異界の住人がおもむろに言ってきた。
「出張で朝早い飛行機に乗らなくちゃいけないから、高速バスのバス停まで車で送って欲しいんだけど。」
「何時頃?」
「3時半頃バス停にバスが来るんだけど」
「・・・?何時?」
「朝3時半」
「はっ?まだ寝てる時間だけど?何でそんな非常識な時間に送らなきゃいけないの?」
「飛行機の時間が早いから仕方ないだろ。」
「そもそも、なんで私が送る事が決ってるみたいになっているの?」
「出張なんだから仕方ないだろ」
「子供達どうするの。放っておけないでしょ?」
「寝かしておけばいいだろ」
「私は血圧低いから、そんな時間に起きるのは苦痛なんだけど」
「帰ったらまた寝ればいいだろ」
「それで?子供の起きる時間だからすぐ起きなきゃいけないよね?」
「オレだって好きで行くんじゃないんだ。仕事なんだから仕方ないだろ」
「他の人はどうしているの?こんな非常識な時間に送ってもらうの?」
「・・・前の日から近くのホテルに泊まったり・・・」
「じゃあ、あなたもそうしたらいいじゃないの?その方が近くて朝ゆっくりできるし。」
「・・・いや、そういう訳にはいかんだろ。」
「何で?何で私が送る事決定で勝手に予定決めてるの?」
「じゃあ、君がタクシー代とか出してくれんのか?えっ!出してくれんの?!」
「はっ?何で私が出さなきゃいけないの?会社に請求するもんでしょ!」
「できるわけない。請求なんかしてたら、会社の経営が悪くなる。そしたら仕事なくなんだぞ。それでもいいのか?」
「???」
こんな不毛な噛み合わない会話。
彼は自分一人の自閉の世界で、自分の都合のいい筋書きを作りあげていた。
彼の筋書きでは、朝早くても(真夜中だよね)文句も言われず、
自分のために喜んで高速バスのバス停に私が送る事になたっていたのだろう。
そしてそのバスの中で仮眠を取って空港まで?
飛行機の中でも仮眠を取ろうと思えば取れるしね。
〜うん、完璧な筋書き。
でも、よく考えて欲しい。
それは彼の側から見た彼の理想の筋書き。
私の側から見た状況は・・・
小さな子供達を真夜中に、寝ているスキに30分ほど置き去りにして。
寝ているだけだから何事もないだろうけれど、
大人が誰もいない状況で、何かあったらどうするの?
もしも家にいる子供達に何かあったら・・・。
もしも異界の住人を車で送った私に何かあったら・・・。
何かあってからでは取り返しはつかないのに。
そういう心配すら彼の中ではバカらしい事なのか。
「別に大丈夫だろ」
と彼はいつも何の根拠もなく言い放つ。
でも、事件や事故は「まさか」と言う事で起きる事もあるんだよ。
海外では、これって児童虐待に入ったのでは?
それに、低血圧で貧血持ちの私。
夜3時間寝たと思ったら、送るために起きなきゃいけないなんて。
朝早く起きるのも、身体にムチ打って起きている状態なのに、
何で真夜中に起きて身体のリズムを崩されなくてはいけないの?
「帰ったら寝れば?」
それって優しさのつもりで言ってるの?
子供達がいるから、帰っても2時間程したら起きなきゃいけないのに?
3時間寝て起きて活動し、また2時間寝て起きる?
自律神経を乱されて、体調不良になるのが目に見えている。
自分はムダなく、楽して目的地まで行けるでしょうけれど、
使われた私は全く楽なんかじゃない。
それどころか1日中体調不良と戦わなくてはいけないかも知れない。
そもそも、今日の今日、急に決まって
ホテルも、タクシーなどの交通手段さえ探せない状態で
どうにも打つ手がないと言う様な緊急事態なら、
もちろん文句も言わず「大変だね」と同情して必死で送るけれど。
緊急でもないのに
なぜ私に前もって相談・確認しないの?
予定もない日の真っ昼間ならいざ知らず、
普通、そんな非常識な時間帯なら誰でも嫌だと思うに決まってる。
そんな時間帯だから、よけいに送ってもらえない事を考えて、
まず自分だけで何とか出来る方法を考えるでしょう?
その上で、一応送ってもらえるか前もって確認・お願いをしてみて、
もしOKが出たらラッキーと言うレベルだと思うんだけど。
けれど異界の住人は、自分の自閉の世界の中で
私が「送るべきだ」「送らないのはあり得ない」と決めていた。
だから私が快く引き受けようとしない事で脅迫行為を行い、
何が何でも自分の言う事を押し通そうとした。
「飛行機に乗り遅れてもいいのか!」
「出張先に遅刻してもいいのか!」
「給料が減ってもいいのか!」
「会社をクビになってもいいのか!」
挙げ句の果には
「君がホテル代払ってくれるの?」
「君がタクシー代出してくれんの?」
彼の出張には、私には何の関係も責任もない事なのに。
どうして勝手にその仕事の中に私を組み込んでいるの?
しかも、当然と言わんばかりに。
謝罪や感謝すらなく、彼にあるのは自分の思い通りにするための
脅迫・強要
味をしめた異界の住人、
2回目の早朝出張にも同じ事を強要した。
嫌で、嫌で、嫌で!!
3回目はやらないと宣言した私。
ほら。
口からでまかせだったんじゃない?
私に送ってもらえないと理解した異界の住人。
3回目の早朝出張からは深夜タクシーを予約して自宅まで来てもらい、高速バスのバス停まで行っていた。
ほら、ちゃんと方法はあった。
わざわざ私を使わなくても
自分で完結する方法はあるじゃないの!
ただ単に面倒臭かっただけでしょう?
自分だけで完結する方法を探すのが。
会社に必要経費を請求する事が。
タクシーの予約をする事が。
切羽詰まればできるのにやらない。やりたくない。
だから自分の負担を、無理にでも私の方で何とかさせようとする。
彼にとっては
目的が叶えば後の事は知ったことじゃない。
使った後
使われた者がどうなろうと、どう言う状況になろうとも。
自分はもうそこにはいないから関係ない。
そっちでどうにかすればいい・・・と?
異界の住人の一番大事な事は
自分の思った事を、思った通りにできる事。
そこには相手の状況や気持ちは組み込まれていない。
ただの使い捨ての道具の様に
用がなくなればそれで「はい、お終い。」