
MBA取得を目指している人、あるいはアメリカ人のMBAホルダーと一緒に仕事をしようとしているビジネスパーソンにとっても、エレベータースピーチの発想が強力な武器になります。エレベーターピッチ、あるいはエレベーターステイトメントとも呼ばれます。
エレベータースピーチとは、以前の掲載でも説明したように、通常30秒、長くても1分で完了するスピーチのことです。スピーチの持ち時間が、エレベーターでビルの1階から最上階まで行く場合の平均的な所要時間に匹敵するため、こう呼ばれています。エレベータースピーチの考え方は非常に合理的です。最高経営責任者(CEO)や著名人、外交家といった重要人物と、偶然同じエレベーターに乗り合わせる、あるいはどこか別の場所にたまたま居合わせる、その束の間の会話を千載一隅のチャンスととらえるのです。なぜなら、そのような重要人物に約束を取り付けられる保証など、この先まずありえないからです。
ところで、ここにでてくるMBAってご存知ですか。せっかくの機会ですので、今回その概要を説明しておきましょう。MBAとは、「Master of Business Administration」の略です。日本語では「経営学修士号」と訳されます。一般に、MBAは、米国のビジネススクール(経営大学院)で取得します。
その歴史をひもとくと、1881年にアメリカのペンシルバニア大学ウォートンスクールで始まったのが起源だとされます。その後、MBAプログラムが米国の各大学のビジネススクールで採用されるなかで、「経営を科学的に分析する学問」として定着してきたのです。
たとえば、誰もが認める名門ハーバード・ビジネススクールは、成功した企業経営を個別に分析し、その分析調査資料を授業のなかで活用し、学生が経営者になったつもりで課題、解決方法を実践的に学ぶケース・スタディ(事例研究)を普及させたことで世界的に有名です。
こうしたビジネススクールで学ぶことは、企業経営に必要とされる全般的な知識です。専門的な知識(たとえばファイナンス、マーケティング、会計学、統計、経済学など)にくわえ、心理学、リーダーシップ論など経営に必要な知識全般をそれぞれ体系的に、同時に相互に関連づけながら学んでいきます。
ビジネススクールの最大のメリットは、優れた経営者が20年以上の職業経験から得る知見を、極めて短い期間(10ヶ月から2年)で学ぶことです。過去に成功した企業とその経営者を科学的に分析し、それを凝縮して短期間の効率的なプログラムに組み立ています。
もちろん、凝縮された内容を短期間に学ぶためには、学生も覚悟が必要です。彼らは、平均睡眠時間4時間など、かなりのハードワークを強いられます。そして、学生達は、そうしたハードワークを通じて、ビジネスをいかに効率的に行うか、あるいはいかに仲間とチームを組んで協力するかを実践的に学ぶことも期待されています。
具体的に学ぶ科目は、経営戦略、ファイナンス、組織行動論、人事戦略、マーケティング、統計学、コンピューター(インターネット)、会計学、経済学、ビジネス法、プレゼンテーションなどで、経営全般にわたる幅広い知識です。
アメリカ企業の多くの経営者や幹部社員がこのMBAを取得しています。もちろん、すべて経営幹部がMBAホルダーというわけではありません。しかし、アメリカのビジネス社会においてキャリアアップを目指す者にとってはMBAを取得していることが強力な武器になることは事実です。
さて、MBAの概略が理解できたので、次に具体的な技法についてみていきましょう。
MBAに役立つエレベータースピーチは、大きく分けると3種類あります。
1 著名な学者や経営者をテーマにするもの
ピーター・ドラッカー(Peter Drucker)のような学者や、スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)、ジャック・ウェルチ(Jack Welch)のような優れた経営の実践者を紹介するもの。
2 キー・コンセプト
特定分野の主要な概念、考え方を説明するもの。たとえば、マーケティング分野では、「プロダクトライフサイクル」(product-life cycle )や「4Ps」が典型的な例となります。その分野で活動していれば、必ずといっていいほど話題になるコンセプトです。
3 ケース・スタディ(事例研究)
一般的に、ある企業を対象にして、一つの分野(例、企業戦略)を分析するもの。もちろん複数の分野から総合的に分析することも可能です。たとえば、ヒト(人的資源)、モノ(物的資源)、カネ(資金)の視点で、企業の戦略を分析することもできます。
また、人的資源を対象にして、一つの観点(たとえば、リーダーシップ)から分析する場合もあります。ハーバード・ビジネススクールが、ケース・スタディで有名なことは前に説明しました。
それでは、まず、著名な学者や経営者を話題するスピーチの例をみていきましょう。
Martha Stewart, Successful Female Entrepreneur
Founder of Martha Stewart, Inc., later renamed Martha Stewart Living Omnimedia, Inc , the entrepreneur whose company bears her name is as infamous as she is successful. Some love Martha and her products. Others love her products but not her. Yet others despise everything about Martha and her company. Anyone who enjoys fine living will likely fall into one of the first two categories since she is a respected authority on bon vivant. She is also a shrewd business woman, which is probably one of the reasons why some people do not like her. Known to be demanding and difficult, Martha has demonstrated through her involvement in an insider-trading scandal that she can also succumb to unethical behavior. These flaws notwithstanding, Martha Stewart has clearly proven herself as an entrepreneur and leader, having founded her own company and managed to navigate it through a crisis of international proportions that included a prison sentence. As such, she is a role model of drive and resilience for any aspiring leader, male or female.
