以前お知らせしていた「ダイジェスト記事」の“リフォーム”作業は前回で一応終了です。本来「ダイジェスト記事」はもっと多かったのですが、“今後”のことを考えて“少数精鋭”にしようと思いました。

   なお、これからも過去に投稿した記事の細かな修正をすることはあるかもしれません。ご承知おきください。

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   さて、本題です。

   以前、NHKで育児に悩むお母さん方を応援する番組を放送していました。

   その中で、あるお母さんが、ため息をつきながら、こう言いました。

私がいないと子どもが“ギャン泣き”してどうしようもない


   こんなに大きな声が出るのか?と思うくらいギャンギャン泣く赤ちゃんの「ギャン泣き」。こういう悩みをお持ちのお母さんは多いと思います。

   でも、母親がいなくなると赤ちゃんがギャン泣きするのはどうしてなのでしょうか?



   突然ですが、ここで、エインズワースという研究者が行った「新奇場面法」という実験を紹介します。これは、赤ちゃんが愛着形成をどのくらいできているのかを判断するための実験です。

   方法は次の①から④の手順で行います。

①ある部屋にお母さんと赤ちゃんを入れて2人で遊んでもらう。

②その後、見知らぬ人が入ってくる。その代わりにお母さんが部屋を出て行き、赤ちゃんと見知らぬ人だけになる。

③その後お母さんが再び現れる。


   このような“お母さんとの分離再会”を2度繰り返すことによって、赤ちゃんの反応の一定の傾向を調べます。


   この実験をたくさんの親子について調べました。すると、赤ちゃんと母親との関係性によって、赤ちゃんの反応が異なることが分かりました。


《Aタイプ》

お母さんとの分離の際には、子供は泣いて母親の後を追おうとする。

その後、母親との再会の際には、大喜びでベタベタくっついて、すぐに気持ちを落ち着かせる。

《Bタイプ》

お母さんとの分離の際には、子供は不安を示さず泣いたり後追いしたりしない

その後、母親との再会の際にも、母親に抱きつかなかったり目をそらしたりする。

《Cタイプ》

お母さんとの分離の際には、子供は大泣きして激しい不安や混乱を示す

その後、母親との再会の際には、ベタベタくっつくだけでなく、母親を叩いたり攻撃したりする。

《Dタイプ》

お母さんとの分離の際には、子供は不安を示さず泣いたり後追いしたりしない

その後、母親との再会の際には、どこか怯えたような仕草を見せる。


   これらのうち、Aタイプは「安定型」と呼ばれ、健全な愛着を形成しているタイプです(出現率約60%)。普段から子どもが助けを求めた時に、それに応じて助けているので、子どもは親のことを「お母さんは自分を助けてくれる必要な存在」と認識し、分離の際には泣き叫び、再開の際には心から喜ぶのです。


   一方で、以下のB〜Dタイプが愛着が不全状態です。

   まず、Bタイプは「回避型」(出現率約15%)と呼ばれ、普段親が子どもの求めに応じず世話をしなかったり、いつも子どもを叱ってばかりしているので、子どもが親を「お母さんは自分にとって不必要な存在と認識し、親との分離の際にも再会の際にも、親を求める仕草を見せないのです。

   次に、Cタイプは「不安型」(出現率約10%)と呼ばれ、普段親が自分の気分次第で子供と関わっていて、褒める時と叱る時の差が激しいので、子どもが親を「お母さんは信用できない存在」と認識し、親との分離の際には、親を求める一方で、再会の際には信頼できないことに対する怒りをぶつけるのです。

   更に、Dタイプは「混乱型」(出現率約15%)と呼ばれ、普段親が子供に虐待を働いているので、子どもが親を「お母さんは危険な存在」と認識し、親との分離の際には清々し、再会の際には、怯えるのです。


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   さて、先のお母さんは、「私がいないと子どもが“ギャン泣き”してどうしようもない」と言いました。そこには、

私がいなくなるとギャン泣きする」(分離)

ということはもちろんですが、「私がいないとどうしようもない」ということから、

私が戻ってくれば泣き止む」(再会)

ということも分かります。


   さて、この子どもの反応は、先の4つのタイプのうちのどれに当てはまるでしょう?そうです、実はこれは、先の「安定型」の子どもに見られたものです。


   お母さんは、我が子の様子について“とても困っている”という認識のようでしたが、実は、このお母さんが正しい子育てをしていて、順調に愛着形成が出来ていることが分かります。決して、お母さんが嫌いで泣いているのではなく、「お母さんが大好き」という気持ちの表れなのです。

   考えてみれば、育児を放棄しているお母さんは、子どもの様子に悩むことはないわけで、真剣に育児に向かい合っているからこそ「ため息」をつくのですね。


   以前、行方不明になっていた大阪の小学6年の女の子が栃木県で発見された事件。

   事件後に母親女の子再会した際には、戸惑っていたのでこちらから抱きしめに行った」「(始めは)私を抱きしめる素ぶりを見せなかったのですが、途中からギュッとしてくれて本当に安心しました」(女児の母親)だったとのことです。

「再会」の際に親を余り求めなかったこの女の子の反応。女の子がSNSで知り合った男と自身の意志を持って接触をしていたことの背景には、愛着の形成度合いが関係していた可能性も否定はできません。

    本来、子どもに愛情を注ぎ、子どもを自分との“愛の絆”で繋ぎ止めておく“母性”を持つ母親が、普段からどのように子どもと接する必要があるのか?ということについて私達は学ばなければならないと思います(例〜「安心7支援」)。