「布団がふっとんだ」



シチュエーション;

「今夜はいいだろう?」

男は晩酌の余韻のまじった息で女を抱き寄せた。

女は男の方を見ない。

乳液を肌にすりこむ作業を続けながら。

「だめよ。タロウが起きちゃうでしょ?」

「大丈夫だよ。さっき見たら、よく寝てたから」

と作業を続ける女の寝着を少しずつ脱がせ始める。

「もう。電気は消してよね」

暗転。じきに絶え間ない吐息。

「ちょ、そんなに動いたらダメよ。ほら。あっ」

がば

っと何かがひるがえる音がする。

「うわっ。布団がふっとんだ」

「あなた、そんなに動くから。

羽毛布団、新しいのに変えたから軽いのよ」

「全然気付かなかったよ」

「やっぱり、音がするから今夜はナシね」

しょぼくれる男。