その年の冬はとても寒かった。
気温が低かったが為に寒かったわけではないのに
いつも凍えていた。
遠いその場所から届く
日々紡がれる物語が
暖炉の火のように暖かだった。
マッチを擦って現れる火のように。
幻ではない と確かめられたのは
自分とよく似た猫が登場する物語。
きゅぅ と悲鳴にも似た声が出たと思ったら
予想もしない勢いで止め処なく溢れてしまった。
『 大丈夫だよ 』 と言われたような気がした。
真綿のような優しさと
泉が湧き出すような静けさで
疲弊した心を包んでくれたことを
今も変わらず覚えています。