【今回の記事】

児童青年精神科医佐々木正美著「この子はこの子のままでいいと思える本」(主婦の友社)より


【記事の概要】

《相談》

 我が家の年少の娘は友達の家に遊びに行った時、その家のおもちゃを自分勝手に使ってしまいます。最近では知育系ワークブックの迷路やシール遊びまで娘が1人でやってしまい使えなくしてしまうこともありました。遊びに行く前に「お友達の大事な物は勝手に使わないようにしようね」と約束をするのですが、友達の家に着くとすっかり忘れてしまうようです。私だったらとても嫌な気持ちになります。友達と仲良く遊べるようになるにはどうしたらいいでしょうか。

《佐々木氏からの助言》

 マナーを教えるための一番良い方法は、お母さんがその場にいて「〇〇ちゃんブロックで遊んでいい?」(「いいよ」と言われたら)「そう、ありがとうね」と我が子の言葉を代弁してあげることです。お子さんはそれを見聞きしながら「言葉」を覚えるとともに、相手に配慮する「心」を学びます。「このように振る舞ってほしい」と思う行動は、お母さんがやってみせる、それが一番自然で簡単で伝わりやすいしつけの方法だと思います。


【感想】

 佐々木氏は“対人上のマナー”を覚えさせる際に「親がやって見せる」という支援方法が重要であると指摘しています。

 いくら言葉で教えても、子供にとってはイメージすることが難しいので、五感刺激の中の約8割をも占めると言われる視覚刺激を活用して教えることが子供にとっては最も分かりやすいですし、それが学ぶ際の“安心感”にも繋がります。一方で言葉で指導しようとすると、ややもすると「お友達のものを勝手に使ってはいけません」等という否定形になってしまい、それが子供にとってはプレッシャーになったり反発心を抱いたりして、結果的にマナーも身に付き難くなります。


 実はこの「やって見せて教える」と言う方法は、以前投稿した「まとめプレゼンテーション13」

2枚目のスライドで紹介した山本五十六式の「やってみせ、やらせてみせて、ほめてやらねば人は動かじ」と言う支援です。下記がそのスライドです。


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 上記スライド下部の水色の表にも整理していますが、これは、「やり方がわからず不安になっている」という問題を抱える「不安場面」にいる子供に、始めにやり方を見せて安心感を与え母性ながら指導し、その後で、やり方が分かってできるようになった子供に任せてやらせる(父性)という支援です。これまで度々登場している下記「子育ての全体像」スライドで言うと「②ーA」パターンの“仲間”のケース、つまり青囲みでマークした灰色箱型吹き出しの「生活技能支援(やらせて見せる母性→やらせる父性)」になります。


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 佐々木氏は「やって見せる」ことを強調していますが、この「②ーA」式の通りに覚えておくと、見せた後に、父性の働きによって“子供にやらせてみる”ということをセットにして支援することになります。手本を見せるだけよりは、その直後に子供にもやらせてみる方が身に付くことは言うまでもありませんし、さらに山本五十六式のように、うまくできたら褒めることによってその効果は一層上がるでしょう。もしも、助言のように友達の家に母親が同席できるなら、母親が子供の耳元でそっと「『これを使ってもいい?』と聞いてごらん」と教えて、言わせ、できたら褒めるというふうにすればいいと思います。


 ただし現実的には、母親が友達の家に同席できることの方が稀だと思いますし、こういう躾上のスキルは、一朝一夕に、やって見せてやらせて褒めればそれで身に付くというものではありません。

 そこで大切になるのは、普段の家庭内での親の言動です。親が自らテレビのチャンネル変えてもいい?」「悪いけどお醤油とってくれる?」等と相手に伺いを立てたり、それに対して相手に「いいよ」「どうぞ」と応えてもらったらありがとう」とお礼を言ったりするといった具体的な姿手本として視覚的に示すです同様に「ごめんなさい」も親が手本となります)。そのようにすることで、初めて子供が友達との遊びの中で自然と言動に移せるようになるのだと思います。

「子供は親の背中を見て育つ」とは最高の視覚支援なのですね。