キャッチーなかわいい絵と身の毛のよだつ悪夢のデザインが特徴のゲーム「Binding of isaac」は、結局どういうストーリーなのかが明確に語られない。断片で描写されるが、それもアイザックの妄想なのか現実世界なのか不明である。

ただ直感的に感じられることとして、ループ前提のローグライク形式のゲームであり、なおかつ敵が全員自分によく似ており、選択キャラクターももともとはアイザックの別人格であるということから、舞台がアイザックの終わりなき夢であると考えることができる。

そこで今回はアイテムなどの効果から筆者の気になった要素を抽出し、そこからストーリーの片鱗を分析しよう。

 

・飼い猫のGuppy

 

 

ハエを数匹召喚する「Guppy's Head」、宝箱を召喚する「Guppy's Tail」などのアイテムに登場する猫Guppyだが、アイザックが死んだ時のゲームオーバー画面で、

I LEAVE ALL THAT I OWN TO MY CAT GUPPY(ぼくはもってるこれら全部猫のガッピーにあげる。)

という言葉と共にアイテム欄が表示されるためGuppyはアイザックの飼い猫であることが明らかとなる。

その猫の顔の目が×マークなのはすでに不吉なのだが、確かに、Guppy関連のアイテムに「Dead Cat」というアイテムがあるため飼い猫Guppyは死んでいるのだ

たしかにGuppyのアイテムは、ハエを召喚したり赤いハートをソウルハートに変換したりと、何かと死が絡んでいるように感じられるわけだが、ではなぜ死んだのだろう?

 

一つ考えられるのはGuppyは母に殺されたのではないか、という説である。

まず冒頭のストーリー通り、母はキリスト教の信仰に狂乱してアイザックから持てるものを全て奪って隔離している。

加えて猫は18世紀の頃のヨーロッパ、キリスト教圏において悪魔の存在と見なされており、「猫焼き」などという狂ったブームさえあった。邪悪な存在ということで殺されてもおかしくはない。

 

もう一つ考えられるのは、アイザックがGuppyに生贄に捧げたのではないか、という説である。

Guppyは黒猫ではないが黒い猫ではある。前述の通り黒猫は悪霊や悪魔と交流する存在と見なされており、逆に悪魔を呼ぶ儀式のために生贄に捧げるということもあった。

この説を裏付ける状況証拠は二つあり、まず、Guppyアイテムが黒の宝箱から出てくる点。

また、前述の通りアイザックがゲーム世界である悪夢のような世界で死んだ時に「アイテムをGuppyにあげる」と言ってる点。

アイザックはおそらく悪魔的な何かに関わっており(Delirium撃破エンディングで確認できる)、Guppyになにか関係があるのではないかと疑うことは十分できるのだ。

 

ちなみにGuppyアイテムを3つ以上接触するとアイザックはGuppyに変身する。攻撃が当たると青ハエが召喚されるもので、ダメージ体制のあるHushやUltra Greedに対して恐ろしく強い力を持ったりする最強形態である。

 

 

・The Lambの特殊アンロック

The LambはDark Room側の最終ボスで、適当に動きながら弾幕頼りの奴らとは違って妙に動きに気合いが入っている最終ボスっぽいボスである。

当然ラスボスの一人なのでHard modeで倒すとアンロックがあるのだが、それに加え彼にまつわる特殊なアンロックが非常に多い。

 

・キャラクター「The Lost」アンロック

IsaacでThe Lambを倒した時に手に入れる「Missing Poster」を持って死ぬとアンロック。

 

・キャラクター「The Forgotten」アンロック

The Lambを倒し、所定の条件をクリアしふたたびDark Roomで土を掘り起こすとアンロック。

 

・ビクトリーラップ

Afterbirth†で追加された要素。The Lambを倒すと勝利したアイテムのまま再び1から挑戦できる。

 

・Ace of Diamonds

アイテムをコインに変えるカード。

20分内にThe Lambを撃破。(生贄部屋ワープを使わないと厳しいと思われる。)

