【今回の記事】
 今年6月4日に兵庫県宝塚市の住宅で家族ら4人がボーガンで撃たれ、3人が死亡、1人が重傷を負った事件。容疑者はこの家に住んでいた無職野津英滉容疑者23才。彼はなぜ「家族全員を殺すつもりだった」とまで強い恨みを募らせ、祖母、母、弟、3人の殺害に及んだのでしょうか。


 今回は、これまでの報道で紹介された情報を列挙し、彼が家族を殺害した背景について、今回と次回の2回に渡って考えてみたいと思います。


【記事の概要】

 以下はこれまでの報道による情報。

◯兄弟は母子家庭に育った。殺害された母親は、少なくとも直近は職に就いていなかった

◯野津容疑者は中学でサッカー部に所属。高校では部活動をせず「自宅で引きこもりがちだった」(師範の男性)。5年前に神戸市内の大学へ進学したが、昨年5月に休学届を提出。学費滞納により同9月末に除籍されていた。

◯「小学生の頃から兄弟げんかが絶えなかった。弟は周囲にはことあるごとに『兄貴だけは本当に嫌い』と話していた」(兄弟が通っていた市内の空手道場の男性師範)

乱暴者を意味する『ごんたくれ』。祖母はそれを縮めて『ごんたな孫で困っている』と漏らしていた。

◯本人は、緊急事態宣言が明けて学校が再開した今月1日には登校していたが、翌2日と3日は登校日だったものの体調不良等を理由に休んでいた

◯「物静かだが、腕っぷしは強い。ちょっと不良っぽく見えるが、けんかは仲裁役」(同級生達)

◯現場の自宅には24年前に祖母好美さんが入居。母マユミさんと兄弟の3人は2年ほど前に近くの県営住宅を引き払い、事件当時、兄弟は祖母好美さん宅に、母マユミさんは約480m離れた集合住宅に住み、マユミさんは週数回好美さん宅を訪れていた。

◯「(数年前)孫達が娘(容疑者の母親)と不仲で、けんかするたびに家に来る」「(自分と)一緒に住み始めてからは孫がピリピリしている(生前の祖母)

◯野津容疑者については「挨拶して目が合っても下を向く。年に数回しか姿を見なかった」(隣に住む男性会社員)

◯「(小学校時代は)明るくて楽しい子だった。ちょっと調子乗りみたいな感じで、みんなを盛り上げたり。悪い印象はない。勉強もできた方。2年ほど前か、たまたま会って声をかけたら、ムスッとした感じ。『大学行ってんの?』と聞いても『まあ』と言うだけで、どこかに行ってしまった(野津容疑者の小学校同級生)

◯「友人同士で勉強を教え合うなど、積極的で真面目な生徒だった。信じられない」(卒業した高校の校長ら)

◯「1年後期の時点で単位がほとんど取れていなかった(大学の同級生)

◯近隣住民らによると周囲にも「変わっている」という評判は伝わっていたといい、「普段はおとなしいけれど、スイッチが入ると気性が激しくなり性格が180度変わった」という。

学校高学年ぐらいから不良っぽい感じだった。挨拶もしないので印象は良くない」(かつて同じ集合住宅に住んでいた80代の男性ら)

◯「お母さんの子育ての責任感が強かったのか、しつけは厳しかった。兄弟げんかはよくしていたけれど(同容疑者は)まじめな印象。こんな事件を起こすなんてびっくり」(幼少時の野津容疑者と息子が公園で一緒に遊んだという50代女性)

◯県警の発表によると、死亡した祖母と弟と同容疑者は同じ住所で、母は近くで別に暮らしていたとされるが、近隣には知られていない

近くの60代女性は1年ほど前、同容疑者と「こんにちは」とあいさつを交わしたという。「普通の好青年に見えた」と驚きを隠せない様子だった。

◯「家族全員を殺すつもりでやった」「祖母と弟は早朝に撃った。急所をねらった」「複数回、家で練習をした」と野津容疑者。



【感想】

 以上の情報から考えられることを挙げてみたいと思います。


◯「直近は職に就いていなかった」→職場の仕事の段取りや人間関係が苦手だった可能性あり

高校では部活動をせず自宅で引きこもりがちだった→友人関係が苦手だった可能性あり

5年前に神戸市内の大学へ進学→知的レベルは高水準

昨年5月に休学届を提出→大学生活が苦手だった可能性あり

小学生の頃から兄弟げんかが絶えなかった→人間関係が苦手だった

◯「兄貴だけは本当に嫌い」と弟が漏らしていた→過度に人間関係が苦手

祖母は乱暴者な本人に困っていた→他者への加害性があった

緊急事態宣言が明けて学校が再開した翌2、3日後は体調不良等を理由に休んでいた→環境の変化が苦手だった可能性がある

◯普段は物静かで喧嘩は仲裁役→本来は平和主義者

兄弟は祖母好美さん宅に同居、母親と不仲→母親と不仲で祖母と同居

◯祖母と一緒に住み始めてからはピリピリしていた→相手に限らず同居して距離が近くなると精神不安定になった

挨拶して目が合っても下を向く→人付き合いが苦手

小学校時代や高校時代はそれ程問題なかったが、時が経つと無愛想になっていた→周囲の支援が弱くなると精神不安定になった

学校高学年ぐらいから不良っぽい感じ。挨拶もしないので印象は良くなかった→場面(外部環境)によっては無愛想になった。

1年後期の時点で単位がほとんど取れていなかった→大学入学後生活が乱れた

普段はおとなしいが、スイッチが入ると気性が激しくなり性格が180度変わった→外部環境次第で極度に精神不安定になった

お母さんのしつけは厳しかった→子供の不適応行動に対して厳しく接していた

◯世帯状況は近隣には知られていなかった→近隣との付き合いは薄かった

1年ほど前に容疑者とこんにちは』と挨拶を交わした。普通の好青年に見えた」と近所の60代女性→事件の僅か1年前でも近所の住民に対しては安定した様子を見せていた

「家族全員を殺すつもりでやった」「急所をねらった」等と野津容疑者→過度に強い恨みがあった


 以上のことをまとめると、次のような特徴が明らかになります。


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 この続きは明日お話しします。