前回からの続きです。


≪第2章≫子供の二大愛着不全症状とその原因となる子育て

・これ以後の内容は、子供に対する“保護”以外に“指導”も行わなければならない1歳半以後に必要となるものである。

①「回避型」愛着不全

 このタイプの子供は、周囲の人間に対して、関わりを避ける、反発・攻撃する、共感性が低い、自己表現が苦手、面倒事を嫌う等の症状を見せる。(36)(37)成人後には、例えば「関わりを避ける」「自己表現が苦手」「面倒事を嫌う」の症状から、恋愛や結婚に対して消極的になること等が考えられる。

 この親に共通する接し方は、特に仕事の関係から子供の存在が煩わしく感じることがあるために、日頃から「何やってるの!」「うるさい!」「やめなさい!」等の言葉で否定的・拒絶的に接したり(38)(39)、スマホに気を取られる等して子供に対して無関心や放任になったり(40)と、子供に対する親の愛情(子供にとっての安心感)が“いつも不足”することであると考える。(第1章で述べた「脱愛着」に至った子供はこのタイプに当たると考える)


②「不安型」愛着不全

 このタイプの子供は、周囲の評価を気にし過ぎたり、過度に愛情を求めたりする等の依存的な症状を見せる。(41)成人後には、例えばこれらの症状から、パートナーとの間に軋轢が生まれ、恋愛や結婚関係を維持できなくなること等が考えられる。

 この親に共通する接し方は、子供への愛情が盲目的であるために、子供を褒める時と叱る時との基準が気まぐれで一貫性が無かったり、神経質で過干渉をしたり(42)(43)と、子供に対する親の愛情(子供にとっての安心感)が“不規則”になることであると考える。


 両愛着不全症状に陥るのは、第3・4章で述べる。母性と父性の使い分け方がうまくいっていないためである。


≪第3章≫二大愛着不全症状を改善するための父母両性の働きを表したそれぞれの支援方法

①  母性の働き「安心7支援」の提案

 私は、先の親の愛情不足による「回避型」愛着不全に陥らないためには、子供の「安全基地」となって愛着(愛の絆)を結ぶ働きが必要になると考えたうえで、その働きを母性と捉え(44)(45)(46)、更にその具体的な支援の方法について複数の専門家の指摘(47)(48)(49)(50)(51)(52)(53)に共通したものを選んで「安心7支援」として次のように定めた。

「子供とスキンシップを図る」

「子供をきちんと見る」

「子供に微笑む」

「子供の話を最後まで否定せずに聞き共感する」

「穏やかな口調で話しかける」

「子供なりの良さや小さな伸びがあった時を逃さずそれを褒める」

「以上の中でやると決めたものはいつも心がける」

これらは誰でも意識次第でできる支援であると同時に、子供とスキンシップをとったり愛情を伝えあったりするこれらのような支援を行うことによって、親の中に「親性」(子供に愛情を注ごうという気持ち)が湧いてくることが期待される。(54)

 また、全ての支援を行わないと効果が現れないというわけではなく、親御さんが「自分にもできそう」と思ったものを選んで実践しても良い。

 なお、母性が果たす役割については、「『安心7支援』で子供の求めに応じその気持ちを受容することによって、子供に安心感を与えること」と捉える。(45)(46)


②  父性の働き「見守り4支援」の提案

 先の親の愛情過多による「不安型」愛着不全に陥らないためには、特に“子供を見守る働き”が必要になると考えたうえで、その働きを父性と捉え(55)(56)更にその具体的な支援の方法について、複数の専門家の指摘(57)(58)(59)(60)を基に「見守り4支援」として次のように定めた。

「(まず)子供に任せるかどうかを決める」

「(その後)子供に任せると決めた活動中は子供を微笑みながら見守る」

「(ただし)子供がSOSを求めてきた時、または躾を含み指導が必要な時には迷わず教える」

「(最後に)子供が上手にできた時には子供を褒める」

 なお、これらは時系列順になっているため、「安心7支援」のように、どれかの支援を選んでも良いというものではなく、出来るだけどれも行ってほしいものである。

 なお、父性が果たす役割については、「『見守り4支援』によって子供との間に適度な距離をおいて試行錯誤する子供の様子を見守ったり適宜指導したりすることによって、社会的に自立できる力を養うこと」と捉える。(55)(56)(61)


 なお、父性が子供を社会的に自立させるうえでの遊び役や躾役を担うのに対して、母性は子供が自立を果たす過程で不安感に襲われた際の「安全基地」としての役割を担う。つまり「子育ては母親の役目」という考えは誤りである。


 ところで、愛着不全のそもそもの始まりは、戦後の高度経済成長期の核家族化の中で父親が仕事のために家庭から離れて母親だけに子育てを押し付けた、現在でいう「ワンオペ育児」が初めて行われ、母親が安定した子育てができなくなったこととされている。(62)

 また1964年のオリンピック以降普及したテレビに目を奪われる親子(63)や、女性の社会進出に伴って保育所を利用する母親(64)が現れたことで、何れも「安心7支援」のような親子間の愛着形成行為が減少したために、特に「回避型」愛着不全に陥ったと指摘されている。

 もし今後も、これらと同様の育児が行われるようならば、歴史は必ず繰り返されるに違いない。


 次回「第4章(最終章) 3つの生活場面ごとの父母両性の使い分け方」に続く。