【今回の記事】
【記事の概要】
子どものメンタルに関して「困った」と感じたエピソードについて聞くと同時に、悩みの対策として日ごろどのような取り組みをしているか、その効果(自身の感覚による5段階評価→5:非常に効果があった/4:まあまあ効果があった/3:何ともいえない/2:あまり効果がなかった/1:まったく効果がなかった)を回答してもらいました。
【未就学の子どもに関する悩み】
①保育園で先生に叱られた時、とても落ち込み、保育園に行きたくないと言い出して、それが2週間ほど続いた(40歳/女性/子どもは年中)
→どんな対策をした?肯定的な声がけ、注意するときはその場で分かりやすく、必要あれば保育園にも相談
→効果は?4:まあまああった
②旅行や運動会などの前は、必ず38度台のしっかりとした熱を出す。緊張やワクワクに弱い。バイオリンの習い事の初回前にも、熱を出す状況です(36歳/女性/子どもは年中)
→どんな対策をした?親子でその性質のことをネタにして、笑い飛ばす。旅行することは前日にしか伝えない(子ども自身も了承しています)
→効果は?4:まあまああった
③叱られると戸外でも大声で泣き叫び、じだんだを踏み、「やだやだやだやだ」を繰り返して何も耳に入らない(36歳/女性/子どもは年少と年長、悩みは年長の子どもに対して)
→どんな対策をした?叱るとき、問いかけ調にして気持ちを聞く、事前に約束、落ち着いたときに話をする等
→効果は?2:あまりなかった
【小学生の子どもに関する悩み】
④学校で嫌なことがあったり、運動会の練習等で疲れていたりすると、帰って来てきょうだいにストレスをぶつけたり、夜になって親子げんかになったりすることが多々あり、次の日はすぐに学校を休むと言い出す(37歳/女性/子どもは年長、小5、中1以上、悩みは小5と中1以上の子どもに対して)
→どんな対策をした?以前は筋の通らないことに対して都度指摘していたが、それだとすぐに言い合いになるので、多少言い分が間違っていると思っても一度話を受け止めるようにした
→効果は?3:何ともいえない
⑤母親と一緒でなければ登校しない。別れ際に泣く(44歳/女性/子どもは小1)
→どんな対策をした?先生との情報共有。親がうろたえずに笑顔で別れる。本人の気持ちを否定しない
→効果は?3:何ともいえない
⑥今年の4月に小学校に入学し、環境が変化し、学校へ行きたくないと言う毎日。あまりにひどく嫌がる日は、遅刻や欠席する日も。新しいお友達が話しかけてくれて、仲良くなるチャンスがあっても聞こえないふりや下を向いて小さな声で返事をする。もともと環境に慣れるのに時間がかかる。過度の人見知りで、慣れない場での母子分離に対しとても不安を感じている様子(33歳/女性/子どもは年少と小1、悩みは小1の子どもに対して)
→どんな対策をした?落ち着いているときに本人の気持ちを聞き、親子で話をするようにする
→効果は?3:何ともいえない
⑦不登校の直接のきっかけとなったのは、集団登下校の際にトラブルがあり、先生から自分だけが叱られ納得できなかったことでした。それによって、今までため込んできた心の中のものが一気に噴出したような感じがします。特に厳しい父親に対する反抗心が出てきました。理由はそれだけでもなく、父親がなるべく叱らず子どもに寄り添うように態度を変えても、週に1、2回は登校できません(42歳/女性/子どもは小5)
→どんな対策をした?自分で何時に何をやるか決めさせる。なるべく冷静に声をかける。声をかけてダメなときはいったん引いて少し時間を置いてから再度声をかける。まず子どもの興味のある話をしてから本題に入る
→効果は?3:何ともいえない
【感想】
以下に、各事例毎に私なりの対応の仕方をお話しします(各親御さんの対応についてのコメントはしません)。
①保育園で先生に叱られて保育園に行きたくないと言い出した
→子どもはどの子も先生のことが好きです。その先生に叱られたことで「自分は嫌われた」と思ってしまったとも考えられます。「叱るのはその子どもに良くなってもらいたいから」等と、その誤解を解いてやると効果的かも知れません。
②緊張やワクワクに弱く、旅行や運動会等の前は、必ず38度台の熱を出す
→イベントの中でどんな困った事が起きるか心配で緊張が増すことも一因だと考えられます。つまり、その不安を取り除いてやることが必要だと思います。
実例として「運動会の開会式中に、トイレに行きたくなったらどうしよう?」と言う緊張感から登校しぶりになった女の子がいました。特別支援担当だった私はその子の支援に加わり、トイレに行きたくなった時の対処の仕方を具体的に教えたところ、当日まで休まず通い、本番も打ち合わせ通りに行動することが出来ました。具体的な見通しを持てたことが良かったと思います。
子どもの特性を知っている親御さんが、イベントが迫ってきたら、不安感が高まる前に、支援することが大切だと思います。
一方で心配事があるわけではなく「ワクワク」で発熱する場合は、その特性は変えられるものではないので、「明日のことがとても楽しみなんだね」と本人の気持ちに共感してありのままを受け止めてあげたいものです。「大丈夫だよ」と言ってハグして既に起きている不安感を軽減してやりたいものです。逆に「そんなことくらいで」的な否定は極力避けるべきです。
