"Running Up That Hill" Kate Bush | 誰にも騙されるな!Don't Take Any Shit From Anybody・・・

"Running Up That Hill" Kate Bush

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世の中には不思議な現象はたくさんありますが
Kate Bushがアメリカや日本では
セールス的にはもちろん、評価も本当に低くて、
僕の中では洋楽七不思議のひとつなのです。

歌唱力、表現力、カリスマ性、ヴィジュアル、
そしてプロデューサー力などなど、
全てを高水準で兼ね備えた彼女は
史上ナンバー1の女性ヴォーカリストとです。
もちろん、これはあくまでも僕個人の意見です。

Pink Floydのギタリスト、David Gilmourに見出された彼女。
原石の彼女を見つけた時のDavid Gilmourは
きっと鳥肌ものの感動だったと推測できます。

いっそのことPink FloydやRoger Watersと絡んでみても
何だかとてつもない作品や企画ができそうで
おもしろかったのに、、と思います。
なぜなら彼女自身、思いっきりプログレだと思うんですよね。

そんなKate Bushは個人の認知度は低いものの、
デビュー曲「Wuthering Heights」だけは日本では有名。
言わずと知れた、某人気バラエティ番組のオープニング曲として
長らく使われてましたからね。

この曲のイントロが街で流れると
「あ~知ってる、しってる~」なんて言われる。
誰が歌っているか知っている?「わかんない!」
本当に空しい想いを何度しました。

でもこの曲を番組に採用した人はその効果も含めて凄いなと思いますけれどね。

今回取り上げる曲「Running Up That Hill」は85年の作品です。
同曲が収録されているアルバム「Hounds Of Love」もそうなのですが
彼女の当時の音楽の方向性からすると
非常に聞きやすい、ポップな作品となっています。
デビュー以来常にチャレンジし続け、
ある意味、「過激」ともいえる方向性で、
そこが僕は好きだったわけですが
この作品は肩すかしと感じるほどに
聞きやすくメロディを重視した作品でした。
そのせいか何とこの曲は全米30位。
最初にして唯一の全米TOP40入りヒットです。

とはいえヴォーカリストKate Bushの魅力は

「Wuthering Heights」を代表とする、
高音で「コロコロ」転がるような小悪魔的な歌い方。
一方では魔女に耳元で囁やかれているかの如きエロティックさも顔を出し、
時には「狂気」すら感じるすごみもあり、
世間は七色の声を持つ、、、と表現しますが
作品の中身によって変貌する多面性、それが彼女なのです。

今回の「Running up That Hill」では
そのいずれの表情も1つの作品の中で如何なく発揮していますので、
その意味ではKate Bushの入門編の曲かもしれません。

地の底から何か得体のしれない物が昇ってくるような
シンセサイザーの導入部分、
民族音楽のようなドラムから始まるイントロ、
そして語りべのようなKateのヴォーカルが始まると
PVを見なければ中世のヨーロッパに誘われたような錯覚に陥ります。

彼女のどの曲を聞いてもそうなのですが
眼を閉じるとそこはミュージカルの場面のようで
中世の時代だったり、未来であったり、
現実であったり、非現実であったり、と
物語の情景が容易に鮮やかに浮かんできます。

そして必ずそこには時に、
少女のような、魔女のような、動物のような
色々なKateが主人公として現れてきます。

聴き手のイマジネーションを
疲れるくらいに掻き立てる、、、
これこそがKate Bushの醍醐味なのでしょう。

さらに彼女の魅力を体感するには音楽を聞くだけでは
それは一部にしか過ぎません。
必ず、次には映像を見て、彼女の表情も、振付も全て見ないと
本当の魅力は理解できないのかな?と思います。

彼女は05年に久しぶりの新作「Aerial」を発表しました。
子供も誕生し、幸せそうな彼女ですが、
その新作は、さすがに小悪魔さや過激さは影を潜めたものの、
作品のクオリティは衰えず。

相変らずに「神に愛された魔女」なのです。