「そんなに大事なパンツを僕に?」
手にしたパンツは徐々に重みを増していくようで。
この純白の中にチョメ子の
一家のすべてがきざみこまれている。
指が少しふるえた。
「そう。このパンツの持ち主になった人は
名前をつけることができるの」
「え?名前?このパンツにかい?」
「ええ。私は草原を吹き抜ける風をイメージして
『ごまらっきょ』と名づけたわ」
『ごまらっきょ』
なんて素敵な名前だろうか。
僕にも『ごまらっきょ』に
恥じないような名前がつけられるだろうか。
「さあ、直感でいいのよ。
つけてみてチョメ吉さん」
…
「僕は。僕は…
『こんもりおあずけ』
という名前にするよ」
チョメ子はじっと僕の瞳をのぞきこむ。
伝説のパンツを受け継げるだけの
よい命名だったろうか?
「素敵よ、チョメ吉さん」
彼女は僕が今まで見た中で
一番やさしく笑った。
(パンツの話題を出して失敗だったな
と思いつつも 第十一夜につづく)