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・ここからは「場面④」として、約束の時間になってもテレビを見ている、“イヤイヤ”をする、部屋の片付けをしない、スーパーで走ったり騒いだりする等、その場で言動を直してほしい子供に対する支援について。このスライドでは、その基になる考え方を紹介します。
・なお、この「場面④」は、「場面①」と同様に問題を抱えた「不安場面」にはいるのですが、登園を渋る等の「場面①」ほど深刻ではないケースという位置づけです。
・ある専門家が、(赤枠内)子供を健全に育てるためには、母性と同じ意味に当たる「養護」の働きは、父性と同じ意味に当たる「教育」の働きよりも先に子供に施さなければならないと指摘しています。このことから、特に問題を抱えているとなれば、本プレゼンで取り上げている母性も、父性より先に子供に施さなければならないことが分かります。
では、なぜ始めに母性を働きかけるのでしょうか?その理由についてある専門家は、「自分の気持ちを受け止めてもらったことによって、保育者がまるで自分の傍らにいる等の感じになり、それが子供の心を前向きに動かす」、また別の専門家は「子供は『自分の気持ちを理解してくれる、この親の言うことを聞きたい』という気持ちになる」とそれぞれ指摘しています。
・子供が、時間になってもまだテレビを見ていたり、「イヤイヤ」をしたりするのは、ある意味日常茶飯事ですから、これらの考えは子育てをするうえでこの上なく重要になります。




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・「場面④」の具体事例の一つ目を紹介します。ここでするお話は、普段のお子さんとの生活の中で誰もが陥りがちな最大の“落とし穴”とも言える非常に大切な内容です。
・例えば、約束の時間を過ぎてもテレビを見ている子供がいる、というケース。
・先ほどの専門家の指摘によれば、始めに子供に働きかけるべきなのは、微笑みながら「面白そうな番組ね」等と穏やかに話しかけ子供の気持ちを受容する母性の働きだったでしょうか、それとも、「早くテレビを消しなさい」等と子供の社会的自立を願う、つまり子供を指導する父性の働きだったでしょうか。
・この場合、始めに命令的な指導をしてしまうと、子供の反発心を招いてしまう恐れがあるので好ましくありません。ここでは始めに「面白そうな番組ね」等と母性によって子供の気持ちを受容してから、その後で「でも、もう約束の時間を過ぎているから消そうね」等と父性による指導の言葉を伝えます
・その父性の働きを施す際、「約束の時間を過ぎているから」等と “理由”を示すとともに、「テレビを消そうね」等と“勧誘形”で穏やかに伝えると、一層子供に伝わりやすくなります(ただし、始めに子供の気持ちを受容する言葉をかけているだけで、その後の指導の言葉は自ずと柔らかな言い方になるもの)。すると子供は「今の自分の楽しい気持ちを分かってもらえた」と受け止め、「テレビを消そう」と思うようになります。
・つまり、この場合のポイントは、「まず始めに子供の気持ちに共感してから、その後で、理由を伴う穏やかな口調で指導の言葉を投げかける」ことです。
・なお、毎日の多忙な生活の中では、好ましくない言動をとる子供の気持ちにいつも共感できるとは限りません。その場合私は、「微笑みながら指導する」支援、つまり、子供がテレビを見ている場面に遭遇したら、共感の言葉はかけずダイレクトに、但し微笑みながら穏やかな口調で、「もう時間過ぎているから消そうね」と指導する支援をお勧めします。この「微笑む」と「穏やかに話す」は、母性の働きを表す「安心7支援」によるものであり、私の経験上、たとえ時間差で母性を先に施さなくても、父性の「指導」と同時に施すことで、感覚が過敏な子供に対してでも不安感を与えずに指導することは十分可能です。
