これは、うっふんなアダルトフレーバーが

過量気味なはなしである。



太陽が山にかくれて、道中に灯がともりだす頃。

住宅地の中にポツリとつく明かりがある。

夕闇の中、その自動販売機は稼働を始めた。

少年たちの夢アイテムを売ってくれる自販機だ。


そう。Hな本を売ってくれる自販機だ。


少年にとって、あの機械は秘密の花園で

Hな本を見たいけれど

お金も勇気も年齢も足りなかった僕たちは

いい加減なウワサ話を

怪談めいて話すのだった。


自販機にお金を入れてボタンを押すと

ブザーが鳴るらしいよ


よく考えれば、

買うところを人目につきたくない人のために

設置されたに違いない機械から

そんな音が鳴っていたら

商売あがったりだ。

でも、僕たちは

「マジで?こえーな」

と、他の人にもウワサを広めていくのだ。


お金を入れてボタンを押したら

本ではなく、女性用下着が出てきた


という体験談もあった。

その彼が自販機のメーカーに

抗議の電話をかけたところ、

「あなた18歳未満でしょ!」

と怒られたそうな。

おかしな話だけれども、

こんな話を他のクラスから

わざわざ聞きに来る人もいた。



Hな本を買うのに、

お金も年齢も足りて、

勇気なんて必要でなくなった僕は、

そんなトキメキもなくなった。


ある夜、ふと思い立って

ブザーのウワサの真相を確かめようと

自販機のボタンを押してみた。


ゴトン

と音がして、指定通りの本が取出口に落ちてきた。

ブザーが鳴ることもなく、

女性用下着が出てくることもなかった。


出てきた「熟女倶楽部」という本。

読んだら、笑えてしまった。



汚れちまったときめきに

今日も世知辛い風がふく