【今回の記事】
[NHK「すくすく子育て」赤ちゃんとのコミュニケーション]
《専門家》
大豆生田啓友(玉川大学教授/乳幼児教育学)
渡邊暢子(元保育士)
【記事の概要】
《相談》1歳1か月の息子は、おもちゃで遊ぶのが大好きです。気になるものを見つけては、一人で黙々と遊んでいます。ただ、そんな時に声をかけてもあまり反応がありません。例えば、息子が絵本を読んでいるとき。「本読もうか? 自分で読む? ここが好き?」といった声かけをしますが、ほとんど反応がなかったり、背を向けたりすることもあります。声のかけ方が悪いのでしょうか。このままで大丈夫なのか心配です。
《助言》親は、いつも赤ちゃんのそばにいて働きかけなければならない、たくさんだっこをしないと愛着ができない、と思いがちです。ですが、赤ちゃん自身が探索しながら学んでいるときは、見守ることも大事です。》
【感想】
「赤ちゃん自身が探索しながら学んでいるときは、見守ることも大事」との助言。これは、本ブログで提案している「子どもの自立に必要な活動、例えば、手伝い、公共交通機関の利用、買い物の支払い等や、子供が熱中している活動、例えば、遊び、趣味等、は実態に合わせて子供に任せる」という父性の働き(以下記事参照)
に当たるものです。
また、5人に1人いるとされる感覚過敏のHSCにとっては、大人があやす行為が楽しいと感じることばかりではありません。そのことについて、HSCの提唱者であるアーロン博士は次のように述べています。
「例えば、母親はいつも息子の前で『いないいないばあ』をしていて本人は過剰に興奮して不快感を覚えているのに、母親だけがそれに気づいていないケースがあります。その時子供は母親と目を合わせないようにし、顔を背けることでその場をしのぐのです。」
今回の記事でも、助言に当たったベテラン保育士さんが、赤ちゃんが喜ぶあやし方として、赤ちゃんの目前で親が唇をふるわせて「ブルブルブル」と鳴らして「変な音」を出してあげるという方法が紹介されていました。奇異な情報に喜ぶ子供がいる一方で、抵抗感を覚える子供もいるということを、HSCという概念が知られるようになった今となっては認識しなければならないと思います。特に、今回の相談のように、赤ちゃんが背を向けても「声の掛け方がよくない」としてあやし続けるのは、これまでの育児に見られた誤解ではないでしょうか。
因みに、先のアーロン博士は、HSCが示すことが多い“典型的な不快のサイン”として、上記以外に、「泣く」「うつむく」「目をきつく閉じる」「虚空を見つめる」「苦しそうな表情を浮かべる」等を挙げています。
また、アーロン博士は、HSCに限らず一般の子供が泣き止まないときの親の接し方として、次のように指摘しています。
「子供が泣き止まない時親がするべき事は泣くのをやめさせることではなく、見守り、好きなだけ泣かせておくことです。ゆったりとした椅子に座って子供を抱き、その顔を見つめましょう。子供が顔を背けるなら、優しく撫で安心させます。体を揺さぶったりせず、まず大きく深呼吸して、リラックスした気持ちで『大好きだよ。大丈夫だよ。泣いてもいいよ』と子供思う気持ちを伝えましょう。」
子供が泣き止まない時、多くの親は、子供あやして喜ばせようとするかもしれません。しかし博士が指摘するのは、「子供を抱く」「顔を見つめる」「優しく撫でて安心させる」「子供思う気持ちを言葉で伝える」等の正に「安心7支援」(下記記事参照)
による「子供を安心させる支援」です。それこそがHSCにも通用する赤ちゃんとのコミュニケーションの基本ではないでしょうか。
なお、赤ちゃんは自分の身に迫る危険を母親に追い払ってもらうために泣いてSOSを出しているのですから、アーロン博士が言う「見守り好きなだけ泣かせておく」という対応は、空腹やお漏らし等の赤ちゃんが泣いている物理的理由に対処したうえでのことであることは言うまでもありません。