初体験は24歳。

夏、暑い日の甘酸っぱい思い出。

今、振り返ってもあの頃の気持ちが

よみがえってくる。



あれは、図書館で時給自足していた頃のおはなしじゃ。



夏休みの図書館は、小学生でいっぱいだった。

プールの塩素の匂い。

自由研究に関連する本は、ほとんどが貸出中。

出遅れた子が、一生懸命に本棚をなぞる。


夏休みの宿題なんて、

なかったことになっている子もいて

毎日、アニメ映画を観にやって来る。


で、そんな子の一人がこう言ったそうな。


「おっちゃん、これ観れんのん?」


僕はおっちゃん。

初めてだった。

冗談ではなく、素直に


「おっちゃん」


と声をかけられたのは。

24歳。夏。

もうすぐ25歳になろうという頃だった。


その子のすぐ後ろにいたお母さんが

「これ!お兄さんでしょ!」

小さな頭を小突いた。


フォローがこころを貫通した。


いっそのこと笑っておくれ。



僕の初めての「おっちゃん」体験。

甘酸っぱい記憶。

あれから数年。

「おっちゃん」と呼ばれても

何とも思わなくなった。

でも、まだ「おっさん」には若干の抵抗がある。