HSP(HSC)と呼ばれる人達
 先日、俳優の三浦春馬さんの悲報が伝えられました。


 ネットでは彼の“人となり”について次のように取り上げられていました。

「三浦さんは、東出昌大さんの不倫騒動時に擁護ととられた投稿をめぐって炎上」「周囲に気を使い過ぎて思い詰めるところもあった」「何事にも手を抜かない完璧主義者」「ここまでストイックな人は見たことがない」「ストイックすぎて神経質」「真面目すぎるくらい真面目、慎重に言葉を選ぶタイプ」


 三浦さんのように、様々なことを敏感に受け止め、他者の苦しさにのめり込み過ぎるほど共感し、時として過度に真っ直ぐ生きようと考えてしまうタイプとして、先天性の「HSP」(Highly Sensitive Person)=「人一倍敏感な人」〜(子どもの場合は「HSC」(Highly Sensitive Child)〜と呼ばれる人達が約5人に1人もいるとされています。
 もちろん、三浦さんがHSPであるかどうかの真偽は分かりません。ただ、彼の特徴と似たHSPの人達も、日々生活の中で周囲からの言動に心を痛めていることは間違いないので、三浦さんのことをきっかけにして、そういう人達の参考になればと思い、今回の記事を書こうと思いました。

ASDとHSCの関係
 因みに、感覚過敏を特性とするASD(自閉症スペクトラム障害)とHSP(以下HSC)とは、他者への過剰な反応、安心感の不足、先天性の特質等、それぞれの特徴がとてもよく似ています。違いは、HSPにはASDには無い、共感性、創造性、順応性があることです。
(岩手県立大学看護学部講義スライドより)

 私は今の時点では、ASDの軽度、つまりグレーゾーンにいる人達達ではないか?と考えています。その理由は2つあります。
 一つ目は、HSCと言えど、健常者から障害域のASDの人までを含む「自閉症スペクトラム」の連続体の何処かには位置しているのは間違いなく、一方で「人一倍」の感覚の過敏性があることを考えると、ASDに準ずる位置に居ることが推測されること。
 ニつ目は、私の教職経験上「こんなにお利口さんタイプの子どもがなぜ急に登校しぶりや不登校になるの?」という事例が複数あり、その「お利口さんタイプ」という周囲の印象が、ASDには無い共感性、創造性等の特性によるものだったのではないかと推測されることです。
 仮にASDの軽度なものではないとすると、他者に過剰な反応をする人の割合がとても多くなってしまい、私の現職経験とのズレを感じます。
 しかしこのHSCの提唱者エイレン・N・アーロン氏は、自身の文献「人一倍敏感な子〜子どもたちはパレットに並んで絵のようにさまざまな個性を持っている〜」(1万年堂出版)の中で「ASD軽症説」を否定しています。しかし、その記述内容が、どうしても私の中で府に落ちていません。今後の私の課題です。

HSCに安心感を与える大人
 ただし、先のアーロン氏は、HSCの子どもに最も必要なことは、「『必要な時は自分を助けてくれる人がいる』と言う安心感である」と指摘しています。この「自分を助けてくれる人」とは、次のような人のことを意味していると私は考えます。
①普段から子どもに穏やかで肯定的な接し方(例「安心7支援」)をしていて、本人が「この人は自分のありのままを受け止めてくれている」と認識できる人。
②「①」の中でも特に、他者への思いやりが深いHSCの特性を「褒める」ことで、自己肯定感を育んでくれる人。
③苦しい自分の気持ちをわかってくれる人。共感してくれる人。
④その不安感の解消のために努力してくれる人。

 因みに、この③については「自分の問題を解決してくれる人」ではないと思っています。そう思わせてくれたのは、やはりHSCについて書かれた「HSC子育てあるある うちの子はひといちばい敏感な子!」(1万年堂出版)です。

 この中にこういう一文があります。
“いいお母さん”にこだわるよりも、自分が間違っていたと思った時に『ごめんね』と子どもに謝ることの方が大切だと思います
また、監修の心療内科医による解説のページにはこう書かれています。
あなたが子供のことを一生懸命考えている気持ちは、子供にも必ず伝わっています。そこで培われた安心感は、子供と親に、生涯にわたる幸せを与えてくれるでしょう
つまり、子どもの問題を上手く解決できる人よりも、たとえ結果的にうまく支援できなかったとしても、苦しんでいる子どものために努力できる人、そういう大人であることの方が重要なのだと思います。
 一方、この本の中では、「『そうだったんだ。子供が悪いのでも育て方が悪いとでもなかったただの特性だった』と気が付いて心から安堵した」「HSCを知ることによって、改めて子供の持っている素晴らしい特性に気付けることがある」

と、親側の意識変化の意義を主張していますが、親だけではなく、HSCの特質を褒めることで、子ども自身にも「そうか、今の自分でいいんだ!」と自覚させることが大切だと思います。上記の②の「褒める」は、そのために重要な意味があると思っています。


 感覚の敏感さはどの子どもも大なり小なり持っているものです。「子どものために努力できる大人たれ」の考えは、特にわずかな刺激にも反応してしまうHSCが、私達に教えてくれる“子育ての基本”であるように思います。

 なお、この本には「HSCあるある」が4コマ漫画でたくさん書かれていて、上記②の子どもの苦しい気持ちを理解するうえでとても役に立ちます。
 ひとつだけ、印象的だった内容を紹介します。あるHSCの子どもがお母さんに言いました。「私が言われて一番うれしい言葉はなんでしょう?」お母さんは「『かわいいね』かな?」正解は「そうだね」母は「まさかの受容と共感?!😱」(これが4コマ漫画で書かれています)
 また、この本には、HSCかどうかを判断するチェックリストも紹介されています。機会があれば読んでみてください。