とある壮年男性と知り合う機会があって。

彼と喫茶店で話をしていたときのこと。


それまでとりとめのない話をしていたところ。

急にまじめな顔になった男性。

声のトーンをおとしながら


「ステファンさん。変なコトをきくようだけれど」


と切り出した。

内緒話のように顔を近づけて。

ついつい僕もつられて声をひそめながら。


「何でしょう」


きりきりと張っていく空気。


「わきで。」


「わきで?」


「あ、いや。その。ステファンさんの知り合いで

ワキガで困っている女性の方はいらっしゃいませんか?」


え?


「いいサプリメントがあるんです。

まだ市販はされてないんですが」


「ワキガですか…」


「試供品のような形で知り合いの会社から分けてもらったんです。

たくさんの人に試してもらいたくて」


「なるほど。効くのですか、それ?」


「ええ。わたしも治りました」


「…とりあえず、さがしてみますね。

見つかったら連絡を入れます」



さがしてみます

なんて言ってしまったけれど

どうやってさがしたものか。


「もし、あなたワキガじゃありませんか?」


…いや、ダメだ。

大体、運良く見つかったとしても

たのまれもしないのに


「ワキガに効くサプリメントがあるんだ」


なんて言えそうもない。

僕は悪いとは思いながらも

その依頼を放置してしまった。

何でもホイホイと聞くものじゃないな

と反省した。


すみません。