【今回の記事】
講師〜教育評論家 親野智可等さん

【記事の概要】
 私は23年間教員生活を通して様々な先生や生徒、親御さんを見てきました。そこで感じたのは、子どもを伸ばしたいと思ったら「ほめるのが一番だ」という事です。
 親は自分の子どもの成長に期待を持つものです。何でもできる完璧な子どもであって欲しいと願っています。だから子どもを叱る回数が増えてしまいますが、それでは子どもの自己肯定感はボロボロです。
 子どもは誰しも「どんな自分でもほめてもらいたい!認めてもらいたい!」こういう気持ちを持っています。これは無条件に自分の存在を肯定して欲しいと思っているからです。では、どのようにほめるのか?具体的に例を挙げてみましょう。
 まず「嘘でもほめる」という事です。これは「できたらほめる」のではなく、「できる前にほめる」という方法です。
 私がある地方でローカル番組を見ていたら面白い場面が放送されました。その番組は親子で料理を作るという内容でした。数組の親子が野外でカレーを作っていました。最初に画面に映ったのは子どもをよく叱るお母さんでした。子どもがカレーを混ぜている時、「こぼしてるわよ!もっと集中しなさい!だらしがないわね!」と言いました。しばらくすると今度は「上ばかり混ぜていないで下も混ぜなさい!味が全体に染みないわよ!」と言いました。子どもはやる気を無くしながらカレーを混ぜています。それを見たお母さんは「やる気が無いならやめちゃいなさい!」と叱りました。私はテレビに向かって「お母さん、子どもがカレーを楽しく作ろうとしないのはあなたのせいですよ。」と突っ込みました。
 しばらくして今度は別のお母さんが映りました。普通にカレーを混ぜているだけの子どもに向かって「上手だね!」とほめました。そして「こぼさずにできてるね。」とほめたのです。すると子どもが「うん!」と言いました。実際は少しこぼれていましたが、お母さんにそう言われてからカレーがこぼれないように更にゆっくりかき混ぜ始めたのです。
 嘘でもほめると子どもはプラス思考で行動します。コツさえ知っていればうまく子どもをほめる事ができるのです。

【感想】
 23年間の教職経験のある教育評論家の親野智可等氏の話です。
「子どもを伸ばしたいと思ったらほめるのが一番」と言うのは全く同感で、実際に子どもの指導にあたった方ならどなたも感じていることだと思います。

 ただ、このお話の中に登場する「嘘でも褒める」という表現は少々乱暴ではないかと思います。「できる前にほめる」とも表現していますが、これも「できていないことでも褒める」という意味です。
 上記のカレー作りの例で言うと、あるお母さんが、少しカレーをこぼしていた我が子に「こぼさずにできてるね」とほめたとのことでした。このお子さんのように自分がこぼしたことに気付かず、褒められて意欲をかき立てられることもあるかもしれませんが、子どもによってはそれが嘘であることに気付く場合もあると思います。私としては、できれば掛け値なしの褒め言葉をかけてやりたいと考えます。

 では、この場合どのように褒めれば良いのでしょうか?
 私なら次のような言葉をかけるでしょうか。
ていねいに混ぜているね

 その根底には、こぼしたかこぼしていないかという“結果”よりも、丁寧さという“努力”を褒めたいという思いがあります。
 アメリカのスタンフォード大学の教授が、小学生を “結果”を褒めるグループと“努力”を褒めるグループとに分けて実験を行った結果、“結果”をほめられた子ども達は、その後、新しい課題を避け、同じ課題を解こうとする消極的な傾向が強くなった一方で、“努力”をほめられた子ども達は、更に新しい課題にチャレンジしようとする積極的な傾向が見られるようになったと言う実験結果があります(詳しくは「【褒め方】〜生活意欲を高めるために、“子どもの中の良さ”と“努力”と“人への貢献”を褒める〜」の「◯“結果”ばかりほめていると、消極的な子どもになる」の項を参照ください)。

 また、先の「ていねいに混ぜているね」という言葉の中には、この「結果より努力優先」という考えの他に、できていることを見つけて褒める」という思いがあります。こぼさずにかき混ぜることは出来ていないけれど、真剣に作業していれば、それは十分に褒めるに値するものだと思います。できていないところ(カレーをこぼしたところ)はあっても、その中からできていることを探して見つけ出して褒めるのです。
 
 同じように、運動会の徒競走で一生懸命走ったけれどもビリだった子どもがいれば、
一生懸命走っていてえらかったね!
と頑張っていたところを見つけて褒めます。

 学校から通信票をもらって帰ってきたら、良くなかった教科があっても、まず先に伸びているところを見つけて褒めます。
国語が前よりも良くなっているね!
生活の様子が良くなっているね!
あいかわらず体育が優秀だね!
もっと頑張らせたいところがあれば、その後で「算数も良くなるともっと良いね」等と言えば、子どもは喜んでその言葉を受け止めます。

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 さて、今回お話しした「できていることを見つけて褒める」については、私が子育ての中で特に大切だと思う内容を紹介した「ダイジェスト記事」、この中の上記に挙げた記事「【褒め方】〜生活意欲を高めるために、“子どもの中の良さ”と“努力”と“人への貢献”を褒める〜」の中の「◯子どもの“中”の良さをほめましょう」の項に新たに付け加えることにします。
 なお、この項では、「小さなことから褒める」方法として、他の方法も紹介しています(「♢」印のもの)。上記記事タイトルからご参照ください。