日本語では、次のようになります。
マーサ・スチュワート。成功した女性起業家。
マーサ・スチュワート社創業者。のちに、マーサ・スチュワート・リビング・オムニメディア社となる。創業者の名前を関する同社は、彼女が成功するにしたがって、悪い評判がともなうようにもなりました。あるものは、マーサ・スチュワートを尊敬し、同社の製品を愛用します。また、あるもは、同社の製品を愛用しつつも、彼女に嫌悪感を抱いています。もちろん、同社の製品と彼女を軽蔑する消費者も存在します。ステキなライフスタイルをエンジョイする者なら誰でも、最初の2つのカテゴリーの消費者に分類されるでしょう。なぜなら、彼女は「ボン・ヴィバン」つまり美を楽しむカリスマだからです。一方、彼女は、抜け目のないビジネスウーマンで、それが嫌われる原因のひとつだともいわれています。また、他人に対する要求水準が高く難しい性格であるのでも有名です。彼女が関与した株のインサイダー取引のスキャンダルでもわかるとおり、彼女は非倫理的行為に手を染めたのも事実です。こうしたネガティブな事実にもかかわらず、起業家兼リーダーとしての彼女の高い能力は認められています。なぜなら、彼女は、まず自分で会社を起業し、彼女が受けた有罪判決を含み国際的な危機のなかで、会社の舵取りをなんとかやり遂げたからです。このように、マーサ・スチュワートは、(経営における)「推進力」と「再起力」をもつリーダーとして、性別と問わず、世界の多くの指導者、経営者の模範になっています。
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以下のビデオでは、エレベーターピッチを作成する7つのステップが紹介されています。このビデオを観ながら、各ステップの空欄を埋めてください。
1. Brains storm a list of phrases that __________ you. Cross off any clichés or catch phrases
2. Craft a description of __________ that you can share in 30 seconds or less.
3. Practice your pitch on friends and Family. Ask for __________, and adjust your pitch.
4. Make your pitch about the needs of the __________. Talk about the problems facing their industry that you are uniquely positioned to solve.
5. Describe your value in solving these __________.
6. Allow room for __________. Most people do not like to be talked at, so be conversational and show an interest in them.
7. As for something—a business card, a phone call, or permission to send your __________.
これらの7つのステップが日本語でエレベーターピッチを行う準備にも当てはまると思いますか。
<推薦図書>
本ブログの著者ジョセフ・ガブリエラと杉本有造は、両者ともにMBAの保有者であり、英語と日本語の両方でエレベーターピッチを実施する豊富な経験を有しています。くわえて、両者の経験を活かして、ビジネスパーソンに対して、仕事の現場で直ちに活用できるエレベーターピッチの技法について指導しています。エレベータースピーチのテクニックを習得したいと思われている方に、二人の共著『エレベーター・スピーチ入門~アメリカビジネスで成功するためのプレゼンテーション&自己イメージ作りの技法』を読まれることを強くお勧めします。
エレベーター・スピーチ入門/我龍社

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このブログは、ジョーが執筆し、皆様にお届け致します。ジョーことジョセフ・ガブリエラは、2000年に来日したアメリカ人。格闘技ファンなら誰でも知てる、K-1ファイターのアンディー・フグ氏にそっくり!
1989年米国ペンシルベニア大学ウォートン・スクールを卒業。その後ペパーダイン大学を皮切りに、イリノイ大学、南フリダ大学を卒業。MBAを含め2つの修士号と博士号を取得しました。日米合弁IT関連企業、スイス系証券会社、米系銀行、そして日系外食企業など幅広い業界の勤務を通して様々なビジネス経験を積みました。趣味は、水泳、読書(村上春樹氏の大ファン!)、ピアノ、そして様々な国の言葉を勉強する事です。ちなみに、2年前から新たに中国語勉強に励んでいます!この記事についてのご質問、感想、また意見を歓迎します。また、共同研究者である杉本有造氏とともにコンサルティング業務も行っていますので、お気軽にご相談ください。
ジョセフ・ガブリエラ 博士/MBA
東洋大学
gabriella@toyo.jp
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「世界のどこでも働ける日本人になろう」
「アメリカ・ビジネスの最前線を切る!」
「Venture Into Japan」
杉本 有造 博士/MBA
IES全米大学連盟・東京センター
(The Institute for the International Education of Students, Tokyo)講師
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