サンパウロで購入したイタリア製のパスタマシーンが壊れた。今や、パスタだけに止まらず、ラーメンやうどんも、手打ちじゃないと受け付けない体になっている。これでは麺類全般が食べられないという由々しき事態に陥った。(㊟ブラジル製の廉価なパスタは茹でると溶ける)

ブラジル製、もしくはブラジルで販売されている中国製は論外だが、10年保証のついたイタリア製もほんの1ヶ月半の命と結構しょぼかった。これなら日本の蕎麦屋のように麺切包丁1本で(小間板も使うか…)こなすローテク伝統職人芸の方がはるかに秀でている。
とりあえず、メーカーのブラジル代理店に問い合わせ、修理をしてもらう運びとなった。パスタマシーン一式を送って、待つこと3週間。やっとパスタが食べれる…、と思いきや、直ってない!そればかりか、ハンドルすら梱包されていない。その上、ご丁寧にも、修理依頼書の備考欄に『麺生地に問題あり』、お前らなめとんのか!

近所で色々尋ね回った結果、ブラジルで泣き寝入りせずに、スマートに解決する方法は次の2つ。
NPO法人でProTeste(プロテスト)という組織がある。文字通り、 『抗議する、異議を申し立てる』他に『PRO-(前もって)、-TESTE (テストする)』メーカー泣かせの非営利活動法人だ。会員制だから会員になる必要があるが、立場の弱い消費者に代わって、納得いくまで、とことんメーカーと掛け合ってくれる心強い団体だ。ここで発行する雑誌には、今回のように消費者が舐められたケースの記事とメーカーのその後の対応が並ぶ。その他にも、様々な商品をメーカー別に徹底的に比較する。安心して乗れる子供用の自転車は?と質問をよせると、主なメーカーの商品をそろえ、ブレーキから、補助輪の安定性など、様々な観点から検証しランク付けまでやってのける。一部始終が企業と商品の実名入りで雑誌に掲載されるのだから、対応を誤ると一気に社会的な信用が失墜しかねない。企業側にとっては悪魔のような雑誌だ。

もう一つは、Procom(プロコン)という公的機関。こちらは、市役所やその出張所などに、事務所を構え、今回のようなケースに消費者が駆け込むと、ブラジルの煩雑な公的手続きをきちんと踏んで手続してくれる。1ヶ月以内に問題が解決しない場合には、メーカー側に罰金、及び、訴えのあった事務所で企業の顧問弁護士による説明義務が課せられる。広大なブラジルの僻地にあろうが、会社側は弁護士を送らなければならないのだ。プロコンが絡んだ事例では、9割9分メーカー側の敗訴に終わる上に、社会的なペナルティーも加えられる。もはや情け容赦もない鬼畜だ。

ということで、何事も一筋ならないブラジルでは、次のステップ、Procom(プロコン)へVamos(Let's go)!

故障したパスタマシーン、近所で借りた正常に動く他社製のパスタマシーン、家で打った麺生地をもってプロコンで実演。実際に2台のパスタマシーンで麺を作れば、その違いは一目瞭然。早速、その場で手続きをしてもらえることになった。イタリアのメーカー本社にも故障個所がわかる動画付メールを送付。メーカー代理店の他に、「保証期間は1週間です」とあり得ないことをのたまわり、対応すらしない販売店にも、プロコンから正式な問い合わせを入れてもらえることになった。

その後の展開は迅速。
翌日、メーカー代理店の修理担当者からメールで、悔し紛れの捨て台詞が来たのには閉口させられたが、3日後、ブラジルのメーカー代理店から故障個所の代替品が届く。しかし、ハンドルは未梱包。再度、苦情のメールを送ると、今度は持ち手がプラスチックの廉価品を送ってよこす。もうひと押しして、やっと正規品が戻ってきた。なんか、めちゃめちゃ慌てていた様子が随所に感じられる対応だ。さらに、10日後、今度はイタリアの本社から故障部品の代替品とハンドルが国際小包で届く。こうなると、もうプロコン凄いとしか言いようがない。さらに販売店ではなく販売会社のマネージャーからも謝罪の電話があったところで、プロコンに問題解決の報告をして一件落着。

ふー、やれやれ。泣く子はまだしも、地頭には勝てぬというのは、もはや一昔前の話。何はともあれ、おいしい麺が再び食卓に上るようになった。やったね!
 


