入学2日目。前日のG組侵入宣言とは裏腹に、遅刻ギリギリで滑り込みセーフ。さり気なくG組をうかがい、侵入する余裕はなかったから、前日同様C組へ潜り込む。1,2時間目は何事もなく平穏にすぎたものの、3時間目に入り、初めて出席簿が読み上げられる。が、もちろん私の名はない。

 

「それでは、今名前を呼ばれなかった者は前へ…」

早くも、C組への密入組が摘発されてしまう。この後、事務室に連行され、元のクラスに強制送還のパターンだ。仲の良いもの同士、勝手に机を並べて、適当なクラスで受講。ブラジルならではの新年度の風物詩だ。

「って、えっっっ!」私一人のみ??? 想定外なんだけど…。しかも、連行先の部屋には、物々しい鉄格子。学校内にこんな空間があるなんて…。まるで取調室だ。摘発を受けた10数名の強面の面々が並ぶ。

 

そういえば、入学申し込み手続き時に、必要な身分証明書のコピーを添付し忘れ、入学までに提出するように言われていたが、すっかり忘れていた。入学保留扱いならまだいいが、最悪のケース、入学が認められていなかったなんてことも、大いにあり得る。拙いポルトガル語で説明するのも骨が折れるな…、などと要らぬ心配もしてみたが、心配無用。手際よく新しいクラス名が告げられていき、私は10MF。MはManhãの頭文字で午前の意だから10年F組午前の部だ。なんか、適当に振り分けてたとしか思えないが、予定通りといえば予定通りかな…。いよいよF組に潜入だ。

 

でも、よく考えたら、只今3時間目の授業、真っただ中。ただでさえ、ブラジルの田舎では一際目立つ東洋系の出で立ちだから、いきなり注目を浴びる行為は控えたかったのに…。なんか真打登場みたいなシチュエーションになってしまった。変にコソコソしても、かえって目立つから、自然体で教室へ。しかし、教室に足を一歩踏み入れた途端、それまで、騒がしかった教室は静まり返り、クラス中の視線が、私に集まる。教師に挨拶をして、運よく見つけた空席に座るも、まだ、みんなの視線が降り注ぎ続けている。先生も、呆気にとられてないで、普通に授業進めてよ…。

 

見渡したところ、去年、中学で同じクラスだった人は1人のみ。もう何人かは中学時代の顔見知りだが、ほぼ初顔といっていいメンバーだ。となると…。

「本物の日本人?」「どうして、日本人がこんなところにいるの?」「日本語しゃべって!」

やっぱり避けては通れない質問攻め。しかも、いきなり…。って、授業中なんだけど??? 

 

まー、以後、お見知りおきを…。

 

 

12月から1月にかけての長~い夏休みも終わり、2月から新年度が始まるブラジル。2月1日始業というのが一般的だが、今年(2017年)は中途半端な水曜日に当たる。となると、大多数の学生は、切りの良い翌週月曜日から登校するのが慣例だ。ブラジルでは、飛び石連休の発想は無いから、飛び石の間も無理やり埋め、常に大型連休になる。日本もちょっとは見習ってほしいところだ。

 

メルセデス学園中等部からは、留年せずに卒業が決まれば、同じ地区にある州立高校へと無試験で編入できる。日本帰国という手もあったが、学校生活が半日で終わるブラジルの魅力にはどう足掻いても抗えない。というワケで、ブラジルで進学決定! おそらく、留年していたら、有無を言わさず日本に送り返され、今頃は極寒の日本で受験戦争の真っただ中だったんだろうけど…。

 

メルセデスから編入するのだから、さぞかし高級感の漂う校名と思いきや、州立セバスチャン…、と聞いて一瞬ハッとした。セバスチャンといえば、『あくま(悪魔)で執事ですから』のキメ台詞で有名なセバスチャン・ミカエリス。黒執事にちなんだ校名だったら、一度で覚えられた上に、アニオタの友人にも自慢できたが、セバスチャン・xxxxxxxxxxx・xxxxxxxxx…。残念…、普通…。しかも、やっぱり長い…。もう覚える気すら失せた。

 

さて、入学初日。初日といえども、入学式があるわけでもなければ、始業式もない。余計な式典は一切なし。午前、午後、夜間の3部に分けて生徒を押し込むから、授業と関係のない時間は極力排除。休み時間ですら、3時間目と4時間目の間に1度あるのみ。これで、5時間の授業時間を確保し、午前中で終わるというプログラムは学校や仕事に依存しない人間形成に大いに役立っているはずだ。

 

