今日はNHKEテレの番組「すくすく子育て」よりご紹介。
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   おもちゃを全部出してはしまう、高いところに登る、狭いところに入りたがる、棒が落ちていると必ず拾う、ピンクの服しか着ない、等、大人にはなかなか理解できない子どもの不思議な行動の数々。その行動にはどんな意味があるのでしょうか?

   解説をしてくださるのは、東京大学大学院教授で発達心理学が専門の遠藤利彦氏と、某保育施設代表の保育士経験40年のベテラン柴田愛子氏。

子どもの“あるある”理解不能な行動
   以下は、番組で紹介されたよく見られる子どもの行動です。

①入れ物に入っているおもちゃを全部出した後、直ぐにそのおもちゃを戻す。これを何度も繰り返す。
②親の前で同じものを何度も指差す。
③ティッシュをいつまでも出し続ける。
④同じ色の服ばかり着たがる。
⑤落ちている棒を拾う。
⑥水を勢いよく飛ばす。
⑦高いところに登りたがる。
⑧狭いところに入りたがる。

子どもの行動の意味
   次に、これらの行動の背景にはどんな意味があるのかについて、遠藤、柴田両氏の指摘を紹介します(⇨以下)。

①入れ物に入っているおもちゃを全部出した後、直ぐにそのおもちゃを戻す。これを何度も繰り返す。
⇨「繰り返し」は先が予測できるから“安心”して遊べる。安心できることがわかると、いつかはやめる。(①-A)
⇨実は、繰り返すたびに、新しい発見をしている。1回1回、「仮説」と「実験」を繰り返している。(①ーB)
②親の前で同じものを何度も指差す。
⇨その物を通して親と気持ちを通わせたいと思っている。(りんごをトピックとしてお母さんと会話をしたいと思っている)
③ティッシュをいつまでも出し続ける。
⇨大人はその目的以外の使われ方をすると嫌がるが、子供にとってはどれもおもちゃ。子供にとっては、ティッシュが擦れて出てくる感じが何とも言えなく大好き。
④同じ色の服ばかり着たがる。
⇨ 3歳ごろまではピンクが好きな子どもが多い(みんなと同じが好き=「同化」)。しかし、4歳、5歳になると色の好みはがらりと変わる(自分はみんなと違う=「差異化」)。発達段階によって違っていく。
⑤落ちている棒を拾う。
⇨自分の手ではできないことも棒を使えばできる。
⑥水を勢いよく飛ばす。
⇨水はあらゆる可能性のある遊び道具(音、感触、光り具合等)
⑦高いところに登りたがる。
⇨高いところに行けば、今まで見えなかったものが見れる。
⑧狭いところに入りたがる。
⇨余計な外部刺激が遮断されることによって、安心感が得られる。(遠藤)

子どもの行動は二種類
   さて、これらの遊びを整理すると、次の二つに分けられると思います。
A.  “安心”を求める遊び
B.  好奇心”を満たす遊び

   どの遊びが①、②のどちらに当てはまるのか、分けてみましょう。
A.  安心を求める遊び
〜①ーA、②、④、⑧
B.  好奇心を満たす遊び
〜①ーB、③、⑤、⑥、⑦

子どもの遊びと“安全基地”の関係
   実はこの「安心」と「好奇心」は、愛着を形成した際の母親の“安全基地”としての機能と深く関わっています。
   以下は、本ブログの「愛着の話 No.3 〜お母さんという「安全基地」〜」からの抜粋です。
「子どもは、愛の絆で結ばれた母親という安全基地がちゃんと確保されている時、自分がまだ経験していないことでも冒険しようという意欲をもつことができます。なぜなら、もし何かあったらすぐにお母さんという安全基地に戻ればいいということを子どもが分かっているからです。逆に、母親との愛着が未形成で安全基地を持てない時、子どもは安心して冒険を行うことができません。
   母親によって『守られている』と感じている子どもほど安心して活動できるので、好奇心旺盛で活発に行動し、何事にも積極的なのです。幼い子どもが母親の元を離れて石ころや葉っぱを探しに行ったり、自分から絵本を眺めたり、更にもう少し大きくなると、同じ年頃の子どもと関わりを持とうとしたりするのも愛着が形成されている証拠です。愛着という安全基地をベースキャンプにして、子どもは冒険(好奇心に基づく探索行動)を行うのです」

   つまり、
子どもにとっては先ずは“安心”が第一優先。それが保証された時に“好奇心”を満たそうと探索行動(冒険)する
ということです。つまり、Bタイプの遊びをしているのは、子どもに安心感が確保されていることの表れと言えます。「困った子だ」と思いがちですが、実は親御さんとの間に安心感の元になる愛着が築かれている証なのですね。

迷惑になる行動をどう考える?
   以上のように、子どもの遊びは「安心」と「好奇心」を保証する活動なので、それを止めさせることは得策ではありません。その点については、番組講師の遠藤氏と柴田氏も同意見でした。
   では、例えば「ティッシュをいつまでも出し続ける」のように、家族の迷惑になる活動に対してはどのように対処すれば良いのでしょうか?
   このことについては、両氏いわく「逆に、子どもの活動の場を積極的に提供する」という意識が必要とのことでした。つまり、その遊び用の安いティッシュを買ってきて遊ばせる、遊びに使われたティッシュはゴミにせず親が使う、そういうある意味での“開き直り”が、子どもと親、双方にとって利益になる“winwin”の関係を作るのですね。