「ふはははは。うっふんタコ丸、今日がお前の命日だ」


足元のマンホールから現れた刺客は…
「えっと、ギュウラク?」
名札の漢字がよくわからない。

大体、名前に当て字とか勘弁してほしい。

無理くり読んでみた後の

やっぱり読めないと思った、みたいな表情。

アレは一体何なんだ、と思う。



「ふははは。データ通り漢字には弱いと見たぞ。

ワシは牛酪犬太郎(バターケンタロウ)じゃあ。

八丈島生まれの荒馬じゃけぇのぅ。

お前を倒した相手の顔と名前、

生年月日を憶えて地獄にいかんかぃ!」

マンホールより勢いよく飛び出したバターは、

複雑な動きをしながらこちらに向かってきた。


「必殺股巾着振動上段蹴り!」


どうやら複雑な動きは、

この長い技の名前を詠唱するためのようで。

いわゆる上段蹴りを放つバター。
右にかわしながら腰の刀を抜くわたし。


「武器を持つとは卑怯なり」的な表情をするバター。

気にせずバッサリやっちゃうわたし。


「おのれ、この恨みは仲間がきっと晴らしてくれようぞ」

的な表情をするバター。

気にせず横に薙払うわたし。


「首領さまぁぁっ」的な表情で倒れるバター。

「またツマらぬモノを斬ってしまった」

的な表情をするわたし。

背景に小爆発が起こりそうな雰囲気でバターが地に伏して、

今日の戦いは幕となった。

ここで一句。


本日の 勝利に酔いて ごっつぁんです


記録係の大空チョメ之助が、

わたしの自伝に新たな1ページを書き加えて。

そこで夕陽となる。

「ときにチョメ之助」
「へい」
「わたしの自伝はもう何ページになったかな?」
「へぇ、ただ今。…えぇぇ…そうですね、

一万とんで223ページでございます」
「そうか。…思えば、我らも遠くまで来たものだな」
「へい。

万歩計を最初から付けていなかったコトが悔やまれます」
「ふ。そうだな一体何万歩になったコトやら」



(第三夜につづく)

誰が呼び始めたか、それはもう藪の中。
理由も意味も知らないままにヒトはわたしを


「おとめ侍うっふんタコ丸」


と呼ぶ。
行きつけのゲームセンターでは

「タコ丸さん」で通っている。

はたまた行きつけの卓球場では

「おとめさん」で通っている。

とにもかくにも。

わたしは「おとめ侍うっふんタコ丸」で。

六畳一間のアパートメントで

キャミソールをセクシャルに脱ぐときでさえも

本名「秘花具楽かおる(ヒメカグラ)」に戻るコトはない。

因果な人生だと思う。


今日も周知の秘密結社からの刺客がわたしを襲う。

わたしの日常は、

それら刺客を千切っては投げ、千切っては投げ。

そんな刺客たちとの戦いの中で身につけた

営業スマイルやドリフト技術といったスキルが

わたしを強くして

ステップアップの転職につながる。

と信じている。

(第二夜につづく)

僕は犬を飼ったコトがないので

実際のところはわからないけれども。

大型犬を飼う楽しみは



ウンチをしているときの

無常観をかもし出した表情



なんだ、と思う。