2018.3.19

 

 

 

「トレンディ」 第3号

 

 

 

○米国:極寒地での訓練を強化する米軍

 

米軍は近年、極寒地(ノルウェー、アラスカ州 等)での訓練に力を入れています。米海兵隊は昨年(2017年)から300名規模の部隊をノルウェーに派遣し、合同訓練を継続しています。また、米陸海空軍海兵隊と沿岸警備隊は約1,500名を動員してアラスカで冬季演習を実施しています。

 

この一連の動きにはロシアの動向が影響しています。地球温暖化が一因と推認される環境の変化により、北極海の結氷面積が減少していることを受けて、関係各国(米国、ロシア、カナダ 等)が同海域の活用(地下資源開発、北極海航路開設 等)に動き出しています。

 

ロシアは冷戦終結後、高緯度地域に配備していた軍部隊を大幅に縮小し、軍事施設を順次閉鎖してきました。しかし近年、ロシア国防省は軍部隊(機械化戦闘部隊、防空監視部隊 等)の再配備及びその施設整備を積極的に進めています。

 

更に、2014年のウクライナ紛争以降のロシアの強硬姿勢顕在化により北欧地域における安全保障環境が厳しさを増していることも、米軍等が寒冷地訓練を強化する動機となっているようです。

 

 

 

○米海兵隊

 

陸軍と同様に、「電子戦」及び「サイバー戦」への対応に追われています。更に、敵対勢力(ロシア、中国 等)が対艦攻撃用ミサイル等を充実・強化していることから、「これまでのように海岸線の近くまで強襲揚陸艦等を寄せて水陸両用戦闘車両を発進させる方法は難しい」として、精密誘導兵器で敵防御部隊を殲滅する戦法を研究しています。「第2次世界大戦のDデイ(ノルマンディー上陸作戦;1944.6.6)みたいなイメージで戦争していたら、上陸地点にアプローチする前に艦船もろとも沈められてしまう」(米海兵隊総司令官)。

 

米海兵隊は近年、個々人の携行装備の軽量化にも力を入れています。装備開発担当の司令官(海兵隊中将)が現行の標準装備を背負い、戦闘部隊の将兵とともに行軍しながら「海兵隊の装具は重くて困るね」とリポートし、「軽量化するためのアイデアを待っているよ」と改善提案を促しています。携行糧食(MRE(Meal, Ready-To-Eat)の高カロリー化で各レトルトパックの軽量化を図るなど、将兵の体力減耗を回避するための取組が続いています。

 

 

 

○ドローン

 

無人機が実際の戦闘に使われるケースが目立ち始め、各国政府・軍当局が警戒を強めています。ウクライナ、シリア、イラク等では、従来の敵情偵察に留まること無く、爆薬を装着したドローンで攻撃を仕掛けている状況が報告されています。今後は更に、廉価で操作が容易な無数のドローンを集中的に投入する手法が開発されることも予見されています。

 

これに対抗するべく、ハンディタイプのドローン撃退用装置が開発され、米空軍は基地警備用に導入しています。米陸軍等は、警戒すべき空からの脅威として攻撃機、弾道弾、巡航ミサイル、ロケット砲弾等に加えてドローンを列記するようになりました。併せて、軍事施設等周辺でのドローンの使用を規制する法令整備も進められています。

 

今や街の家電量販店において数万円程度で購入可能なドローンですが、これを撃退するための新装備は相応の価格であることから、各国軍は戦闘における悩ましいコスパ問題に直面しています。

 

 

 

 

 

< その他(2018.3.122018.3.18) >

 

○米国、ウクライナ、ロシア:米国による対ウクライナ武器供給政策を巡り論争 ~ 「オバマ政権の殺傷型兵器供給抑制策は誤り」「ウクライナへの武器供給は内戦激化を助長」「米国とロシアの外交関係修復にも要目配り」 2018.3.12

 

 

 

○米国、トルコ:両国関係悪化によりトルコ国内のIncirlik空軍基地の継続使用に黄信号 ~ 同空軍基地 = 対IS空爆作戦等で重要な役割 2018.3.12

 

 

 

○米国、イスラエル:米陸軍に短距離防空システムを提案(ロッキード・マーチン社 &Rafael社) ~ 「Miniature Hit-to-Kill missile」「Tamir」 = 「Indirect Fires Protection CapabilityIFPC)」 ~ 既に採用決定のAIM-9X Sidewinder(レイセオン社製)に続く第2弾用として 2018.3.12

 

 

 

○ロシア:「我々の新型核兵器は単なるブラフ(脅し)ではない」(Yury Borisovロシア国防副大臣) ~ 特に「Hypersonic boost-glide systemAvangard)」の高性能さをアピール 2018.3.12

 

 

 

○米国、欧州、ドイツ:鉄鋼・アルミニウム関税引上げと国防費負担をリンクさせるトランプ政権に備えるドイツ連邦政府等 ~ 「貿易マターと安全保障問題を混濁させることは好ましくない」(European Budget and Human Resources コミッショナー Günther Oettinger氏) 2018.3.13

