笑うために | ONCE IN A LIFETIME

ONCE IN A LIFETIME

フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

もちろんマックからは歩いて帰ったんですけども、
日本では何にも思わないのに、
何故かフィリピンの街中を歩いていると、
特別な気持ちになれると同時に、
何か色々考えちゃうんですよね。

今日でやっとリスニングセクションが終わって、
明日からいよいよリーディングなんですけども、
とりあえず次に受けたら、
600点は十分狙える位置には来ていると思うんです。

でも…すでに2回目の留学で、
もう計4ヶ月目に突入していると言うのに、
たった600点が良いとこなのかと、
600点なんて目標が小さすぎではないのかと、
こんなんで良いのかな、と思ってしまったんですよね。

実際650点以上ないと駄目なんですけども、
今の実力だとちょっとそれはキツイ感じでもあるし、
なんか自信なくなっちゃったんですけど、
そんな時にふと映画「力道山」の、
最後の病室のシーンが浮かんできたんです。


故郷に居た頃は皆笑顔に満ち溢れていた。

俺の母親もよく冗談を言って、笑わせれてくれた。

でも…この国にはそんなものはなかったよ。

笑いながら街を歩いていると、
「薄気味悪い朝鮮人が、何が可笑しくて笑ってるんだ。」

と馬鹿にされた。

だから成功しようと決心したんだ。

成功すれば笑える。

いや

笑うためには成功しよう。

日本で一番笑える男になろうと…。


英語字幕と日本語字幕のうろ覚えだけど、
このシーンを初めて映画館で見た時は、
ホントマジで泣いたね。

実際はフィクションで、
本人の言葉ではないんだけども、
それでもあの有名な笑顔の奥には、
こんな意味が隠されていたのかな、
と思うとホント胸に来たね。

だから、俺も3ヵ月後には笑っていたい、
笑うためには辛い事があっても、
我慢して頑張っていくしかないな、と
決心を新たにしつつ学校へと戻りました。

あと、この劇中でもうひとつ印象深いシーンとして、
ヤクザの組長にアメリカ遠征をお願いするシーンがあるんだけど、
その時に力道山が言った

プロレスリングは世界のスポーツです、人種も国境も問われません!

も泣いたね。

正直に言えば、
やっぱり人種によってそこでの立ち位置もあるし、
誰もがスターになれる訳でもあるはずもないんだけど、
それでもかのジャイアント馬場を始め、
マサ斎藤、グレート・カブキ、キラー・カーン、
そして武藤敬司など、
大リーグに日本人が挑戦する遥か前から、
すでに彼らはアメリカで成功を収めていた訳だからね。

90年代以降、
世界のプロレスはすっかり様変わりしてしまったけども、
それでもこの台詞を聞いた瞬間、
ああ、俺が夢中になって見入っていた頃は、
まだプロレスは国境を越えれたんだ、世界のスポーツだったんだ、と言う
熱い思いが一気に込み上げて来て、
俺の涙腺はもう止めようがなかったね。

あと…映画館で見た時、
俺の前の方にすでに70以上、
もう杖がないと歩くのもしんどいような
お婆ちゃんが見に来ていたのもグッと来たな。

俺も小さい頃、
しょっちゅう祖父に力道山について
聞いていたりしたけども、
やっぱり同時代を生きた人たちにとっては、
今の人たちには想像も付かないぐらいの英雄だったのだろう。