新年度が始まり1カ月半も経った3月末。やっと教科書が配布された。9年生は昨年より一クラス増えたから、当然教科書の数は足りず、あちこちの学校から搔き集めてきたらしい。

ブラジルでは、義務教育で使用する教科書は、給付ではなく貸与になる。そう、貰えるのではなく、借りるだけなのだ。一応、3年ごとに改定されるが、その間は同じ教科書を使いまわす。基本的には書き込み禁止で、きれいに使わなければならない。もちろん、中にはこっそり、それとはわからないよう練習問題の答えを書き込んでくれる先輩方もいるから、こういう教科書に当たった子はラッキーだ。

日本の教科書だと、環境に配慮した用紙やインキを使用し、印刷技術も言わずもがなの五つ星レベル。それでいて軽量と至れり尽くせりなのだが、ブラジルの教科書はゴワゴワ感のある紙質に微妙な擦れ具合の印刷術。もちろん、雨にでも濡れようものなら、インキが溶けて流れ出す。なによりも、辞書を思わせる重量級の重みが、ずっしりと肩にのしかかる。こんなのを英語(CD付)、数学、ポ語、理科、地理、歴史と6冊一遍に貸与しなくても…。

配られた教科書は、しっかり検品。なぜかルービックキューブ(立体図形?)とマトリョーシカ(数列?)の意表を突く組み合わせが表紙を飾る数学の教科書。後半の内容はsen,cos,tg(日本だと高校でやるsin,cos,tanだろ!)が登場する魔法の呪文が並ぶ。ところどころ、練習問題の解答が記入してありラッキーと思ったのもつかの間、よく見ると誤答っぽいのが多いんだけど…。

一番期待していたポ語の教科書は "Eu amo ○○"の書き込みが至る所にある。なんか、バラ色の人生を歩む先輩が使用していたようだ。でもどうせなら、かわいい後輩のために、もっと役に立つ書き込みをしてほしかったな。まー、自力で精進しろよということか…。

地理はヤバい。いきなりテロリズム問題からのスタートだ。噴煙立ち上るワールドトレードセンターにビンラディンetc.。グリーンピース(GP)が喜びそうな日本の捕鯨船の「只今、調査捕鯨中」って写真だって載っている。というか、これって、どう見てもGP提供だろう。GPの隠れたイデオロギー教育世界戦略の一環か? 世界中の子供たちが使う教科書でこんな写真が掲載されてたら…。したたかに、ますます日本を窮地に追い詰めるGP。どうするニッポン!

だが、もっとヤバいのが歴史の教科書だ。歴史好きの子が使用していたのかは定かでないが、歴史が書き替えられたと思われるぐらい、傷み方が半端ではないのだ。コーヒーか何かをこぼしたと思しき哀れな表紙。パラパラめくると、文章や写真の溶けたインキが混ざり合い、もはや斬新的なアートで歴史観を表現しているかのようだ。美術の本として、ちょっと手元に置いておきたい気もするな…。通常はクレームを出しても交換不可なのだが、一応文句を言うと、すんなり新品未使用のものが再貸与…、ってなにも新品じゃなくても…、これじゃ先輩方の真心が一切感じられないんだけど…。


作為的なクラス替えの件はひとまず置いといて、本題は脱VIP。教壇前の超VIP席の机と椅子は、私が2列目に移動させて使用しているからぽっかりと空間が出来たままだ。この状態で、再登校初日の授業が始まった。

予想とは裏腹に、理科顧問のフィリップ、続いて数学顧問のフィリップも全く気にしないという、完全スルーの展開で時は過ぎていく。しかし3時間目、歴史教師のヒタからお咎めが入る。となると、満を持して学級委員長アジウソン登場。初の大仕事だ。ヒタを納得させ、私に代わり、ポールポジションを奪取!えっ、ポールポジション?

実は教壇前のVIP席、面談や保護者会などで父兄が我が子息に希望するポールポジションだったりする。問題児がいるときは優先されることもあるらしいが、基本優等生が座るとされる席なのだ。こういう子は学級委員長に任命され、教師の忘れ物を職員室に取りに行ったり、教師の代わりに板書…、って、ただのパシリじゃん。

何はともあれ、脱VIP達成!


思い返せば、一昨年の8月、メルセデス学園中等部転校初日。転校生の紹介も一切ないまま、教壇前の席に座る一般生を退かせ、私にあてがわれて以来、この一年半、ずーっと教壇前の超VIP席という国賓待遇。たとえ、クラスで席替えがあろうと、私の席だけはまったく替わることはなく、不遇の日々を囲ってきた。とりあえず、教壇前のVIP席からの脱出は今年度の至上命題だ。

にもかかわらず、新年度早々、デング熱に感染。大事なスタートダッシュで躓き、一週間の欠席を余儀なくされてしまった。その間、クラスメートの顔ぶれが1/3も変わってる上に、生徒公認の席替えも行われていたようで、またもや教壇前の超VIP席は私のために死守されていたらしい。

しかし、そんなことは想定内。再登校初日はちょっと早目に登校する。とりあえず、都合よくぽっかりと空間が開いていたVIP席の左斜め後方の2列目に机と椅子を移動して陣取る。9年生は一クラス35人前後の編成だが、朝登校すると教室内の卓数は30。午後は下級生が教室を使うが、クラスの編成人数が違うから机の足りないクラスの子が持って行ってしまうのだ。遅く登校した生徒は机が足りないわけだから、他の教室からパクって確保する。

