【可夢偉レポート】アメリカGP DAY2(P3&Qualify) | GOODSMILE RACING 広報ブログ

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う~む、KOBの予選結果はP16・・・。
明らかな原因が分からないだけに複雑な心境ですね。
自分達で、明らかにミスを犯したと解っていたら、また、別なんですが。

あくまで個人的な見解ですが、DAY1のレポートで触れた、コース清掃に問題があるのでは?と、思っています。
実は、DAY1で触れたアメリカのレースでは「ドライヤ」を使うというクダリですが、このドライヤが予選の前に登場しているのです・・・。

DAY1の走行終了後に行われたドライバーズ・ミーティングにおいて、KOBはFIAのチャーリー・ホワイティングに、レーシング・ラインに、清掃車は入れないで欲しいとリクエストしていたのです。
その理由は、せっかくのアスファルトに沈着したラバーが無くなってしまうからです。
KOB曰く「フィンランド人ドライバーが「NO GRIP」と言っているんだから、そうとうのグリップの無さだと解りそうなものだけど・・・。そのうち一人は、ラリーを経験しているドライバーなんだから」・・・と、いう状況ですから、どれくらい滑りやすいかが伺えると思います。

結果、金曜日の走行終了後には、コース清掃が行われ、P3が行われ、そして予選の前にはタイヤかすを飛ばすために、ドライヤが使用されました。
このドライヤ、実は旅客機のジェット・エンジンそのもので、もの凄い熱を発生します。(だから、雨天時の使用でコースが乾くのです。)

繰り返しますが、あくまで個人の推測ですが、このドライヤの熱が、新設アスファルトの上に滲んでいる油分に変化をもたらしたのでは?と、僕は考えています。

つまり、コースコンディションが、走行のラバー沈着で「良くなった」のではなく、ドライヤによって「変わった」のではないか・・・と、言うことです。

P3で調子の良かったKOBは、セッティングをいじらずに、微調整だけで予選に臨んでいます。
もちろん、路面の温度はP3が17度で、Qualifyは33度と大きく違いましたが、この温度変化に対応する「微調整」は、これまでのコンパウンドと路面温度の相関関係のデータによって折り込みずみです。

もっとも、P3からQualifyにかけては、タイムを悪化させたドライバーがほとんどで、特にROSなどは、P3では好調だったので、KOBのような状況に陥ったのは、KOBだけではなかったことを考えると、ドライヤの影響が考えられるのかな?ということです。
実際、VET、HAM、MAS、HULを除けば、それ以降の顔ぶれは様変わりしていることも、考慮して、の事です。

いずれにしても、状況に対応できなかった事は確かですが、これというという原因が分からない・・・と、いうのが本当のところです。
おそらくは、タイヤ・ウォーマーの温度管理か、ロール・スティフネスの設定か、どちらかかな・・・という状況です。

現象としては、タイヤ表面のオーバーヒートによるパフォーマンス・ダウンです。
いずれにしても、予選を走ってしまったら、セッティングは変更できないルールですから、レースに向けてはタイヤ・ウォーマーの温度管理で対応するしかない・・・と、いう状況です。

それに、ドライヤでコース掃除するのは良しとしますが、そもそもタイヤかすが出ていない・・・。
これは、シンガポールGPと同じ現象で、それが何を意味するかというと、KOBはもちろんそうだったのですが、他のドライバーもタイヤをうまく機能(グリップ)させることができていないということです。

では、タイヤを機能させればいいじゃないか・・・と、いう話になりますが、それが難しい話で。
例えば、タイヤ・ウォーマーの温度管理といっても、あくまで一般的な例で言うと(今回のKOBがそうだというわけではありません)、タイヤ・ウォーマーでの事前のタイヤの暖めは、コンパウンドとその日の路面温度にもよりますが、90度から140度の間で設定されています。
この値というのは、F1以外でタイヤ・ウォーマーの使用経験がある人なら解りますが、異様に高い値です。(逆に言うと、それくらい「暖まらない」のです。)


さて、レースの戦略ですが、実際、プライムもオプションも、ほとんど摩耗しないし、そもそもグリップしないので、タイヤ種類間のタイム差は、無きに等しい状態です。
どちらのタイヤでも、ゴールまで走りきれます。つまり、1ストップが標準です。
ただ、タイヤの表面を、今回の予選のようにオーバー・ヒートさせてしまうと、2ストップにならざるを得ない状況です。
ただ、オプションの方が、タイヤを暖めるのにより多くの周回を必要としているので、P10までのドライバーは予選で使用したオプションでスタートすることに対して、P11以降のドライバーは、どちらか選ぶ事ができます。
トップ10に合わせて、同じ戦略で戦うか、はたまたプライムでスタートして、暖まりの早い部分で順位を上げて行くことに掛けるか。
ただし、その代わり、タイヤ交換でオプションに変えたとたん、タイヤが暖まらず(10~15ラップは必要)にペースが上がらず苦労している所に、暖まりの良いプライムタイヤに変えたオプション・スタート組に、再度追い抜かれてしまうか、どちらを選ぶか・・・と、いうことになります。

さらに、偶数グリッド(内側)スタートのドライバーは、スタートで、タイヤがグリップせず、奇数グリッドのドライバーに先行されることは必至の状況なので、その状況も考えておかねばなりません。
偶数グリッド側では、オプション・タイヤは、グリップ的にも不利だと言えるでしょう。

さて、誰がどんな戦略に出るか・・・。
では、レースをお楽しみに!
KOBは、何とか頑張れば・・・1~2ポイントを獲れるチャンスはあると思います。


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※レポート内のドライバー略称は以下の通りです。
KOB=小林可夢偉
ROS=ニコ・ロズベルグ
VET=セバスチャン・ベッテル
HAM=ルイス・ハミルトン
MAS=フェリペ・マッサ
HUL=ニコ・ヒュルケンベルグ