サザンオールスターズを語る・その5 | ONCE IN A LIFETIME

ONCE IN A LIFETIME

フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

1999年には、サザンとしては史上初の東京ドームでのツアーが組まれた。野外スタジアムでの開催は何度も行われていたが、意外にも東京ドームではこの年が初めてだったのだ。音響がネックだったとの事であるが、素人の私としてはどこがどう問題であったのかは不明である。まあしかし、サザンほどの存在ともなればチケット入手にも一苦労なので、大きな場所でやる事に関しては大方歓迎モードだった。

 

その直前、「さくらの収録曲メインでは盛り上がりにかける」との事で、この年唯一のシングル曲である「イエローマン〜星の王子様〜」が発売された。「ミュージックステーション」のみで披露されただけだったが、私はこれを見ただけで非常にお気に入りになり、発売日に即購入したものである。余談だが、大昔はCD買うだけでもそれなりに遠出が必要だったのだが、この当時は自転車で1分の所にあるTSUTAYAにて新品で発売されていたので、購入は非常に容易になっていた。

 

購入してからもひたすら聴き入り、おそらくここまで聴き込んだのは「マチルダBABY」以来であったかと思う。それだけに、チャートも気になったものであったが、なんと私がファンになって以来最低のオリコン初登場10位というものであった。売り上げとしても8万枚、トータルでも10万枚とかのセールスとかだったと思う。確かに、当時のCDセールスはいくばか落ちてはいたものの、それでもサザンでこのセールスとは信じがたいものだった。

 

当時は一瞬で終わった「だんご三兄弟」や、そしてあの「宇多田ヒカル」の「First Love」が記録的なヒットを誇っており、サザンはその煽りをモロに食らってしまった事も否めない。それでも、ファンとしてこの売り上げは非常にショッキングなものだった。そして、同じ頃に「地球音楽ライブラリー・サザンオールスターズ」というポケットサイズの本が発売された。当時はネットもまだ一般的ではなかったので、こういうデータベース本というのは非常に役に立ったものである。

 

ライブの名称は「Se O no Luja na Quites(セオーノ・ルーハ・ナ・キテス)〜素敵な春の逢瀬〜」という、回文かつスペイン語をもじったものだった。このブログでも触れているように、発音程度ならスペイン語は理解できるので、ああこれはプロレスファンの桑田佳祐ならではだな、と思ったものだった。1曲目からいきなり「ジャパネゲエ」から始まるというレアなライブであったが、映像媒体はWOWOWの放送版のみであり、メディア化は今でも一切されていない。

 

その後、秋にはオリジナルメンバーのみによる歌舞伎町ライブが開催された。これが原点回帰的なものになったのか、あの「TSUNAMI」に繋がる訳だ。そして、1999年末には2年ぶりの年越しライブとなり、TBSでは生放送と、後日完全版の2回に分けての放送と非常に豪華なものだった。セトリもいずれの世代も楽しめるバランスの良い組み合わせであり、かなり満足度は高かったと思う。そして、なんと言ってもここで初披露されたのが、「TSUNAMI」である。この曲のみテロップ入りで流されたのであるが、正直サザンとしては無難すぎるな、というのが最初の印象であった。

 

日本のヒットソングというのはほとんどが恋愛を歌ったものであるから、変化球ばかり投じてきたサザンがここでこんなストレートなど直球なシングルを出すのか、という驚きと落胆が入り混じったような感情だった。発売日は翌年の1月下旬、当時人気絶頂だったモーニング娘。の「恋のダンスサイト」と同日だった。当時はすでに正式発売日の1日前に発売、というのが少なくとも関東では慣例だったので、その日に海老名の新星堂で購入した。ずらっと初回盤のブリーフケース入りが並んでいたのであるが、かなり多くの人がTSUNAMIを手にしていたのは驚いたものである。

 

あとはもうご存知の通りである。初回でサザンとしては最大の65万枚のセールスを記録し、5万枚の差で「恋のダンスサイト」をかわして1位を記録。その後はあれよあれよという間にセールを伸ばし、簡単に200万枚を突破してしまう記録的な売上を記録した。ファンとしては、国民的バンドとは謳われているものの、セールスという面においては他アーティストの後陣を拝していたものだったから、そのあたりで悔しい思いなどをしていた。しかし、ようやくこれでセールスという点においても国民的記録を樹立するに至り、ファン的にも誇りに思えたものだった。

 

これで若年層や、新規ファンの取り込みにも成功し、これより2年前に発売された「海のYeah!!」もリバイバルヒットを記録した。1998年の所で触れるのを忘れてしまったが、この「海のYeah!!」が大ヒットシングルを中心に編集されたものとしてはサザン史上初のベスト盤であった。アルバム未収録の曲も、「いなせなロコモーション」や「チャコの海岸物語」、「エロティカ・セブン」や「マンピーのGSPOT」なども収録され、このおかげでディスク入れ替えの手間も大分省かれたものである。