おー、2列目の風景…、といっても大して代わり映えはしない。せめて、周りに座る生徒の顔ぶれが新しいと嬉しいのだが…。ちょっと、ワクワクしながらクラスメートの登校を待つが、カイオ、ジュリアーノ、アジウソン、マリアガブリエラ…、なぜ?去年と同じクラスメートばかりが集まる? なんか新鮮味が全然出ないんだけど…。というか、こいつら、勝手に席を替わっているような気がしてならない。

マリアガブリエラは授業内容を理解する補助をしてくれるからいいとして、数学特進補習組のうち半分がご近所。しかも、よりによって、補習組8人全員、みんな仲良く9T3(9年3組)なのはなぜ???、あまりにも作為的だろー、このクラス替え。

「それより、一週間休んでたんだから、借金たまってるよ!まずはナルヒナ頼む」基本、ブラジル人は人の話を聞かないので、こういう展開が多い。でも、ナルトとひなたのカップリングの短縮形をそのまま使うなんて、成長したぞアジウソン。しかも、いつの間にか学級委員長に昇進。今の今までそんな役職があるなんて知らなかったから、多分肩書だけで仕事はないんだろうけど…。とりあえず、昇進祝いに描いてあげよう。
「俺は、人類の進化の過程を並べて描いたやつお願いね」とジュリアーノ。いつもながらわけがわからん。結局目的はそこか。デング熱で一週間欠席してたクラスメートの体をいたわる思いやりの言葉を一つぐらいかけてみろ。
「だって、大丈夫だから学校来たんだろ。1週間も学校休めてよかったじゃん」
「………」くそっ、返す言葉が…。


その昔…、といっても小学生時代なので3,4年前だ。友人の母親のコレクション、昭和の爆笑漫画「パタリロ」にハマり、読みまくったことがある。パタリロ王国は一年中気候が爽やかな「常春の国」という設定だが、ここエルドラードもパタリロに負けず劣らず、どう見ても入念にキャラ設定したとしか思えない濃すぎる登場人物ばかりか、1年中花々が咲き乱れる常春の国だったりする。

ということはそう、露地栽培のイチゴがほぼ通年食べ放題なのだ。ただ、そこはブラジル産。季節によって多少の差異はあるものの、食べると「サクッ!」と生野菜を思わせる歯応えに、アスコルビン酸(ビタミンC)直飲みレベルの酸っぱさか、形はイチゴだが味は無味なんかがほとんどで、いくらでも食べれてしまう栃木県産とちおとめが無性に恋しくなる。それでもジャムを作くつったり、シェークにしたりするのはお勧めだ。

エルドラードに住んでかれこれ1年半の月日が流れたが、寝苦しいほど暑くて扇風機がほしいと思った夜はないし、寒くてフリースを着たのもなんと1日のみ。このときは1週間晴れ間も覗かず、雨が降り続いたのが影響したようだ。もちろん、南回帰線より赤道側に位置するから、晴天の日の日中は気温が上がる。でも、標高は700メートル。初夏の高原避暑地軽井沢なみなのだ。まー、1日のうちに四季があるって言い方もできなくはないが、太陽の北中(南半球のため、たぶん南中ではない)以外は、1年を通して常春の国と言っても差し支えないほど気候が安定しているのだ。

そんな中、母がフェイーラに行き、デング熱で療養中の私をネタに信じられないほどいろんなものを戴いてくるのだった。物凄い才能だが、そこはちゃんと買ってあげようよ。
「だって、お金取らないんだもん」とは母の弁。

スイカ(こればかりは2000キロ離れた酷暑の地ゴイアス州から運ばれてくる。1玉20キロの1/4も貰ってどうするの)、イチゴ、柿(ブラジルでもクァキと呼ばれている)、リンゴ(いろいろな品種の中からわざわざフジを選んでくれた)、ぶどう、アビウ(初めて食べるフルーツだがちょっと形容しがたい味)、バナナ、オレンジ、アボガド。もはや、常春どころか四季が同居していると言った方がふさわしい品揃えだ。同じくフェイーラの八百屋でも、里芋とショウガを戴き、スープの作り方まで教わってきたらしい。みんな心配してくれてるんだな。お見舞いと考えると、温かすぎるほどの人情味だ。

早速、母特製イチゴシェーク。南国のイチゴを使ったシェークは驚くほどの極彩ピンクだ。恐る恐る一口…。
「あのー、ちょっとサクサクするんだけど…」
「あ、分かった?里芋入れてみたんだけど♡」体に良ければ何でもアリ? しかも、生で入れるのはどうなの?ブラジルの里芋はアクが強い。見る見るうちに赤い発疹が…。なんか、ホラーの心境だが、もう一つ気になることが…。
「ちょっと、緑っぽいのが漂ってない、もしかして…」
「わかめ入り🎶」
飲む前に聞くべきだった。やっぱり健康が一番だ。