 

 

 

○米国、欧州、セルビア、ロシア:在欧米軍司令官の「欧州で最も大きなリスクはロシアの影響力がバルカン半島に浸潤すること」の発言を非難(Aleksandar Vulinセルビア国防相) 2018.3.13

 

 

 

○米国、中東:アラビア語専門官の不足解消に動く(米陸軍) ~ 中東戦域からの戦闘部隊撤収等に伴い同言語の部内研修を受ける人数が減り、現場においてアラビア語で対応出来る将兵が慢性的に不足 ~ 米陸軍:アラビア語対応可能者への特別手当創設を検討 2018.3.13

 

 

 

○米国、アフガニスタン:マチス国防長官がカブール訪問 ~ 「アフガニスタンでの勝利は可能」「タリバンがアフガニスタン政府の和平案を誠実に検討することを希望」(同長官) 2018.3.13

 

 

 

○米国、アフリカ:米アフリカ軍司令部のアフリカへの移転を提起(上院軍事委員会委員Dan Sullivan上院議員) ~ 2007年の創設以来、同司令部はドイツ国内で活動 ~ 「これまでの議論は承知」「約1,500名の要員を移動させるコストはネック」(同司令官Thomas Waldhauser海兵隊大将) 2018.3.13

 

 

 

○米国、アフリカ、ニジェール:米軍将兵がヘルメットに記録用カメラを装着させる方式を見直し(国防総省) ~ 過日、ニジェールにおいて待伏せ攻撃を受けた米軍特殊部隊員4名が戦死した事件で、同兵士のヘルメットに装着されていたカメラの記録映像がイスラム過激派の宣伝に利用された問題を注視 2018.3.13

 

 

 

○世界:国防・宇宙航空関連の3Dプリンターの市場規模は2023年には47.6億ドル規模にまで成長(Marketsand Markets報告書) ~ 軍用資機材の整備・補給の負担が大幅に軽減される将来像を描き得る環境に 2018.3.13

 

 

 

○米国、アフガニスタン:首都カブールがタリバン掃討作戦の焦点に(駐アフガニスタン米軍司令官John Nicholson陸軍大将) ~ 米軍特殊部隊員が掃討作戦を側面支援 ~ アフガニスタン治安部隊、警察への支援を強化するために米軍将兵を追加投入 ~ アフガニスタン政府:態勢強化のためカブールの主要5警察署の署長を交替 2018.3.14

 

 

 

○米国、イラン:「イラン核合意の維持は有益」(米中央軍司令官Joseph Votel陸軍大将) ~ 同合意がイランの核開発を抑制することに寄与しているとの認識 ~ トランプ大統領の見解と異なる認識 2018.3.14

 

 

 

○ドイツ、豪州:豪陸軍用戦闘装甲車両211両を受注(Rheinmetall Defence Australia社) ~ 「Boxer Combat Reconnaissance Vehicle」(総額;33億ドル規模) 2018.3.14

 

 

 

○フランス:ハイブリッド型推進機関搭載船艇を導入(フランス国防省) ~「Hybrid-electric propulsion multimission harbor craftCMM) = ディーゼルとバッテリーの併用型 = 担当事業者;iXblue H2X Division及びCegelec Defense et Naval Sud-Est 2018.3.14

 

 

 

○スウェーデン、ロシア:対ロシア戦略を抜本的に改定(スウェーデン国防省) ~ 「Total defense concept」「Fortress Sweden」 = あらゆる資源(人員、地形 等)を投入して侵略行為から3ヶ月間以上持ちこたえることを目標に設定 = 第2次世界大戦期、冷戦期の国防戦略に戻る = ロシアによるサイバー攻撃への備えを民間事業者に指導 2018.3.14

 

 

 

○米国、欧州:NATO加盟国の2017年国防支出実績が出揃う = 3年連続で増加(NATO年次報告) ~ 「2014年のウェールズでのNATO首脳会合で合意した共通目標(対GDP比2%以上)達成に向けて着実に前進」(Jens Stoltenberg NATO事務総長) ~ 米国(3.57%) ~ ドイツは前年比約6%増額、アフガニスタンへの追加派遣(1,0001,300名規模)等、前向きな動きを評価 ~ 一方で、加盟国の多くで人件費・糧食費が国防予算の多くを占める状況( = 装備開発、調達費用を圧迫)も指摘(同上) 2018.3.15

 

 

 

○米国、欧州、ロシア:「ロシアは躊躇無く化学兵器を使いかねない国」(在欧米軍司令官Curtis Scaparrotti陸軍大将) ~ 元ロシア二重スパイ殺害未遂事件を踏まえて警鐘 ~ 「我々は、ウクライナ等他の場所でも同様の事件が発生している事実を直視しなければならない」(同上) 2018.3.15

 

 

 

○米国、欧州:米空軍飛行隊の欧州派遣実績を示し「米国と欧州の同盟国との絆」の強固さをアピール(在欧アフリカ米空軍司令官Tod Wolters空軍大将) ~ F-15F-16B-52等の主力部隊がローテーションで欧州に派遣され、NATO加盟国軍部隊との合同演習を実施 ~ 「ロシア軍機の活動は増えていないが、減ってもいない」とロシアへの警戒感を滲ませる 2018.3.15

