22時の会社帰り。

夜道に光る自動販売機。

誘蛾灯に吸いつけられる虫のように

僕はジュースの自販機前に立っていた。

ポッカの自販機だった。
ふってふって


















空腹感が少しでもまぎれるかとゼリーを選んだ。

表には


「5回 『以上』 ふる」


と書いてあった。

ふむ。



ふって裏





















裏を見ると

「5回ふって ぷるぷる食感」

「20回ふって とろーり食感」

と書いてある。

「とろーり」は放置し過ぎたゼリーを食べるようで

ちょっとイヤだったので、


ちょうど5回だけ


大きくふってプルタブを引いた。

口をつけて、缶をかたむける。

ちょろ

っと上澄みの汁。

まもなく


ごぼ


っという効果音がした。

口の中には何も入ってこない。


そうか。

ふり足りなかったんだ。


もう開けてしまった缶。


このまま飲めないなんて生殺しに

我慢ならなかったので

ずずっと吸ったり

左右にふったり。

怪しいそぶりを路上で散々やらかした末

何とか飲みきった。



味は、給食にまれに出てくるゼリー。

もしくは、オフィス街の路上弁当屋が

おまけで付けてくれるゼリーだった。


でも、味よりも


もっとふっておけば良かった


という悔しさが残った。


それでも空腹感はまぎれました。

ありがとうポッカさん。