュアルを確認することになると思います。

事実認定については,白表紙である『事例で考える民事事実認定』(いわゆるジレカン)が分かりやすいですし,事実認定を詳細に勉強したい場合には,後述の『民事訴訟における事実認定』を参照した方が体系的な学習ができるので,本書は両者の中間的な位置付けといえるでしょう。

同一著者による『新版 完全講義 民事裁判実務の基礎[入門編]─要件事実・事実認定・法曹倫理─』『新版 完全講義 民事裁判実務の基礎[発展編]─要件事実・事実認定・演習問題─』が刊行されているので,今後はこちらになるのかなと思います。

 

 

村田渉=山野目章夫編著『要件事実論30講〔第3版〕』(弘文堂,平成27年)

岡口基一『要件事実問題集〔第4版〕』(商事法務,平成28年)

用途:民裁起案

おすすめ度:☆☆☆

 

いずれも,要件事実の問題集です。民裁起案の主張整理起案の対策として,要件事実の演習をすることが有用です。

要件事実論30講は,要件事実論の総論的な解説があること,問題数が多いことが,要件事実問題集とは異なる特徴と言えるでしょう。要件事実論30講は,全ての問題が言い分方式であり,かつ,要件事実の問題としては基本的といえますが,他方,要件事実問題集は,言い分方式の問題のみならず,訴状,答弁書,準備書面から主張整理をする問題もあり,また,問題も発展的なものが多く,集合修習での民裁起案との関係では,より実践的といえるでしょう。ただし,要件事実の学習では,問題演習を数多くこなすことが重要だとされているので,その意味では,問題数の多い要件事実論30講は優れているといえます。

任官志望者でも,いずれか一方を解けば足りると思います。

 

 

〔事実認定〕

司法研修所編『民事訴訟における事実認定』(法曹会,平成19年)

用途:民裁起案

おすすめ度:☆☆

 

事実認定の基礎(第1章),各種証拠方法の証拠力(第2章),契約類型による事例分析(第3章)が解説されています。白表紙(ジレカン)とは異なり,一般論の記載が多いため,民事事実認定を体系的に学習できます。また,二段の推定,保証契約の成否,売買契約の成否,消費貸借契約の成否については,判断のポイント(視点・メルクマール)が記載されている上,多数の裁判例が記載されています。刑事事実認定については,判断のメルクマールを記載し,裁判例を多数紹介する書籍は数多くありますが,民事事実認定について,特に,契約の成否の判断について,そのような体裁の書籍は多くないので,その意味でも,本書は有用といえます。

また,資料として記載されている,高裁裁判官のインタビューも大変興味深いです。

なお,本書は,処分証書の意義について,ジレカンとは異なり,「記載された説」を採用していますので(ジレカンは「よってした説」を採用しています。),その部分は注意する必要がありますが,判断の実質は異ならないので,問題ありません。

 

 

村田渉編著『事実認定体系〈契約各論編〉1,2』(第一法規,平成27年)

用途,民裁起案

おすすめ度:☆

 

本書は,民法の条文ごとに,事実認定のポイント・判断基準を記載したものです。いわば,事実認定のコンメンタールといえるでしょう。

本書の記載はいずれも有益ですが,修習との関係では,使う条文は一部ですので,購入するほどではなく,例えば,民裁修習中に裁判官室に本書があれば参照する程度でいいかもしれません(☆が一つなのは,修習との関係でという意味でオーバースペックだという趣旨にすぎません。)。

 

 

榎本光宏「契約書の実質的証拠力について-処分証書とは-」判タ1410号26頁

用途:民裁修習,民裁起案

おすすめ度:☆☆☆

 

「金銭消費貸借契約書(本件契約書)があるが,実際には,当事者間では金銭の贈与がなされており,前記契約書は『税金関係の処理のため,これに署名押印してほしい』との贈与者の求めで作成された」との事案の処理に関係して,①実体法(民法)上の問題として,「真実は,金銭の贈与を受けたというのであるが,本件契約書上,金銭の合意が記載されていることをどのように考えるか,②手続法(民訴法)上の問題として,形式的証拠力が認められる本件契約書の実質的証拠力をどのように考えるかという問題について,学説の整理と検討がなされています。

