【可夢偉レポート】アメリカGP DAY1(P1&P2) | GOODSMILE RACING 広報ブログ

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新設のCircuit of the Americas [COTA]では初開催となるアメリカGPが始まりました。
場所は、テキサス州のオースティンという場所にあります。

直近のアメリカGPは、2000年から2007年まで、アメリカのモータースポーツ界の聖地であるインディアナポリス・モーター・スピードウェイ、正確には新設されたインフィールド・コースで開催されていました。

(個人的には、私が高木虎之介選手(今はZENT CERUMOのGT500の監督ですが)のマネージメントを行っていた時代に、インディアナポリスに住んでいた事と、インディ500を戦った経験から、インディアナポリスでのF1の方がしっくりくるのですが)

過去に、チャンプ・カー・シリーズとインディ・シリーズを戦った個人的な経験からすると、このCOTAは、もっともアメリカらしくないサーキットと言えるでしょう。
F1界からすると、ヨーロッパのF1サーキットが、オースティンにある(出来た)という状況ですから、違和感は無いと思いますが、アメリカのサーキットの基準からすると、かなりの違和感があると思います。
大きなお世話でしょうが、F1の開催期間が5日間だとすると、後の360日の間、このオースティンはどうやって営業するのだろう?と、思います。
(例外として、Moto GPは大歓迎でしょうね。)


同じレースなのに違和感?なぜ?と、思う方もいらっしゃると思います。
ちょっとだけ、アメリカ側の見方として、かいつまんで見ると・・・

まず、パドックエリアが狭く、ガレージ・ビルディングがあること。
これだと、18輪トレーラーでやってきて、ピット裏に、オーニング(テント)を設営する場所がありません。
COTAのガレージ・ビルディングの裏にトレーラーを置き止めして、ファンがガレージ廻りを歩くと、作業がしずらいので、セキュリティを設置せざるを得ず、結果として、ファンはチームの作業エリアを見ることが難しくなるでしょう。
(この状況は、日本のGTレース時のガレージ・ビルディングのトランスポーターがひしめいている状況を想像して頂けば良いと思います。)

また、コースとピットロードの間に大きな仕切りがある(スタンディング・スタートのF1では、安全性を考慮して当たり前ですが(アメリカのレースは日本のGTと同じローリング・スタートなので、スタート時の事故は起きにくいのです))、グランドスタンド側から、ピット作業の様子が見にくい・・・
と、いった苦情が寄せられる事でしょう。
オーバル・レースが主体のアメリカのレーシングコースは、大体グランドスタンド側(コース外側)にあるビルディングが豪華で、「格」も高い事になっていて、そこにVIPラウンジが設置されます。
が、ヨーロッパでは、これが逆で、パドッククラブといった「格」の高いVIPラウンジはピットビルディング側にあります。

実は、我が日本の2大サーキットの富士と鈴鹿も、実は当初のピットとガレージのアレンジは、アメリカ風だったのです。
ですから、グランドスタンド側に、かつてのビルの名残があって、場所も広くとられています。
(第一、富士は「スピードウェイ」と、正式名称が残っているぐらいですから。)
もてぎが、そもそもオーバルとして設計されているので、グランド・スタンド側が豪華だという理由がおわかり頂けるでしょう。

つまり、日本のレース界は、アメリカ風からヨーロッパ風へ趣旨変更したというわけです・・・。
乗用車のスタンダードも、アメ車からヨーロッパ(ドイツ)車へ、趣旨変更した訳ですね。

そして、富士も鈴鹿も、近年、ピット側の強大な土木工事(山を削ったり、池をカバーしたり)なくしては、現状のヨーロッパ・スタイルにそぐわなかった・・・と、いうわけです。

前置きが長くなりました。
こうして、F1屋にとっては、違和感なく、アメリカでレースできるので、インフラ準備状況がギリギリまで、ドタバタしたという以外は、新しいコースでレースするという状況で、アメリカの特殊事情に合わせるという必要はありません。
(実は、こいうところが、Mr.Eの凄技です。)
ピレリが、コンサバなコンパウンド選択で準備した以外は・・・。


ここで、もうひとつ、アメリカうんちくになりますが、全体的に、とにかくタイヤかすが出るレースとなるため、アメリカのレース・コースでは、濡れた路面を乾かす「ドライヤ」が、このタイヤかすを吹き飛ばす「ブロア」として2重に機能して、とても有益ではありますが、ヨーロッパのようにバキューム(掃除機)による清掃車が、逆に一般的ではありません。(最高の清掃車は、シンガポールGPで使用されています。)

パドックを見回してみましたが、COTAには、この清掃車が無いことが推測され、結果、アスファルトの隙間に、砂が残っている状態でP1が始まりました。
その上に、ピレリのコンサバ・コンパウド選択のおかげで、F1車両的には、ほとんど「氷の上」を走っているような状況だったと言えるでしょう。
(コンパウンドが、スーパー・ソフトとソフトだったら、溶けたコンパウンドに砂が引っ付いてタイヤかすとなり、割と早い段階でコースの状況は改善したはずです。)

結局、アスファルト内の砂は、F1マシン自ら発生するダウンフォースによる負圧で、全車で一緒に「吸い出し」て、掃除するしか無いというわけです。

状況的には、ドライバーの誰もが「グリップしない」と、訴えることになると思いますが、具体的には、リヤタイヤが空転して加速しない、コーナーで横滑りする、ブレーキを踏むとロックする・・・と、いう状況です。

こうした状況の中、KOBは高速コーナーが続くセクター2を、SauberC31の車格を上回る速さで走り、2セッションともトップ10で終了しました。
なかなか、良い滑り出しと言えるでしょう。
大体、こういう状況の場合、KOBはレースでは活躍するケースが多いです。

車両のバランスは、空転するリヤタイヤが空転による摩擦熱のおかげで先にグリップが向上し、暖まらないフロントタイヤを押しまくる「アンダーステア」状況です。
これは、どのドライバーも同じことでしょう。
柔らかい側のオプションタイヤでも、この状況に変わりは無く、ニュー・タイヤを装着した計測1ラップ目から、ベストタイムが出る・・・と、いう訳にはいかないでしょう。
こうしたことから、予選は今シーズン、もっとも変わった様相を呈する・・・例えば、Q1は最初から最後までプライムタイヤで走り続ける方が、新品のオプションタイヤを装着して、計測2ラップだけ・・・という常套手段より、ラップタイムが良い場合が、推測されます。

今回は、コース・レコードは、雨が降らなければ、レース中のベストラップになりそうな、そんなレースになりそうです。
まずは、DAY2の予選が、どういう結末(2計測と5計測のどっちが速いか)になるか、ご期待下さい。
KOBは、多分、日本GP以降、久しぶりにQ3を狙える位置に付けられる可能性が高いと思います!

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※レポート内のドライバー略称は以下の通りです。
KOB=小林可夢偉