今回はNHKEテレ「すくすく子育て」から紹介します。


《今日のテーマ》

どこまで大丈夫?甘えと甘やかし


《助言者》

東京大学名誉教授  塩見稔幸(教育学)

東京大学大学院教授 遠藤利彦(発達心理学)

白梅学園大学教授 福丸由佳(臨床心理学)


《相談①》

みつるくん(9ヶ月)

 この頃お母さんを後追いしたり、泣いたり、癇癪を起こしたりすることが多くなっている。その度に家事の手を止めて子どもの相手をしているがいつも甘えに応じていると、将来我慢できない子どもにならないか心配。

《相談②》

ひろのりくん(27ヶ月)

 弟のはじめくん(6ヶ月)が生まれたばかり。

コロナのために保育園が休園中の頃は、それまで以上に「パパはイヤだ。ママがいい」と言ってきかなかった。このまま子どもの求めに応じていると、わがままになる等、性格に影響が出てしまうのではないか心配。



《助言》

 これらの子どもの言動は「アタッチメント(愛着=愛の絆)」を求める現れだろう。子どもは、「探索行動」をしている時(下図中の中央上部の子ども)に、感情が崩れると(同図右側)、特定の信頼する人にくっついて安心感を得よう(同図中央下部)とする。その時の大人は子どもにとっての「安全基地」としての役目を果たす。アタッチメントは自立性や自律性(=自制心)等の育成のために重要。アタッチメントの対象は信頼できる周りの人であれば、極端な話、親でなくてもいい


《相談③》

ちひろくん(5)

 もう5歳なのに「食べさせて」「着替えさせて」等と、自分でできることなのに「ママやって」と言ってくる。登園前など急いでいる時は手伝ってしまうが、「甘え」ではなく楽したい気持ちが透けて見える。自分でやるようにもっと厳しく言うべきなのか、やってあげてもいいのか、「甘え」と「甘やかす」との違いが分からない。


《助言》

 ただ手伝うのではなく、「自分1人でできるはずでしょ」等と行動のルールも教えることが大切。


◆甘やかすとは親のどんな対応を指すのでしょうか?

《助言》

 子どもへの愛情も大事だが、それだけではなく行動のルールや常識を教えることも大切。それがなく愛情だけが優先されて、親が先回りして代わりにやってしまう場合に甘やかしとなる。

 甘やかしにならないようにするためには、「自分でできるでしょ」等とルールも教え子どもに葛藤させ、自分で考えて行動する練習をさせることが必要。うまく葛藤させていると、徐々に自分でできるようになる。

 つまり社会のルールを丁寧に教えながら甘えさせることが大切。


◆でも親に余裕がなく甘えに応じられない時はどうすればいい?

《助言》

 親が「この子は今甘えたいんだな」と気づいて、その気持ちに共感することが大事。子どもの気持ちに共感した後に、親の事情も伝える。すると子どもは「自分の気持ちは聞いてもらえた。拒否されたのではない」と認識できる。



 また、その時に応じられない時は、例えば寝る前に意識してスキンシップを図ったり、我慢できたことに対するねぎらいの言葉を伝えたりするなどして、後から声をかけてみることも有効。

 母親が「見てくれている」「分かってくれている」と意識できるだけでも安心感につながる。

子どもの甘えが煩わしいと感じる時は、親が疲れているのかもしれない。周りの人に頼ってみたり、子どもを預けたりして体を休めながら、大人も甘えることが大事。


《相談④》

ののちゃん(24ヶ月)

 母親である自分自身がとても心配性。子どもの身に何かよくないことが起こったらどうしようと怖くてたまらない。怪我をしないように行動は抱っこか車で移動している。公園に行ってもトラブルに巻き込まれないように他の子どもとの接触を避けてのびのびと遊ばせてあげていない時もある。自分の過干渉のために自分でできる力を伸ばせていないのではないかと心配。

《助言》

 絶対に危険な事は制止しなければならないが、親の過干渉は、長い目で見ると子どもの自律性にマイナスの影響を及ぼす。①始めに子どもからのSOSがあった時に初めて②親がそれに応答するという順序が大切。子どもからの求めがないのに親が先回りする過干渉は、子供の自己主張や自律性にマイナスの影響を及ぼす。


《相談⑤》

おうすけくん(6)

 絵が上手に書けなかったり欲しい物がなかったりなど、自分の思い通りにいかないとすぐに泣いてしまう。泣くのではなく、自分の口でちゃんと話して伝えて欲しい。

 コロナが感染してからは日本で祖母と暮らしているが、それ以前はアメリカで自由にのびのびと生活していた。


《助言》

 おうすけくんのような甘えは何歳になっても必要なもの。コロナなどの環境の変化による不安で感情が崩れた時には、心理的に「くっつく」(アタッチメントの確保)ことで感情を元通りにする必要がある。そのような経験を通して、信頼できる人をイメージできるようになると心の落ち着きを取り戻せる。


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 続きの「感想」は次回でお話しします。