旅するもの書き

(脚立のイラストは月と水の流れ)
(このシーンは台詞と効果音のみ 音楽は入らない)
(効果音 しずく)






11
眠られぬ夜
私はそっと家から抜け出し
月あかりに照らされた静かな街を歩きます


小さなベンチに腰を下ろすと微
かな川のせせらぎが聞こえる


それは小さな川です


(曲が入る)
(参考  
 ギターアコースティック演奏探しています)









12
不思議の國に
言葉を探してさまよう旅人が居ます


物書きです





物書きは
小さなうさぎを小脇に抱え

凍てついた夜空に煌めく
オーロラの下に飛んでゆき

吹きすさぶ風で乾いた土が
空気をベージュ色に染める大陸を走り抜け

ゆらめく青い月影を映す
孤独な海辺を歩き続け



自分の言葉をさがします




そして疲れ果てては

この不思議の國に帰ってきます。




13
彼の書いた文章の中に
こうありました




「下宿の裏には
 白川という小さな川が流れ 
 部屋にいながら
 心地好いせせらぎの音が聞こえた


 川の両側に柳の木が立ち並び
 鴨たちはその長い枝の下をくぐり
 静かに泳いでいる


 それをながめていると
 とても落ち着いた気持ちになれた


 音一つ立てず静かに泳ぐ夜な鴨というのは
 完成度の高い
 完結した小さな世界を創り出すものだ 」







14
完成度の高い
完結した小さな世界



それを創り出すのは
静かに泳ぐ小さな鴨



それは真理の世界のひとつかもしれない



そう思いながら
私は小川の水音に耳を澄ませます










15
小川の水は
巡り巡って海にたどり着く


海の水となる


海の水は
波となって海辺によせては返す




いつの間にか波は生まれ
静かに引いていく


おおきな海の中で
やさしく繰り返す命のいとなみ





真理は遥かかなたにあるようで
実は我が身の傍らにあるのかも


(効果音・小さな波 )