今回の英文

例1

An impartial observer would take this assertion with a grain of salt given, for example, that there is no sense in which the indictment made public this week was somehow unlawful.

 

出典:The Washington Post

(https://www.washingtonpost.com/politics/2023/08/03/how-much-prison-time-might-donald-trump-actually-face/)

 

※試訳:「公平にものを観察する人であれば、たとえば今週公表された起訴状に何らかの違法性があったわけでは全くないことを考慮して、このような主張を額面通りに受け取ることはしないだろう」

 

今回の英文は関係代名詞が絡んでいる英文なのでちょっと長めですね。では早速やっていきます。

 

 

 there is no sense in doingとの混同に注意

さきの引用から該当箇所だけ抜き出すと、次のようになります。

 

例1’

...there is no sense in which the indictment made public this week was somehow unlawful.

 

出典:同上

 

まずによく似た形との区別をしておこうかと思います。次の例2をみてください。

 

例2

There is no sense in complaining to him.

彼に不平を言ってもむだだ.

 

出典:『ジーニアス英和辞典 第5版』

 

※senseの箇所は、同じ名詞のpoint, use, goodと入れ替えたパターンもあります。また前置詞inが省略されている場合もあり

 

この構文は学校英語でよく習うものですね。今回の英文はこれとよく似てはいますが、別物です。理由はカンタンで、inの使われ方が異なります。今回扱う例1ではin whichという「前置詞+関係代名詞」のカタマリになっていますが、例2のパターンでは「単なる前置詞in+動名詞(または名詞)」というありふれた形でしかありません。

 

以下の個人ブログによると、田上芳彦『「読む」ための英文法』(駿台文庫、2015)という参考書では、例1と同じと思われる構造の英文を「...であることにまったく意味はない」と訳しているそうですが、この和訳は例2のような構文との混同してしまっている気がします(該当の英文についてはリンク先でご確認ください)。

 

 

 

 

 in no senseとほぼ同じ

さて、本題です。there is no sense in which SVの意味は例1での試訳からお察しかもしれませんが、「SがVすることは全くない」とか「SがVすることは決してない」という感じになると思われます。

 

なぜこういう意味になるのかですが、結局のところ上記のブログで述べられているように、there is no sense in whichの部分をin no sense(「(どんな意味においても)決して...でない」)に読みかえることができるから、というのが個人的な考えです。

 

ではどうしてin no senseと読みかえ可能なのか。これに関しても上記のブログと同じような考えなのであまり意味はないかもしれませんが、一応私なりの説明を残しておこうと思います。

 

まず関係詞節は(学校英語で嫌というほどやらされたように)2つの文に分けて考えると少し分かりやすくなります。

 

例1’(再掲)

...there is no sense in which the indictment made public this week was somehow unlawful.

 

出典:The Washington Post

 

今回の英文であれば、関係代名詞whichの先行詞はsenseなのでwhichの代わりにa senseを入れてあげると、次のような2文に分けることができます。

 

there is no sense

「意味はない」

in a sense the indictment made public this week was somehow unlawful

「ある意味では、今週公表された起訴状に何らかの違法性があった」

 

ここでin a senseの意味合いを考えてみると、次の例3でregardがいっしょに使われていることから分かるように、「考えようによってはそういう見方もできる」という意味合いがあります。日本語の「ある意味で」でも同じですね。

 

例3

Cheese and butter may, in a sense, be regarded as preserved milk and wine as preserved grapes.

ある意味, チーズとバターは保存用のミルクだし, ワインは保存用のブドウと見なすことができるかもしれない.

 

出典:『ジーニアス英和大辞典』

 

この点を踏まえると、②は「今週公表された起訴状に何らかの違法性があった、という見方もできる」と解釈できます。そして、これに①の意味合いを加えると「今週公表された起訴状に何らかの違法性があった、という見方は存在しない(つまり、そのような見方はありえない)」のように理解することが(多少強引ですが)一応できそうです。

 

この捉え方が正しければ、「(どんな意味においても)決して...でない」という意味のin no senseとほぼ同じとみていいのではないでしょうか。

 

以上はあくまで素人の私見ですが、みなさんはどのように考えますか?

 

 

 例1の補足

まとめの前に少し補足です。まず例1について。

 

例1(再掲)

An impartial observer would take this assertion with a grain of salt given, for example, that there is no sense in which the indictment made public this week was somehow unlawful.

 

出典:The Washington Post

(https://www.washingtonpost.com/politics/2023/08/03/how-much-prison-time-might-donald-trump-actually-face/)

 

※試訳:「公平にものを観察する人であれば、たとえば今週公表された起訴状に何らかの違法性があったわけでは全くないことを考慮して、このような主張を額面通りに受け取ることはしないだろう」

 

(1)文全体

S would V given that S'V'という仮定法の文。if節のニュアンスは主語のAn impartial observerに含まれているパターン。

 

(2)take...with a grain of salt

「...について、割り引いて考える」あるいは「...を額面通りには受け取らない」といった意味になる熟語。

 

(3)given that SV

「SがVすることを考慮に入れると」の意味で、ここでは真中にfor exampleが挿入された形。この接続詞的用法をするgivenはifと同じ旨が参考書などに書かれていたりしますが、『ウィズダム英和辞典 第3版』にgiven (that) SVは直説法を従えるという記述があることから考えても、仮定法のwouldに対する条件節はこのgiven that SVではなく、やはり主語のAn impartial observerとみるのが自然でしょう。

 

(4)the indictment made public

もとはmake something public(「~を公開[公表]する」)という第5文型のごくふつうな表現。関係代名詞whichかthatを使って、the indictment which[that] was made publicと補うとわかりやすい。

 

 

 in no senseについての補足

次にin no senseについての補足です。

 

in no senseはウェブスターの記述を見るに、in no wayやdefinitely notと言いかえてよさそうです。辞書などでもin a wayがin a senseとほぼ同じ意味の表現として扱っていたりするので、やっぱりsenseとwayは関連性がありますね。

 

: in no way : definitely not
 This book is in no sense intended for beginners.

 

出典:merriam-webster.com

 

※例文の試訳:「この本は決して初心者向けではない」

 

また、in no senseが文頭にくると否定語倒置が起きる場合があります(さきの個人ブログでも書いてありますが念のため)。

 

例4

In no sense can the issue be said to be resolved.

 

出典:OALD(9th ed.)

 

※試訳:「問題は解決されたとは決して言えない」

 

ほかにin no senseの強意形ともいえるin no sense of the wordという言い方もあるようです。

 

例5

...she was in no sense of the word an easy person.

 

出典:BBC

 

※試訳:「...(前略)...彼女は決して扱いやすい人間ではなかった」 

 

 

 まとめ

いつものまとめです。

 

there is no sense in which SV...について

①訳は「SがVすることは決してない」

②in no sense[way] SV...(またはS in no sense[way] V...)と書いた場合とほぼ同じ意味

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。