学校からの連絡は一切なかったが、とりあえず、午前の部なので朝7時に登校。制服すら着ていない。いちおう、呉服屋に求めに行ったが、売り切れの上、入荷未定。呉服屋も縫製工場も、大量の在庫は抱えない堅実経営なのか、自転車操業なのかは分からないが、この時季、制服の購入は困難を極めるようだ。まー、始業後、1ヶ月ぐらいの間にそろえれば問題はないだろう。ということで、普通に私服にピアスで登校。一部の女生徒はマニキュアにバッチリメイクって、いったい何時に起きてるんだ…。私ですら、ノートに筆記用具は持ってきたが、登校途中に会った男子生徒の持ち物はどう見てもギターのみ。学校が近づくにつれ、案の定、制服を着ている生徒は半数にも満たない。おおらかに高校生活スタートといったところか。校則という校則もないので、教師も生徒も余計なことにエネルギーを使わないのはいいところだ。

 

教室前に張り出してあるクラス分け名簿に目を通してみるが、名前がない。高校には入学できてるはずだけど…。ここで、一気に不安に飲み込まれてはいけない。きっと、よくあるケースだ。実際、以前もあったし…。初日の事務は、こういった名簿漏れの生徒たちで込み合うだろうから、メルセデス中学のクラスメート、ハケウのいるC組にお邪魔し、授業開始。教科書が配布される前から、いきなり授業だ。が、早くもカオス。尋常ではない騒がしさだ。通常、お利口さんは、A組から振り分けられることが多いが、A,B,C組は中学からの内部進学組が半数近くを占める。C組でこの状態? たしか、高1の午前の部は7クラスあったから、F,G組あたりまでいくと、おそらく想像を絶する光景が広がっていそうだ。明日は、マリアガブリエラのいるG組にでも潜入してみよーっと。

 

ちなみに、初日の授業は3時間目まで。1時間目のポルトガル語の教師は30分遅刻。次の地理の教師もコーヒー飲みながらというのはいいとして、飲み残しは窓から捨てるし、最後の体育の授業も半数以上の女生徒は生理で見学。

 

かくして、セバスチャンでの学園生活の幕が切って降ろされるのであった。生き延びれるよな…、多分…。

 
 

 

オッサンのだみ声と共に、やって来たのはざくろの行商。ブラジルでは、盗品を非合法に売りさばく怪しい行商人は珍しくない。しかも、ハイクオリティという触れ込みだ。ますます、怪しい。しかし、試験前ということもあり、友人に付き合い、縁起を担いで試食。ザクロは脳に似ているその見た目から、食すると頭がよくなるとブラジルでは言われている。

 

ざくろにハイクオリティーも何もないだろうと思いながら、勧められた味見を一口。「えっ!」これ、本当にザクロ?ってぐらいの甘さだ。スミマセン…、侮ってました…。

 

 

◇ガーネットを思わせる輝きだ。ザクロ石とはよく言ったものだ。

 

 

◇ヴィヴィの家で実ったザクロは758g。デカいんだけど…。

 

 

◇こちらは、普通の味。

 

12月、1月をまるまる含め、2カ月以上に及ぶ長~いブラジルの夏休み。もちろん、日本に一時帰国するのは言うまでもなし。日本滞在期間をできるだけ長くするために、昨年(2016)に引き続き、今年も20000㎞一人旅決行だ。昨年の反省(14歳の北米経由一人旅は、メチャメチャ航空会社の職員になめられた…詳しくは☆お子様一人旅???☆のブログで)を生かし、今年はヨーロッパ、オランダ経由で帰国…、と思ったら、やっぱり、なめられた。パスポートコントロールのおっさん、何回年齢聞けば気が済むねん。パスポートも偽造してないし…。

 

途中ストップオーバーして観光する気も満々だったが、両親に「お前は沈没するからダメ!」と一蹴。南国ならともかく、極寒のヨーロッパで沈没する度胸はない…、いや、そうじゃない。そこは可愛い我が子の誘拐とかを心配するところだろ!でも、トランジットだけの初ヨーロッパは、やはり虚しい。かわいい子にはもっと旅をさせた方がいいと思うんだけど…。とりあえず、この3年で日本~中東~南米~北米~日本で西回り世界一周、さらに日本~北米~南米~欧州~日本と東回り世界一周も達成し、さらに日本~欧州~南米(今回はトランジットを含めて片道31時間)と単純計算で世界2周半。流石にシビれるな…。次は豪州経由で…、なんか今度はいい感じで沈没するイメージしかわかない…。

 

さて、帰国早々、親類知人の多くの方々が、ブラジルで入手困難なものを提供すると申し出てくれた。早速、嬉しい展開だが、日本製品のクオリティを考えると、すべてのものが入手困難。メード・イン・チャイナだって、ブラジル製より数段上を行くレベルなのだ。

 

とりあえず、さっと思いつく日用品。火が付くチャッカマン?、柄の取れないオタマ??、ナイフもハサミも使わずに切れるサランラップ???、毛の抜けない歯ブラシ⁇⁇…等々、枚挙に暇がない。ネガティブな枕詞が随所に現れる状況に、一同曰く、「そんなのあるわけがない!」って、そんなこと言われても…、なめるなよ、ブラジルクオリティ。

 

ブラジルのチャッカマンは、全てが全てそうなのかはわからないが、火がつかない。つまり、火打石の摩擦による火花のみなのだ。熟練の域に達したとしても、これで器用に一発着火は至難の技。しかし、日本のチャッカマンだと、ブラジルのガキどもは間違いなく火をつけて振り回しそうだ。凶器になることを避けるためのブラジル的発想か?

