【可夢偉レポート】イタリアGP DAY3(Race) | GOODSMILE RACING 広報ブログ

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う~む。
KOB、9位というのは、Q3に進んで1ストップ戦略の結果としてはイイ結果ですし、チームとしても2台がポイントゲットという最高の結果なんですが、複雑な気持ちであるのは、KOBを応援してくれるファンの皆さんと一緒です。

それは、2桁ゼッケンの中段チームで、頑張ってQ3に進むレース屋さんとしての「速さの証明」が、時として、レースでは仇になるというのが、悲しきかな現在のスポーティング・レギュレーションの姿であることが浮き彫りになったレースになった事に他なりません。

KOBは、現実的にはRAI、MSC、ROS、DIRとレースをしていたわけです。
(Q2のペースを観れば、トラブルを修復したALOのスピードには、そもそもかなわないのは解っていました。)
RAIはスピード・トラップ最高速トップのロー・ダウンフォース・セッティングを最大限に利用して、5位に入賞しました。
が、彼も2ストップ作戦のMSCとROSの前に出るのがやっと。
ALO、MASにはチャレンジできませんでした。


その一方で、スタート時の新タイヤ選択の自由があったWEB(2位入ったPERと同様に。)は、トップ10のQ3車両全車と同じオプション(新)タイヤで出ましたが、L16に先行されてしまいました。(L6にはPERに先行されました。)

ここまでは、想定範囲です。

というのも、WEBは単独タイムにおいては格上の車両であり、新品タイヤを装着しているからです。(PERは同等車両で、新品タイヤ。)

レース後に検証して、ここがポイントだろうと、推測されるのはPERに先行された数周後(L9あたり)に、KOBのタイヤの性能劣化が著しくなり、PER背後のDRS圏内を走行できなくなったことにあると思われます。
逆に、PERは新品タイヤのグリップを有効に使い、先行するRAI、しかもトップスピード・トップのロータスのスリップストリームで引っ張って貰い、DRSでさらに勢いをつけるという好状況となりました。
RAIより前方の車両は、スタートタイヤである中古のオプションタイヤを、できるだけ長く使いたいので(1ストップ狙いのため)、PERに対抗することは1ストップ作戦を捨てることになるからです。
同様の理由で、KOBはWEBに成功され、さらには戦略は同じながらも、ストレート・スピードに勝るDIRにも先行を許すことになるのです。
今思えば、L14~L15に2ストップ作戦に動いたメルセデスの2台とL17 にPERに先行されたタイミングで変則1ストップに変更したと思われるRAIに反応して、2ストップに変更して、敢えてトラフィックの中に戻って、下位集団のスリップ・ストリームとDRSでラップタイムを上げておくべきだったのかも知れません。

もちろん、ティルケ・デザインのサーキットでは、これは論外の戦略ですが、DAY2レポートで触れたように、昨年と違い、オプション・タイヤとプライム・タイヤのラップタイムが近似していたことと、性能劣化が対昨年比で穏やかだったために、今回のモンツァでは効くということです。

もっとも、どうしてもラップ・タイムだけで残りの周回数を計算してしまうのは、ピットインとピットアウトのロスタイムが大きいモンツァでは普通は「自殺行為」なので、今回の状況的には1ストップに固執するのは自然な行為です。
後からは何とでも言えますが、チームとして、2台を2ストップ作戦にして、2台ともポイント圏内に入れたメルセデスの戦略屋の勇気は賞賛されるべきでしょう。

もっとも、彼らは、その結果には「失望した」らしいですが。

そして、チームとして2台をポイント圏内に入れたところはフェラーリとSauberだけというのもeffortとしては賞賛されるべきものだと思います。
(もちろん、KOBの番は、いつ廻ってくるんだ?というフラストレーションは、KOBレポートのココの話としてあるので、誤解無きよう(憤!))

実際、KOB、なんとか前走車に付いていってポイントにこぎ着けました。
WEBのスピンは、タイヤを酷使してしまったためですし、VETとBUTは(おそらくですが)空力優先のために冷却系を攻めた結果の熱害によるものですから、Sauberはベストの妥協をしていたことになります。

また、前述のメルセデスの走行内容は、奇しくもKOBのベルギーGPでの「スリップ」による出遅れが、特に「ミス」では無いことを、ROSが証明してくれる結果となりました。
ROSはスタートでスリップして大きく出遅れたものの、有利な直線スピードを利用して、一時は12番手まで落ちながらも、うまく挽回して7番手でゴールできていますから・・・。


あ~、それにしても、つまんない結果・・・・。
でも、レース屋として、二桁ゼッケンでQ3にアタックするのは自然な事です。
Q3に入って、予選順位をシングルに確定して、チームメートを落胆させ、その後を考える・・・と、いうのが現在のF1の「やり方」だと思います。
(予選は8対5で、KOBなのです。)

でなければ、2ストップレースならQ1敗退のP17、1ストップレースならP11が、戦略的に最も柔軟で、追い上げが可能でポイントが取れる可能性が高いのです。

P11、P17狙いのF1?

個人的な意見ですが「あり得ません!!」


シンガポールには目に見えるアップデート、鈴鹿には、ステルス・アップデートが入りますので、スパの予選が再現できるように、頑張ります!

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※レポート内のドライバー略称は以下の通りです。

KOB=小林可夢偉
RAI=キミ・ライコネン
MSC=ミハエル・シューマッハ
ROS=ニコ・ロズベルグ
DIR=ポール・ディ・レスタ
ALO=フェルナンド・アロンソ
MAS=フェリペ・マッサ
PER=セルジオ・ペレス
WEB=マーク・ウェバー
VET=セバスチャン・ベッテル
BUT=ジェンソン・バトン
ROS=ニコ・ロズベルグ