今回は、前回までに述べた自閉症スペクトラム障害と愛着スペクトラム障害のそれぞれの特性を踏まえたうえで、前々回に紹介した各状況下での望ましい支援の仕方について紹介します。



 両症状の特性を理解したうえで、改めて子供がこのように騒いだ時には「急に聞いたからびっくりしたんだね。これからは朝の会で教えるね」等のように「変化の無い同じパターンに対する固執」という困難特性に配慮して、先ずは、「急に変わってびっくりした」というその子の気持ちに共感してあげることが大切です。大人は往々にして「注意して子供の問題を直そう」と思っている場合が多いように思いますが、実は全く逆なのです。
 教師が「こちらの都合を押し付けよう」と思っていると、その教師の「困った子だ」という意識が厳しい表情となって表れ、それに対して子供は拒否反応を示します。逆に「この子はどんなことで困っているのだろう?」「このことが嫌なのかな?」「このことが嫌なんだね」等と考えると、その時の教師の表情は自然と穏やかなものになります。子供はその表情を見て初めて、教師が自分の気持ちに心から寄り添おうとしていることを察知し「自分の気持ちを分かってくれる、この先生の言うことを聞こう」と思います。




 同様に子供がこう騒いだ時には「あなたは一人の方が安心するかもしれないね」等のように「他者との関わりを回避する」という特性に配慮して、「一人の方が安心する」というその子の気持ちに共感してあげることが大切です。



 子供がこう騒いだ時には「感じやすいあなたにとっては『叩かれた』と感じたんだね」等のように「触覚過敏」の特性に配慮して、先ずは「触られたことにビックリした」という気持ちに共感することが大切です。



 更に子供がこう騒いだ時には「他者の気持ちに配慮する共感性が不足している」特性に配慮するのですが、明らかに間違っていることに対しては教師が共感することはできないので、先ずは元々持っている反発心(不安感)を更に大きくしないように穏やかな口調で優しく教えることが大切です。例えば「友達の顔や体のことを悪く言うのは、その人が嫌な気持ちになるから止めようね」等のように優しく伝えます。


 なお、これまでのように子供の特性を“受容”した後は、子供の実態を見て、問題がそれほど深刻ではなく子供が受け入れることができそうな場合や緊急を要する場合には「でも…しようね」等と“指導”を加えます。一方で、問題が深刻だと思われる場合は“指導”は行いませんが、教師の“受容”によって子供の気持ちは以前よりも柔らかくなり、次回には言動が改善していることが十分期待できます。