≪第4章≫3つの生活場面毎の父母両性の使い分け方

 子供の“完全保護”が必要な1歳半を過ぎると、父性による指導も行われるが、実際の子育て場面では、本章で紹介する母性と父性の使い分けをしないと、両性のバランスが崩れてしまい、仮に1歳半までに安定した愛着を形成していても、その後不安定にしてしまう。

 例えば、子育て中の夫婦を対象に行ったある調査によれば、子育てに対する悩みとして、「勉強しない」「言うことを聞かない」「反抗的」「コミュニケーションがほとんどとれない」等が挙げられている。しかし、これらはどれも母性と父性の使い分け方に要因があるものであると考えられる。


◯子育ての全体像

 子育てで考えられる生活場面は①「活動場面」②「不安場面」(問題が軽度な場合Aと重度な場合Bとに分かれる)③「日常場面」の3つ。

 その中で行うべき支援は、「安心7支援」によって子供の気持ちを受容する母性と、「見守り4支援」によって子供に社会的な自立を促す父性のどちらか。



○場面①「活動場面」での支援

 子供が課題に対して熱心だったり熱中したりしながら取り組んでいる「活動場面」(虫取りをしている、お絵描きをしている等)では、子供の活動を見守る父性を施すと更に意欲的に探検行動を行うことができるようになる。(65)

 ありがちな誤解は、熱心・熱中時に余計な援助をしてしまうこと。


○場面②-A  問題が軽度な「不安場面」での支援



「不安場面」にはいるが、それほど問題が深刻ではなく、その場で子供の言動を直したい場面(約束の時間になってもテレビを見ている、「イヤイヤ」をする、スーパーで「あのお菓子買って~」等と駄々をこねる等)では、まず始めに子供の気持ちを受容する母性を働きかける。その後、指導したり子供に任せて見守ったりすることによって社会的自立を促す父性を働きかけることで、子供は「親がまるで自分の傍らにいてくれるような気持ち」(66)になり、「自分の気持ちを理解してくれるこの親の言うことなら聞き入れたい」(67)という気持ちが湧く。

 なお、私の特別支援学級担任の経験から、多忙で受容する時間が無い時は、微笑み穏やかな口調で語りかけながら指導する等、母性と父性を同時に働きかけても対応可能と考えている。

 ありがちな誤解は、子供に問題が起きると直ぐに注意をしてしまうこと。


○場面②–B 問題が重度な「不安場面」での支援



 子供から笑顔が消え深刻な問題を抱えている「不安場面」(登園を渋る、同じ問題行動が繰り返される等)では、社会的自立を促す父性はではなく、子供を受容する母性を施すだけで、多少時間はかかっても子供の中に自力回復力が生まれ根本的な問題の改善に至る。(68)(69)

 ありがちな誤解は、子供に深刻な問題が起きた時に励ましや叱咤激励をしてしまうこと。


○場面③「日常場面」での支援


 不登校や自殺等の心の病を発症させないために、普段リビングルーム等でくつろいでいる「日常場面」では、子供を受容する母性を日常的に働きかけて安心感を与える、交流分析学で言うところの「ストローク(心の栄養)バンク」(70)(71)(72)のように、日常生活の中で「安心7支援」によって”安心感の貯金”をする必要があると考える。(73)

 ありがちな誤解は、「普段は何も支援をする必要はない」と油断してしまうこと。


 発表内容は以上です。

 次回は引用・参考文献の紹介になります。