 

・Ace of Spades

アイテムを鍵に変えるカード。

ハート、コイン、鍵を拾わずにThe Lambを撃破する。

 

・Afterbirth†の新敵解禁。

The Lambを撃破すると、「ゲートが開かれる」として、敵を召喚するVoid等の新敵が現れる。

 

これに比べThe Chest側のボスである「???」のアンロックは、「3回倒す」と新たなボス解禁、「6回倒す」と新たなボス解禁のみである。

加えて「???」は大変弱いのだがThe Lambはとても強い。これはネタ扱いされるのだがむしろそのゲームバランスをあえて意識してるのではないか?朽ちていく肉体に過ぎぬ「???」は守りに走っていて強くない。これに比べてThe Lambは非常に攻めに入っており、攻撃パターンも入念である。

The Lambは小羊であり一般的にキリスト教のイエスの象徴であり、黙示録では終末を引き起こす存在である。

戦闘に入る時に、「???」同様に眠った姿から始まっている。くわえて、体系も幼児体型である。

アイザックの魂であるThe Lostや骸であるThe Forgottenの解禁条件も彼である。

すなわちアイザックの、邪悪な側面なのでは・・・

 

 

・Greed(強欲)はなぜ首を吊る?

Binding of Isaacは不可解な解釈がいくつかある。例えばなぜCainは隻眼なのか、である。カインの名は聖書のアダムとイブの息子だが、隻眼の演出はない。これについては筆者はホドロフスキーのバウンサーという西部劇を舞台にした小説に登場する「カインの目」というダイアモンドがモデルではないかと思われる。そのダイアモンドを巡って両親が殺された主人公は父の遺言に従い隻眼の用心棒に会いに行く・・・という話だからだ。

同様に謎なのは、中ボス、およびGreed modeの最終ボスで登場する「Greed」たちだ。彼らの仲間にShop Keeperや的のKeeperたちがいるが、どれも首に紐をつけている。

この世界がアイザックの精神世界だとしたら、アイザックの中で強欲と首吊りが結びついているということになる。

 

筆者はGreedはアイザックの父と関連があるのではないかと見ている。
この見立ての根拠は簡単で、The LostとThe Forgottenが「Ultra Greedier」を倒すと「Dad's lost coin」「Dad's Ring」と父のグッズがもらえるからだ。

 

ただしGreedはアイザックであって、アイザックの父を象徴するものではない。

Forgottenのアンロックアイテムに「離婚状」があるが、The Chest後のエンディングでも家を去る写真があるのと同様にアイザックの父はおそらく死んではいない。離婚してどこかにいってしまったということである。

Greedのツイッターアカウントとされるものではしきりに父の名を呼んでいるし、アカウント名がi am isaacs bodyである。

Greed modeのラストの通り、Greed modeをクリアしたIsaacはShop KeeperあるいはGreedになってしまった、ということである。

 

アイザックはおそらく非常に貧乏な状態である。食事アイテムが極めて貧相だったり、色々と汚らしい家だったりでその様子が伺える。(爆弾2つ使って破壊する扉も、綺麗なベッドと汚れたベッドの二種類あり、時間の経過を表していると考えることができる。)

父が去ったということは母子家庭なわけでお金の問題で非常に困っているはずだ。

ここからは想像の域を出ないのだが、「お金が欲しくて死にたい」気持ちの現れがGreedの首吊りなのではないかと予想できる。

母が宗教番組に過度に依存して狂ってしまったのも、そうした苦境の末だとしたら。

 

もしかしたらアイザックの持ち物剥ぎ取られたのも質屋に売るためだったのかもしれない。なにしろアイザックはゲームをしていると思われる描写が随所にある。(ボ●バーマンそっくりのWrathなど)

中ボスの一人Lust(色欲)が明らかに毒に侵されてて性病持ちなのももしかしたら売春ということなのかもしれない。そういえばアイザックはママに女装させられていたがひょっとして・・・。