その日、勝弘は何度も何度も同じ英文を大きな声で発生していた。
「When aircraft has stopped, unfasten harness assess condition」
(飛行機が止まったら、ハーネスを外して状況確認)
「If door is unusable, remain at door, redirect passengers」
(非常ドアが使える状況でない場合は、ドア付近に残り、乗客を別方向へ誘導)
「If door is usable, open door, check outside」
(非常ドアが使える状況の場合、ドアを開け、外の状況を確認)
「Shout unfasten seatbelt」
(大声でシートベルトをはずして)
1999年9月、28歳の武藤勝弘は念願だった、キウイエアラインの客室乗務員として採用された。
ここに至るまで、勝弘は30社以上の航空会社に応募書類を送り、殆ど書類選考すら通過しなかったので、正直、人事マネージャーのアンから内定の知らせが電話で来た際、自分の夢が実現すると言う実感が全くありませんでした。
「俺、本当に合格したの?」
これまで、新宿にあるエアライン志望者向けのナイトスクールに3か月通って、子供の頃から将来はキャビンアテンダントになると決め込んでいる大学生や社会人の女性たちに交じって受験ノウハウを学びましたが、その間の勝弘はさっぱりダメで、もっとも健闘したのが、KLMオランダ航空とヴァージンアトランテイック航空の書類選考通過。
どちらの会社もあっけなく、1次グループ面接で敗退。
このまま、日本でエアライン受験を続けても、男性の客室乗務員の採用自体が少ないし、本当に優秀な女性ライバルが多数いるからきっと勝てないだろう。
そのように勝弘は悟ったから、ニュージーランドの永住権を取得してキウイエアランの現地募集に応募しました。
「嬉しいけど、本当に俺でいいのかな?」
そんな、勝弘の気持ちなど全く察することなく、アンは至って事務的に今後の予定を伝えました。
「今回のコントラクトは残念ながらフルタイムでなくて、テンポラリーです。ですから、あなたと会社との雇用契約は6か月間、来年3月末日までで終了します。」
「そのあとの保証は何もありませんが、それでもあなたは引き受けますか?」
「はい。お引き受けいたします。本当にありがとうございました。」
勝弘のその一言を聞くと、アンは少しホットしたようすで、
「ありがとう。勝弘、後であなた宛てにトレーニングのスケジュールを記した書類を添付して送るので、後はそれを見てちょうだい。」
「もし、何か疑問点があったら、いつでも私当てに電話してきてね。」
と言い電話を切りました。
つづく
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「スチュワード物語」のストーリー説明
日本では珍しい男性の客室乗務員として、約7年間ニュージーランド航空で働いた著者の自伝をベースに作ったストーリー。
実際に出てくる人物名やその他は架空のものです。
第一シリーズは主人公の武藤勝弘が念願のキウイエアラインに内定し、そこから3度の短期契約を経て正社員に昇格するまでの1年半を描いています。
外資系航空会社のキャビンアテンダントとして働く日本人男性の事をもっと多くの方に知って頂けましたら嬉しいです。
①キウイエアライン:南半球、ニュージーランドの航空会社でその国を代表するフラッグキャリア。
②武藤勝弘:主人公、東京の旅行専門学校を卒業後、大手旅行会社で3年間外販セールスを担当、その後、ヨーロッパ中心の添乗員を目指し、イギリスに留学、それがきっかけで航空会社の客室乗務員を目指すようになる。
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