【今回の記事】
《助言者》
坂上裕子(青山学院大学 教授/発達心理学)
玉井邦夫(大正大学 心理社会学部 臨床心理学科 教授/臨床心理学)

【記事の概要】

Q1. どんなときに叱ればいいの? 伝わりやすい叱り方は?

A. 1歳のころは「なんで投げるの?」と注意しても、まだ言葉の意味を理解して行動することが難しいでしょう。叱るよりも危険な行為を止めることを(一番に)考えてください。例えば、自分がケガをしたり、誰かを傷つけたり、ものが壊れるような行為です。この時期は、それぐらいの線引きで十分だと思います。

 また、困ることの中には、させないように対策できることもあります。例えば、開けられて困るものには鍵をつける、触られて困るものはしまっておくなど、あらかじめ叱らないで済む環境を作ることも大切です。


Q2. 子どもは何歳でどれくらいのことがわかるようになるのでしょうか。

A.

〜10か月以降〜

 10か月を過ぎると、パパやママの表情や身ぶりに、何か意味があるようだとわかってきます。でも、叱られる理由までは分からないので、表情や雰囲気などで「いけない」ということを伝えます。

1歳後半以降

 1歳後半以降は、頭の中でイメージする力が育ってきます。「コップが倒れて水がこぼれた」など、目の前で起こった出来事について、物事のつながりがわかってきます。

 叱るときは、「その時・その場で・そのつど」がポイントです。短くわかりやすい言葉を使って、何がいけないのか、どうしてほしいかを伝えます。

2歳後半以降

 2歳後半以降、生活や遊びの中には必要なルールがあることを知り、自分の中に取り入れていきます。また、自分の気持ちに気づくのもこのころからです。

 叱る時は、子どもの気持ちを聞きつつ、親の気持ちや生活の中のルールを、わかりやすいことばで具体的に伝えます

〜4歳半〜6歳以降〜

 早くて4歳半のころから、相手の立場になって考える力が育ってきます。さらに、時間の感覚がついてくると、自分の行動を振り返ることができるようになります。

 叱る時は、ダメというだけでなく、「してほしいこと」「してはいけないこと」の理由を、具体的に説明したり、子どもと一緒に考えたりするようにしましょう。


Q3. 困った行動をやめさせたい。どんな言葉で叱ればいい?

A. お子さんの困った行動は、親を求めている気持ちの裏返しかもしれません。その場合は、叱っても逆効果になります。

 子どもの困った行動への対処は、その行動を「やめなさい」と叱るだけではなく、他の行動をさせるほうがいいという考えもあります。例えば、下の子をみている時に上の子が困った行動をしたら、「さみしかったね。今度は〇〇を手伝ってね」と言ってあげるほうがいいでしょう。


Q4. 厳しく叱られていないと、打たれ弱くなる?

A. 親として、どんなに叱られても平気でいられる子になって欲しいわけではないはずです。叱らなくてもいい子になってほしいのではないでしょうか。その意味では、叱られ強くなるようにと考えるのは、本末転倒になるのではないかと感じます。

 子どもは、叱られた後に「何でだろう」と考えることで、同じ過ちをしないようになります。親も、自分で考えて、自分で判断して行動できるようになってほしいはずです。しかし、叱られ過ぎると、もう考えなくなってしまい、逆効果になることがあります。


Q5. 叱っているのに子どもが真剣に聞いてくれない!

A. (相談事例の中で)子供が親の顔を叩いたときに、叩いた顔を「よしよし」と言って冗談のようにさすってくれるのは「修復行動」といわれるものです。自分が傷つけたり、壊したり、破ってしまったことを修復しようとするもので、罪悪感からくる行動です。お母さんが好き、楽しい雰囲気を守りたい、何とかしなきゃ、と思ったのではないでしょうか。そんな気持ちの裏返しで、ふざけた謝り方になっているのかもしれません。このケースでは「ごめんなさい」を求めるより、「たたくなら一緒に遊べない」と伝えるほうがよいでしょう。(親が言わせたいと願っている)「ごめんなさい」という言葉は、そこで話を終わらせる呪文ではなく、悪いと思ったら、どういう行動をとればいいのか考えさせるための入口です。子どもと一緒にどう取り組めるかが大事になります。

 また、親は伝えているつもりだけど、子どもが分かっていないこともあります。うなずいているだけで、本当は分かっていないような状態です。例えば、子どもに「カーテンを閉めて」と言っても、子どもが「カーテンを閉める」ことの意味をわかっていない場合は子供は親の言う通りにできません。子どもの発達段階に比べて、親の要求水準が高い場合があるようです。


【感想】

(長くなるので明日お話しします)