 

基本的には、あれば便利なものって、なくても困らないものだから、チャッカマンで火がつかなければ、マッチで代用。柄の取れるオタマも、特に不便という程、不便じゃない。それどころか、着脱式と考えれば、夫婦げんかの時、飛び道具として、主婦の隠れた必須アイテムとさえなり得る優れモノ。サランラップも、本当に必要じゃなければ使うのをためらう仕掛けだから、使用回数激減。スーパーエコなのだ。毛の抜ける歯ブラシも、毛先が丸まる前に取り替え時期が一目瞭然。

 

でも、歯ブラシについてはちょっと補足。毛の抜けない歯ブラシもあるが、腰のある硬めの歯ブラシのみ。私はやわらかめのものを使うから、歯磨きの度に不快度120%。ここはもう、クオリティの問題としか言いようがない。しかし、水道水が日本の塩素系消毒と違って、フッ素系消毒だからそんなに神経質にならなくてもいいか…。もちろん虫歯はないから一安心。

 

快適な世界や空間を追い求めていると、やはり不便極まりないブラジルでの日常生活(まー、求めているわけではないから、それなりに楽しめるけど…)。ブラジルに限らず、世界の多くの国々も然りだろう。日本に戻ってみると、ちょっとしたところで、クオリティの違いをまざまざと見せつけられる。それどころか、更なる高スペックをうたい文句に、ますます人々の欲求は駆り立てられる。確かに魅力的だけど、そこまでのモノは必要ない気が…、というモノも多い。こうなると、中身のないモノに惑わされず、本当に必要なモノを見極めないとね。

 

そして、再渡伯数日前…。皆さまのご厚意により、ハイクオリティな便利商品がいい感じで揃ってしまった。しかも、選りすぐりのモノばかり…。その上、100均で好きなものを買いなさいと3000円+消費税までいただいたりして…。べ、べつに訴求度アップを狙ったわけじゃないんだけど…(^^♪。

 

私の知らない間に、今年のインタークラスことスポーツ大会で着用する9T3(9年3組)オリジナルTシャツが出来上がった。アザだらけになった去年の教訓を生かして、今年はケガの恐れがないチェスに登録するつもりだが、これを着てチェスってのもな…。まー、日本の学校の体操服よりはいいか…。

 

 

◇背中には名前入り

 

 

肩のゼブラ模様といい、狸腹を思わせる腹部に丸の雑なデザインといい、思わずツッコミを入れたくなる。

「この胸…、というより腹部のPachecoっていったいなに?スポンサー付いたの?」

「スポンサーはマルコスだよ」そう、彼のラストネームがパシェコらしい。でも、ユニフォーム代はきちんと請求されたから、ノリだけで作ったとしか思えない。

「お腹に丸いデザインがちょうど来るのはセンスないんじゃない?」

「いや、この方がチャクラをイメージしやすいだろ。日本人のくせにそんなことも知らないのかよ」普通、知らないだろう。接戦を制するブラジルスポーツの神髄ってそこなの?でも、妙に説得力が…。確かに、サッカーやバレーボールなど超一流選手を多く輩出しているし…。

 

そういえば、フルネームを知っているクラスメートって、誰一人としていないな…。長いうえ覚えても意味がないし…。ちなみに、マルコスのフルネームは、“マルコス ヴ〇〇〇〇〇 ド ナ〇〇〇〇 パシェコ”。やっぱり長いな。一度聞いただけですべて覚えるのは不可能だ。他にもちょっと聞いてみると、“ルイス ギリェルミ モ○○○ ヒ○○○ デ ソウザ”。こいつらに対抗できる日本人って、曾我倉山田石川麻呂(そがのくらやまだのいしかわのまろ)ぐらいしか思い浮かばない。スポーツ同様、稀有だ。

 

もちろん、女性陣も負けずに長い。“レ○○○○〇 モ○○○○ ガルシア デ オリベイラ”。なんかの呪文???オリベイラはオリーブの木だよな…、オリーブの木を植えているガルシアさんってところかな…。いらんような気もするが…。

 

“グレース ア○○ ホ○○○○ デ ソ○○ ペレイラ”。ペレイラは差し詰め梨木さんといったところ。よくある苗字だ。でも、みんな“do(ド)”とか“de(デ)”とか付くのってなに?ちょっとカッコイイ…。中にはレイチ(牛乳)って苗字の子もいて大爆笑。

 

一応、名前NGはクラスで一人のみ。それよりも、人のi-podで勝手に写真を撮り始めるクラスメートに、メイク直しを始める女生徒たち。嫌な予感が…。

「じゃ、写真も載せておいてね」

こ、こいつら…。18歳未満だし、特定の個人を識別できそうな情報はね…。ということにして、クラスメートによるブログジャックは阻止。