 

 

 

○米国、欧州、韓国:韓国軍次期哨戒機選定事業(総額;18億ドル規模) ~ 現有P-3C16機)の後継機種 ~ 米欧の主要勢力が激しい「空中戦」 ~ 米国 = ボーイング社(P-8A) ~ カナダ:Bombardier 社(KP-X MPAChallenger 650ベース) ~ 欧州 = Airbus Defence and Space 社(C295 MPA若しくは A320 neoの軍用機型)、サーブ社(MPA派生型機)他 ~ 欧州勢はボーイング社がDefence Acquisition Program Administration 長官を務めたことがあるPark Shin-kyu退役韓国空軍中将を顧問に迎え入れたことを問題視 2018.3.15

 

 

 

○米国、イラン:「ここ数ヶ月、ペルシャ湾等におけるイラン海軍による妨害行動は減少傾向」(米中央軍海軍司令部) ~ 「状況が変化した事情等は不詳」(同上) 2018.3.15

 

 

 

○米国、台湾:F-35B戦闘攻撃機に関心(台湾国防部) ~ 米海兵隊、英軍が導入する垂直離着陸型最新鋭機 ~ KC-135空中給油機の導入にも意欲 ~ 台湾空軍:F-16A/B Fighting Falcon戦闘機、国産AIDC F-CK-1 Ching-kuo戦闘機、Dassault Mirage 2000-5戦闘機を保有 2018.3.15

 

 

 

○欧州、ロシア:「ロシアとの対話環境の確保は極めて重要」(Jens Stoltenberg NATO事務総長) ~ 英国における元二重スパイ殺害未遂事件等を踏まえ、ロシアの不規則な行動への警戒感を強めつつも、相互対話のチャンネルが失われることのリスクを再度指摘 2018.3.15

 

 

 

○フランス、イタリア、カタール:Airbus社製NH90 28機購入契約成立(カタール国防省) ~ 内訳;輸送任務型16機、洋上任務型;12機 ~ 主契約者;Leonardo社(イタリア) ~ 総額;37億ドル規模 ~ 「フランスの武器輸出にも朗報」(Florence Parly仏国防相) 2018.3.15

 

 

 

○ドイツ:造船業界を取り巻く環境の変化 = 外資参入問題 ~ ThyssenKrupp Marine Systems社、Lürssen社、Damen and Blohm+Vossグループ(独・蘭)、German Naval Yards(レバノンの投資家が保有) 等 ~ 「潜水艦建造技術だけは海外事業者に譲れない」「(そのためには)水上艦艇の建造をドイツ企業と海外事業者のJVで受注する方向性も受入れるべきではないか」(ドイツ政府幹部) 2018.3.15

 

 

 

○チェコ:「ELM-2084 multimission radarIAI Elta Systems社(イスラエル)製)の導入はNATO共通の防空システムとの統合可能性が担保されることが条件 ~ 8基(総額;17,500万ドル) = 旧ソ連製レーダーの後継装備 2018.3.15

 

 

 

○米国、世界:軍用無人機の新たな輸出承認基準を来月(4月)にも公示(米国務省)~ 現況等;「Missile Technology Control Regime(MTCR)」(35カ国参加)に準拠した厳格な承認基準を採用 → 同盟国・友好国への軍用無人機供給のネックに 2018.3.16

 

 

 

○米国、欧州、ドイツ:ドイツ連邦軍の防空システム調達事業はPatriot systemベースの「レイセオン社&Rheinmetal社」とMedium Extended Air Defense Systemベースの「ロッキード・マーチン社&MBDA Deutschland社」の一騎打ち 2018.3.16

 

 

 

○英国:輸出用のType31フリゲート艦のデザインを公表(BAE Systems社) ~ 提携事業者;Liverpool shipbuilder Cammell Laird ~ ドーハでの国際兵器展示会でデビュー 2018.3.16

 

 

 

○フランス:AI(人工知能)の軍事技術への活用に向けて投資を強化(フランス政府)~ 「Man-Machine TeamingMMT)」等の研究・開発に12,300万ドル規模 ~ 欧州の官民団体・組織に提携を呼びかけ 2018.3.16

 

 

 

○スウェーデン、UAE:「UAE向け空中指揮管制機の開発・製造はスケジュール通り」(サーブ社) ~ 「GlobalEye swing-role surveillance aircraft」 = Bombardier 社製Global 6000がベース ~ センサー類;Erieye Extended Range radar(サーブ社)、Seaspray maritime search radarLeonardo社)、電子光学系センサー(Flir Systems社) 2018.3.16

 

 

 

○韓国:AH-64E Apache Guardian攻撃ヘリを40機追加発注(韓国陸軍) ~ 非武装地帯周辺の警戒態勢強化で ~ 代替としてK2 Black Panther主力戦車300両超の追加配備をキャンセルか 2018.3.16