修習生としては,②が重要でしょう。処分証書の意義,処分証書と「その記載どおりの法律行為がされたと認められない特段の事情」の関係,処分証書の判断時期・方法について整理されています。ジレカンのみでは,処分証書や類型的信用文書等々の概念を十分に整理して理解するのが難しいですので,本稿により整理すれば,民裁起案で迷うことがなくなると思います。

 

 

〔争点整理〕

林道晴=太田秀哉編『ライブ争点整理』(有斐閣,平成26年)

用途:民裁修習

おすすめ度:☆

 

本書では,4つの事案について,裁判官,原告被告代理人の三者の視点から,一つの事件の争点整理がどのようになされているか追いかけることができます。

民裁修習では,事件を傍聴する際に,裁判官と,次回の弁準の期日で何をするか,今後の争点整理をどうするかということを議論することがあります。しかし,短い修習期間中では,一つの事件の争点整理を追いかけることができません。ですので,本書で,事件を通じた争点整理を学習することで,実際に傍聴する事件の争点整理を全体の中で考える助けを得ることができると思います。

本書は,実務修習や研修所の起案との関係で必須とまではいえないかもしれませんが,ややもすると民裁修習の傍聴はなんとなく過ぎ去ってしまいがちなので,本書を読んで争点整理の理解を深めた上で臨むのもいいのではないでしょうか。

 

 

〔手続〕

圓道至剛『若手弁護士のための民事裁判実務の留意点』(新日本法規,平成25年)

用途:民裁修習,弁護修習

おすすめ度:☆☆☆

 

民事訴訟の第一審・控訴審の手続の流れにそって,訴訟代理人弁護士が「ありがちな失敗」をすることなく訴訟活動をするための「ありがちな失敗」を解説するもの。

民事裁判手続を解説する書籍は白表紙にもありますが,本書はそれよりも遥かに詳しい上,実務上の運用を丁寧に解説しているため,これから実務を学ぶ修習生としては是非とも本書を読んでおきたいといえます。また,例えば,手続を進める模擬裁判をする場合には,本書を読めば,各期日にやるべき手続を把握できます。

なお,同一著者による『企業法務のための 民事訴訟の実務解説』(レクシスネクシス・ジャパン,平成28年)も参考になると思われます。

 

 

〔尋問〕

加藤新太郎編著『民事尋問技術〔第3版〕』(ぎょうせい,平成23年)

用途:弁護修習,選択修習・集合修習(模擬裁判)

おすすめ度:☆☆

 

弁護修習で指導弁護士から尋問の起案の課題を出された場合,模擬裁判で尋問をする場合には,本書で尋問技術を学ぶと良いでしょう。

また,本書には,立証計画についての記載されており,興味深いです。

なお,改訂されるらしいです。

 

 

〔和解〕

裁判所職員総合研修所監修『書記官実務を中心とした和解条項に関する実証的研究〔補訂版・和解条項記載例集〕』(法曹会,平成22年)

用途:弁護修習,民裁修習

おすすめ度:☆☆

 

弁護修習や民裁修習で和解条項の起案の課題を出された場合,本書の和解条項記載例を参照するといいでしょう。

なお,本書は,司法研修所の書籍部でしか販売されていないという話です。

 

 

〔民弁総論〕

京野哲也『クロスリファレンス 民事実務講義〔第2版〕』(ぎょうせい,平成27年)

用途:弁護修習,民弁起案

おすすめ度:☆☆☆

 

元民弁教官の著者が,民事弁護の受任から終了まで網羅的に解説したもの。弁護修習でわからないことがあった場合にはまずは本書に当たれば大抵のことは解決します。

また,本書の執行保全の解説は,短いながらも要点がまとまっており,研修所の民弁起案の対策としては,本書で必要十分といえます。白表紙よりもおすすめです。