③叱られると戸外でも大声で泣き叫び、じだんだを踏む
→叱られることによるショックが余程強いようです。叱り方が強いか、叱られる側が感覚過敏か、どちらかだと考えられますが「何も耳に入らない」ことからすると感覚過敏ではないでしょうか。
親が叱ると言うことは、子どもが問題を抱えている状況にあると言うことです。そう言う場合は子ども自身そのことを自覚して不安感が増しているはずです。
そこで指導から入るのではなく、先ずは共感をすることで安心感を増し、指導はその後で穏やかにすると良いと思います。
④学校で嫌なことがあったり、運動会の練習等で疲れていたりすると、帰って来て兄弟にストレスをぶつける
→嫌だった気持ちを自分の中で受け止めきれないのだと思います。大人でもそうですが、自分の嫌な気持ちを誰かに聞いてもらうと気持ちが楽になります。
そこで、先ずは話を聞いてあげて、その気持ちに共感し、その後で兄弟に当たってしまったことを指導すると良いと思います。話を聞いた時に「嫌だったね」とハグをしてやると、ストレスは一層軽減するでしょう。
⑤母親と一緒でなければ登校しない。別れ際に泣く
→親が目の前にいなくても、親のイメージを子どもが自分の意識の中に呼び起こすことができるようになる「養育者の内在化」が未発達で、その基盤となる幼少時の愛着(親子間の愛の絆)が不十分であったことが考えられます。
今夜からでも、スキンシップを中心に「安心7支援」を意図的に取り入れ、親子間の愛着を修復しましょう。もちろん一晩のうちに修復できないこともあるでしょう。本来なら乳幼児期に形成しておくべき愛着を大人の不備のために疎かにしてきたのですから当然です。それでも強引に突き放すことは、自分と台とを繋ぐ命綱(=親子間の絆)がないままバンジージャンプさせるようなものかも知れません。焦らずじっくりと修復に努めるのが良いと思います。
⑥今年の4月に小学校に入学し、環境が変化し、学校へ行きたくないと言う毎日
→「環境の変化が苦手」は感覚過敏の典型的な特徴です。新しいことに対してどんな場所か?どんなことが起こるか?、つまり自分にとって未知のことへの不安が強いのです。
それまでの行動特徴に配慮して、入学前に学校を訪問したり、学校生活の流れを教えたりするなどしてその不安を取り除いてやると、感覚過敏で極度の安心欠乏である自閉症の子どもでも抵抗感が減ります。
⑦集団登下校の際にトラブルがあり、先生から自分だけが叱られ納得できなかったことが直接のきっかけとなって不登校になった
→私も実際に同様の事例を経験しました。感覚過敏の男児で、トラブルがあった当時(3年前)のことをいつまでも気にしていました。周囲は「そんな前のこといつまで気にしてるの」と否定的に接していました。
先ずは子どもの中の不満を聞いて、共感し受け止めることが重要です。その後、学校の先生に子どもの気持ちを伝えて、先生からも共感してもらうと良いでしょう。
子ども同士のトラブルの場合は、双方から言い分を聞いて、どちらにも「(あなたの気持ちは)分かりました」と受け止める「喧嘩両成敗」が原則です。
◯各事例から分かること
これまで個々の事例について私の考えを紹介してきましたが、ここからは、以上の事例から分かることについてお話ししたいと思います。
《感覚過敏の子どもに対する対応》
先ず、感覚過敏のお子さんの事例がとても多いと感じました。新しい事、未知の事、つまり自分がまだ知らない事に対して不安を感じているのだと思います。
このタイプの子どもの場合に大切なことは、以下の2つです。
①その症状が本人にはどうしようもない先天的な特質であることを大人が理解して、「…が嫌だったんだね」「…が心配だったんだね」等と子どもの思いに共感すること。同時に、その症状を「そんなことくらいで」等のように、否定的に扱わないこと。
②現時点で子どもが知らないで不安になっている事を知らせて安心させること
《問題を抱えている子どもへの対応》
記事にあるような症状は、子どもが何らかの問題を抱えているために、ストレスを抱えているために起きるものです。
そういう問題を抱えている子どもに対する時には、次の順序で支援することが大切です。
①先ず初めに子どもの気持ちに共感して受け止めること
②次に、子どものとった言動が一般的に望ましくない場合であれば、穏やかな口調で教えること
《“愛着場面”を意識した対応》
上記記事の場合、全ての事例で、大きなストレスを抱えて正常な“探索行動”ができないでいる「充電場面」にいると考えられます。
その日の夜に「安心7支援」によって愛情エネルギーを注入することが必要です。また、各記事にあるくらい深刻な場合だと、ハグ等のスキンシップは必須です。
◯一番大切なこと
しかし、一番大切なことは、本人の気持ちを肯定的に受け止めて、子どもの力になる親の姿勢を示すことだと思います。良い結果が出るか出ないかは不確定であることは実は子どもも分かっています。つまり、良い結果が出ないからと言って、親の自分に対する愛情が不足しているとは思わないと言うことです。
親が子どもの“結果”よりも“努力”を優先に認めることは当然大切ですが、親御さん自身も自分の“努力”を誇りにして良いと私は思います。