【今回の記事】

フジ系列「テレビ寺子屋」より

テーマ「家庭の言葉の力

講師「花まる学習会」代表高濱正伸


【記事の概要】

 幼児期だけちょっと優秀に見える子どもと、後から急に伸びる子どもとの違いは何か?それは家庭の言葉の力の違い。後から伸びる子どもの家庭は言葉の力が優れている。

 では「家庭の言葉の力」とは何か?(以下、本テーマに関わる事に絞って紹介)

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 ある時高濱氏に我が子の勉強のことで相談に来た母親の話。「うちの子は計算はできるんですけど文章問題が不得意なんです。国語が苦手みたいなぁ」と言って手で髪をかき上げた(みたいなぁ」というのは、よく若者が使う曖昧な言い方)

 日常会話で使うのなら問題ないが、お世話になっている教師との面談という公式の場でそういう曖昧でいい加減な言葉を使う母親に育てられる子どもは将来伸びない。


 また「聞いたことに答える」ということも重要。

 学習会に迎えに来た母親と子どもの会話。

親「今日はどんなこと勉強したの」

子「これとこれとこれ」

親「分からないのあった?」

子「うんあった、これ」

当たり前のように思える会話だが、親子の9割ほどは、こういう「聞いたことに答える」という会話ができていない。

 一方、ありがちな親子の会話。

親「今日はちゃんと勉強やったの?」

子「て言うかぁ、俺腹減った」

親「あ、お母さん買い物に行かなきゃ」

子どもが伸びる家庭は、相手の聞いたことに答えて返すというキャッチボール式会話ができる家庭。そうでない家庭は玉入れ式会話”(自分が投げた球がカゴに入るかどうか確かめもせず、自分が好きなようにしか言葉を発しない)しかできない家庭

 例えば、入学試験の国語の問題に出される文学作品には必ず筆者の意図があって、それを読み取って答えなければいけない。しかし、子どもの頃から相手の意図を読み取る習慣のない子どもにそういう問題は解けない。


 更に、子どもの頃に分からない言葉があった時にすぐ調べていた子どもは偏差値が高かったというデータがある。家族の中にそういう文化があったか?つまり、親がすぐ調べていたか?と言うことが大きく影響している。

 スマホで調べることも有効的だが、子どもにとっては紙媒体の辞書で調べる経験も大切。目的以外の文字も目に入るから。


【感想】

 とりあえずは、先のように「て言うかぁ、俺腹減った」と言ってきた子どもには「聞いたことにちゃんと答えようね」という関わりが必要だと言うことが分かります。


 いきなり話はずれますが、「聞いたことにちゃんと答えなさい!」という厳しい言い方だと、子どもは敏感に反応して反発心を抱く恐れがあります。指示注意の際には厳しい言葉遣いにならないように「しようね」の言い方が望ましいです(安心7支援)の「⑤子どもに指示や注意をする時には、子どもに穏やかな口調で話しかける」より)


 さて、高濱氏の「キャッチボール式会話」と「玉入れ式会話」の違いについてはお分かりいただいたでしょうか。その会話力そのものが今回の「言葉の力」なのですね。


 すると今回の私の投稿で最も重要なことは、「相手の言ったことを聞いてそれに答える力(「キャッチボール式会話」)をどうやって子どもに身につけさせるか?」という点です。


 子どもに限ったことではありませんが、相手(大人含)に物事を的確に教えようとする際に大切なことは、①自分がやってみせる②相手にやらせてみせる③相手が出来たら褒めるということです(旧連合艦隊司令長官山本五十六の言葉「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば人は動かじ」より本ブログ記事「山本五十六が提唱していた、人を育てる『名言』 〜『子育て』でもとても重要!〜参照)。やり方を、全外部情報の8割を占める視覚情報で教えられると、とでも分かりやすいのですが、現実には、口頭だけの説明のまま子どもにやらせて、できないと怒るというのが多いような気がします。口頭説明だけでは子どもは分かっていないことが多いはずです。でも大人の言葉の勢いに負けて、「分からない」と言うのを我慢しているのです。

 つまり、前出のように「相手に聞かれたことにはちゃんと答えなさい」と教えたとしても、当の親が、子どもの言ったことをスルーしていては、子どもに「キャッチボール式会話」の力は絶対に身に付きません。親自身が子どもの言ったことにきちんと反応する態度を手本として見せる必要があるのです。

 おそらく、前出の「て言うかぁ、俺腹減った」と言った子どもが「玉入れ式会話」しかできないのは、「今日はちゃんと勉強やったの?」と子どもに聞いておきながら「あ、お母さん買い物に行かなきゃ」と、やはり「玉入れ」をする親に育てられたためだと思います。高濱氏はそういう家庭を「言葉を大切にする文化のない家」と表現します。

 そして「聞かれたことに答える」手本を示す親の言動の基盤には、話しかける子どもをきちんと見ることや子どもの話を頷きながら聞く(以上は子どもの投げた球を確かに受け取るため)、更には、子どもに穏やかに話しかける(子どもが受け取りやすい球を投げてあげるため)等の態度があります。実はこれらの態度は「安心7支援」に含まれているものです。


 まとめです。

 高濱氏の言う「言葉の力」とは、相手から聞かれたことに答える「キャッチボール式会話力」や、分からない言葉があったときにすぐに調べる力のこと。

 そして子どもにその力をつけるためには、

親自身が聞かれたことに答える

親自身が分からない言葉があった時にすぐ調べる

そういう手本を子どもに示す、ということになるでしょう。