※例5-1についての補足を追記しました(2023/08/11)

 今回の英文

 

例1

I walked with her as far as the bridge.

橋のところまで彼女と歩いた

 

出典:『ウィズダム英和辞典 第3版』

 

今回は例1のような「as far as+場所を示す表現」が強調のニュアンス(つまり「はるばる~まで」)になる場合はあるのか考えてみたいと思います。

 

なぜそう思ったかですが、それはgo so[as] far as to do[doing](「~しさえする」)という表現があるからです。この表現は熟語として習うことが多いと思いますが、おそらく元々は"go as far as+場所を表す表現"で「はるばる~までいく」という文字通りの意味であって、そこからメタファーとして転用されて「~しさえする」という意味になったのではないでしょうか。

 

もしそうであれば、この元の形でのas far asは単なる「~まで」という意味ではなく「はるばる~まで」という強調のニュアンスがあったはずです。今回はこのような仮定のもとで英文を見ていきます。

 

ちなみにですが、単なる「~まで」という無強調のas far asはup toと言い換えても意味はほぼ変わらないようです(以下のリンク先参照)。

 

 

 

 数値・程度表現があれば強調ニュアンスに

「as far as+場所」が強調ニュアンスになるかを考える前に、典型パターンを確認しておきます。典型というのは、as far asが数値や程度を表す表現を伴うときのことで、そういうときは「(距離的に)...までも」という強調のニュアンスになることがあります。以下にas far asがある場合とない場合をセットで並べてみたので、少し観察してみましょう。
 

例2-1

She can swim as far as 500 yards.

彼女は500ヤードも泳げる

 

出典:『新英和大辞典』

例2-2

For kids 7 and older, who are confident swimmers and can swim 50 yards on their own, they should always be kept within eyes reach.

 

出典:FOX 5 Atlanta

 

※試訳:「泳ぎに自信があって自力で50ヤード泳げてしまうような7歳以上の子供については、常に目の届くところに置いておくべきです」

 

どうでしょうか。人間が泳ぐ距離としては50ヤード(≒45メートル)は驚くべき距離ではないですが、500ヤード(≒450メートル)となると泳げる人間は限られてくるので意外性がありますよね。

 

しかしこれが(それなりの大きさの)船やボートの話だった場合には、航行可能な距離としては500ヤードは大した距離ではないでしょう。なので、そのような文脈ではas far asは用いられないというのは想像に難くありません。つまり、数値や程度に「意外性」があるとas far asを用いて強調される、というわけです。

 

次の例3も同様に考えることができます。

 

例3-1

Fragments of the ship and airplanes were hurled into the air, and debris rained on other vessels as far as 5,000 yards away.

 

出典:United States Naval Instituteのwebsiteから

 

※the ship = the carrier

※試訳:「空母や航空機の破片は空中に飛び散り、5000ヤードも離れた他の船にも降り注いだ」

例3-2

a village 5 miles away from here

ここから5マイル離れたところにある村《◇away from... の前に具体的な数字を置くと away が省略されることもある》

 

出典:『ジーニアス英和大辞典』

 

村がある位置としては5マイル(≒8キロメートル)という数値は驚くべきものではないですが、爆発によって飛散した破片が飛んでいく距離としては5000ヤード(≒4.5キロメートル)は目を見張るものがあります。ここでも、後者には「意外性」があるのでas far asが用いられていると見ていいでしょう。

 

このように数値や程度の表現を伴うas far asが強調のニュアンスになるのは、学校英語界(?)では有名なas many as, as early asなどが強調のニュアンスになる(ことが多い)のと同じです。せっかくなので、このパターンの表現を挙げておきましょうか。

 

例4-1

as many as 100 books 「100冊もの本」

as few as 3 students 「わずか3人の生徒」

例4-2

as much[fast] as 800 km/h 「時速800kmもの速さ(で)」

as little[low] as 2 dollars 「わずか2ドル」

※金額・速度は量として考えるので、as many[few] asはふつう一緒には使わない

例4-3

as early as 19c 「早くも19世紀(に)」

as late as last week 「つい先週(に)」

例4-4

a child as young as 5 years old 「わずか5歳の子ども」

a tree as old as 1000 years old 「樹齢1000年にもなる木」

例4-5

Some of the textbooks are as long as 1,000 pages. 「それらの教科書の中には1000ページを超えるものもある」

as short as 3 months 「わずか3か月」

例4-6

trees as high as 100 feet 「100フィートもの高さの木々」

as low as 2% 「わずか2%」

 

ここで重要なのは、これらは熟語などではなく、数値や程度を表す表現を伴うas...as表現でさえあればどんなものでも強調のニュアンスを持てるという点です(ただし常に強調ニュアンスになるわけではないと思われます)。

 

 

 「as far as+場所」でも強調のニュアンスになる?

さて、本題です。as far asに続く表現が場所を表すものであっても強調のニュアンスをもつことはあるのでしょうか。

 

少し探してみた結果、例1のgo as far asのような形ではないのですが、明らかに「as far as+場所」が強調のニュアンスになっている例がありました。次の例5-1のfrom as far as Kent(「はるばるケント州から」)がそれです。また、同記事内に例5-2のような言い換え表現も見つかることからも、例5-1のas far as Kentはas far away as Kentの意味で用いられていることがよくわかります。

 

例5-1

Police slam 'selfish' Tier 4 tourists who travelled up to 270 MILES from as far as Kent to climb Snowdon 

 

出典:Daily Mail

 

※Tier 4とはイギリスの学生ビザのこと

※試訳:「警察が非難 スノードン山への登山目的で遠くケント州から270マイルもの距離を旅してきた『自分本位な』留学生観光客」(記事の見出し)

例5-2

Hikers traveled from as far away as Kent, Southampton and Solihull, the force revealed on Twitter.

 

出典:同上

【補足】例5-1のup toについて

手元の辞書だとハッキリした記述が見当たらないのですが、ここでのup toは「最大~まで(の距離)」という文字通りの解釈よりも、「~もの(距離)」あるいは「~にものぼる(距離)」といったas much asに近い強調ニュアンスで解釈した方が日本語の感覚に合っているように思えます(意訳の範疇だと言われればそれまでですが・・・)。次はその類例と思われる英文です。

Up to 50,000 people visited a North Wales university’s conference facilities within 12 months. 

 

出典:Wrexham.com

 

※a North Wales university とは Wrexham Glyndŵr University のこと

※試訳:「12か月間で5万人にものぼる人々が訪れたのは、北ウェールズに位置する大学の会議施設でした」

 

 

 今回のまとめ

ということで、まとめです。

 

 

「as far as+場所を示す表現」は次の2通りの意味合いがある

 

①単なる「~まで」というニュアンス (≒ up to~)

②「はるばる~まで」という強調ニュアンス (≒ as far away as~)

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。