・先程「落とし穴」と言ったのは、子供のこのような不適切な態度に遭遇した時に、真っ先に親御さんがとりがちな行動と言えば、父性による“指導”の方だと思うからです。しかし、たとえどんなに相応しくない行動をしていても、「ワクワクする」「ドキドキする」等、その時々の子供の気持ちというものがあります。その気持ちを受け止めず、強制的に止めさせてしまうのは、それこそ「回避型」の愛着不全にしてしまう典型例として紹介した「親による子供の否定・支配」に当たるものです。繰り返しになりますが、「子供は『自分の気持ちを理解して育ててくれる親の言うことなら聞こう』と思っている」(児童青年精神科医の佐々木正美氏)ことを忘れてはいけません。
なお、仮にその後でも子供の態度が改められなかったという場合には、今度は真剣な表情で(怒る必要はなし)「もう一度言うよ。約束の時間だからテレビを消そうね」と再度指導をしても構いません。“一度は自分の気持ちを受け止めてもらい、指導も受けている”という状況下では、子供は二度目の指導を納得して受け入れることができますし、普段は「安心7支援」の「微笑む」を意識している親御さんが、二度目は毅然とした表情で指導をした場合、子供は常に安心感を求めているので、いつもの穏やかな親御さんに戻ってほしいと思い行動を改めるはずです。逆に、親御さんが普段から叱ることが多いような場合には、二度目にはもっと強く叱らないと子供には効かなくなります。そうなれば、子供は親に対する「回避型」の愛着不全に陥る可能性が高くなるでしょう。
・とにかく大事なことは、一度目は母性を忘れず子供の気持ちを受け止めてから指導するということです。受け止めれば、「ああ、そのくらいなら大人でもあるんだよ」等と教えてあげることもできますが、始めから自分の気持ちを全否定してしまうと、子供は「約束したことは何が何でも守らないとダメなんだ。気持ちのゆるみは許されないんだ」等と思い、自分の中の“弱さ”や“本音”を許さず完璧を目指してしまう子供になってしまうかもしれません。仮にそうなった場合、子供は必ずどこかで爆発します。


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・同様に「場面④」として別の事例を紹介します。この場合も、「不安場面」にはいるが、それ程深刻ではない、例えば、「この服着たくない!」とわがままを言うイヤイヤ期の子供がいるケースと捉えます。
・先の専門家の指摘によれば、始めに子供に働きかけるべきなのは、微笑みながら「あなたが着たいのはこれではないんだね」等と穏やかに話しかけ子供の気持ちに共感する母性の働きだったでしょうか、それとも「わがままを言うんじゃありません」等と子供の社会的自立を願う、つまり子供を指導する父性の働きだったでしょうか?
・この場合も、始めに指導、つまりお説教からしてしまうと子供の反発心を招いてしまうことが多いです。ここでは始めに母性によって子供の気持ちを受容してから、その後で「じゃあ、こっちとこっちではどっちがいい?」等と、子供に任せて自分で決めさせる父性の働きを加えます。すると、子供は「自分で決めたい気持ちを分かってもらえた」と受け止め、「この二つから選ぼう」と考えやすくなります。
・この場合のポイントは、「まず始めに子供の気持ちに共感してから、その後で、子供に任せて欲求を満たす支援をする」ことです。
・因みに「イヤイヤ期」に見られる“わがまま行動”の理由は二つあると言われています。それは、①「自分が、親とは違う独自の意思を持てるようになったことを親に伝えたいため
②「今まで親にやってもらっていたことを自分でやることで自分の能力を試したいため
 先のポイントとして紹介した、「共感」の後に行う「子供に任せて欲求を満たす支援」について具体的に補足すると、「イヤイヤ」をする気持ち(上記①と②)に配慮した具体的な支援として、それぞれ以下が考えられます。
①→「選択肢を示して自分で決めさせる
②→「自分でやらせてみて『すごい!』と褒めてやる
何れも、「子供の意思を尊重して自分で決めさせる」「自分でやらせてみる」という子供に任せる父性の働きによるものです。