【今回の記事】

《子どもの「お腹が痛い」を疑わないで!親が取るべき態度は…【井桁容子先生の「子どもの不安」に寄り添う育児】》(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200911-00010002-kufura-life)


【記事の概要】

サイン1嫌いな食べ物が出てきた時や園に行く前にお腹や頭が痛くなる

「お母さんやお父さんが、自分がお腹を痛がっていることを心配して、治ったらほっとしてよかった~と言えば、『ちゃんとぼくのことを信じて心配してくれている!安心して、頑張る気持ちになれるし、困ったことがあったら助けてもらえると確信できるので落ち着きます。逆に、(親が子どもを)疑っていると、子どもは分かってもらえていない思いを一人で抱えて、更にいろいろなところが痛くなってしまったりします。これは、仮病ではなく、本当に痛いんです」(専門家)



サイン2きょうだい喧嘩が激しくなる。園や預け先で乱暴な行動をする

「分かってもらえない気持ちを大人に向けられない分、身近な人に向けてしまうということがありますね。」「『何かすっきりしたいことがあるんだね~。二人で散歩に行こうか』と行動を否定するのではなく、温かい心でていねいに接するようにしてあげると、不安やストレスがスーッと抜けていきます。」「『お花が綺麗だね~、空って広いね~』なんて言いながら、集団から離れて子どもと気持ちのいい時間を過ごすと、『ママがね……』『パパがね……』と不安に思っていたことをぽろっと話してくれたりするんですよ」(専門家)

「周りの大人は、子どもが乱暴な行動をとる時は、それを困った行動と捉えて怒ったり抑えようとするよりも、子どもが何かを伝えたい表現だと受け止めることが大切です。「何をしたかったの?」「何か困ったことがある?」と尋ねたりしながら、子どもの気持ちを分かろうとすることを繰り返すことで、子どもは暴れなくてもわかってもらえると安心し、その大人を信用するようになります。」(専門家)


【感想】

「サイン1」の腹痛については、親御さんの中には「この症状は嘘ではないか?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。仮にそうだとしても、嘘だと言う証拠を親が把握していない段階で、親が「本当に痛いのか」と自分を疑ってきた時に、子どもはどう思うでしょうか。「親は自分を信じてくれなかった」と分かった時の失望感は、親子間の愛着(愛の絆)に傷をつけることでしょう。

 つまり、嘘かどうかがわからない段階であれば、いつも嘘をつく様子が見られない限り、原則子どもの言うことを信じてあげるべきだと私は思います。仮に子どもの中では嘘を隠していたとしても、親がそれを信じてくれたことに対して「騙して悪いことをしたなぁ」と後味の悪い思いをするものです。「この次は、こんなことはやめよう」と思っていることと思います。また、その後で実は嘘だったと言うことが明らかになることもあります。叱るのはその時でも充分遅くはありません。

 また、“嘘の腹痛”を訴えた場合でも、多くの場合は、子どもの中に何らかの不安要素があるために嘘をついているものです。何も不安要素のない時に嘘をつく子どもはいません。精神科医の岡田氏は「嘘をつくと言う行動は不安定な愛着に伴いやすい典型的な問題」(2016)と指摘しています。嘘をついたという表面上の問題よりも、その子が内面に抱えている親子感の絆の問題を心配してあげるべきだと思います。


 また「サイン2」では、「分かってもらえない気持ちを大人(親が)に向けられない分、身近な人に向けてしまう」との指摘がされています。いじめは、加害者が溜めたストレスを被害者に対して発散する行為」と国立教育政策研究所の滝満氏が指摘していますが、正にこの指摘がそれにあたるものだと思います。「子どもが乱暴な行動をとる時は、それを困った行動と捉えて怒ったり抑えようとするよりも、子どもが何かを伝えたい表現だと受け止めることが大切」との指摘の通り、その加害行動の背景にあるストレスの原因を考えてあげる方がずっと大切でしょう。


 因みに「子どもが乱暴な行動をとる時」と言うのは、下記中の「①充電場面」の「抵抗」や「攻撃」に当たるものです。

その場合に必要になる支援は子どもを受容する「安心7支援」等による母性であり、叱責ではありません。

 なお、先の「嘘をつく」という行為も「①充電場面」の「抵抗」の一種と捉えた方が良いのではないでしょうか。精神科医の岡田氏が「子供の問題行動や症状は、不安定な愛着から生じているのであり、そこが変わるかどうかが改善を決定する」(岡田2016)と指摘しているように、結局は愛着を安定させるための「安心7支援」のような母性の働きによって愛情エネルギーを充電する支援が必要になるのです。


 実は腹痛以外にも、もっと注意が必要な症状があります。それが、思春期の中高生の約1割が発症すると言われている起立性調節障害です。これは、自律神経の調節がうまくできず、睡眠リズムや血圧などに影響を及ぼし朝起きられなくなるもので、この場合も、親は「怠けているだけ」という誤解をし力ずくで登校させてしまうことが多いようです。

 因みに、不登校の要因として一番多いのが「家庭に係る状況」とされています。思春期の中高生の約1割が発症していて、多くの親が同様の接し方をしているとすればこの調査結果も納得できます。不登校に与える影響は、障害の症状そのものよりも、親は自分の体調不良を信じてくれないという事実の方が遥かに大きいと言えるでしょう。